久しぶりにスポーツの話題をします。
ロサンジェルス・ドジャーズの斉藤投手がボストン・レッドソックスに移籍したと一昨日報じられた。斉藤ほど短期間で実績を上げたクローザーが、絶対的なクローザーのパペルボンが存在するボストンに何故移籍したのだろうか。
移籍の背景についてMLB.comに面白い記事を見つけた。その記事によれば、斉藤は過去3年クローザーとして88セーブ、防御率1.95という傑出した成績を上げたが、昨年ひじを痛めシーズン後半を棒に振り、所属のドジャーズと再契約に至らなかった。
レッドソックスとの契約は1.5-2.5百万ドル(百万ドル約9000万円)で、その4-5倍の7百万ドルの出来高払いが別にあるという。つまり、故障からの回復しない場合の支払いをミニマムに押さえ、キチンと結果を残せばそれに相応しい給与を支払うという内容だ。
言い換えれば、故障が再発する可能性を秘めているが、実績もありポテンシャルの高い選手を雇う場合、活躍しないリスクを薄め且つ潜在能力を発揮する可能性を期待する手法、だと私は思う。
レッドソックスは斉藤の他にBペニー、Jスモルツ(多分殿堂入りする)、Jバード、Rバルデリ等、素晴らしいキャリアを持っているが、何らかの理由で活躍が疑問視され他球団が躊躇した選手達と契約したと同じ記事は伝えている。これはとても興味深い。
レッドソックスのオーナーは著名な投資家であり、2年前松坂との巨額契約で世界の度肝を抜いた。どこからそんな金が出て来るんだと思った人は多いはずだ。その背景には、従来の球団経営では考えられなかった投資対効果の判断があったと伝えられている。
NYヤンキースが大金をはたいて活躍が保証されているとされる、生きの良いビッグネームをガンガン雇ったのに対し、レッドソックスは金欠病にかかったように、従来とは全く違うアプローチで余り金を使わず選手を獲得したように見える。だが、私にはある一貫性を感じる。
2年前とは経済環境が全く逆転した今、この記事を読んで私は成る程と思った。レッドソックスのオーナーは現状の経済環境を考慮して、投資の世界で言うところのハイイールド債(高利回り社債)の投資手法、いわばハイリスク・ハイリターン、を取ったのだろうと。
ハイイールド債とは、格付け機関によってデフォルト(利息・元本の未払い、又は倒産)のリスクが高い会社の社債で、リスクが高い分だけ国債よりかなり高い利回りでないと買ってくれない。つまり全てパーになる可能性もあるが、信用リスクに応じて10%以上の大きな利息が期待できる。
一方、将来ともに高業績が期待される社債の格付けは、投資適格とされる高格付け(AAAからBBB:S&P社)され、倒産のリスクは低いが社債は高い値段でしか買えず、又、国債と同程度の低い利息しか期待できない。つまりリスクは低いが、得られるリターンも少ない、しかし確実だ。
私が最初に思ったのは、斉藤やスモルツ等上記の契約した選手はハイイールド債と見なすと分かり易いということだ。つまり、彼等とは安く契約できるが、故障などで働かないリスクもある一方で、彼等の実績に近い活躍した場合の成果は極めて大きい。
投資家がオーナーらしいレッドソックスの選手の取り方だと思った。ジェネラルマネージャのエプシュタイン氏は現在の経済環境が影響したと認めていると、上記の記事は報じている。MLBファンの一人として、こういう見方で今シーズンを見るのも一興と思う。■