goo blog サービス終了のお知らせ 

かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

周回遅れの「成果主義」考

2008-08-08 23:26:32 | 社会・経済

先月22日に厚生労働省が発表した労働経済白書は、非正規労働者の増加と成果主義賃金が労働意欲を低下させたと指摘、終身雇用などの日本型雇用慣行を再評価したと報じられた。私はこのテーマは議論を呼ぶと予想したが、意外にもその後の報道を見ると格別の反応が見当たらなかった。

しかしネットに聞いてみるとこのテーマは散々議論され結論が出た手垢の付いた問題だった。この白書は巷で結論が出たテーマを周回遅れで追認した報告で、私はそれに周回遅れで反応したと言うわけだった。

「成果主義」をネット検索すると、そこはまさに議論百出だったが、殆どの記事は数年前に書かれたものだった。そのうちの一部を読んだだけだが、目に付いた記事を要約すると白書の結論となると言っても過言ではない。これではメディアが無視したのも無理はない。

だが、例によって天邪鬼の私はこの結論には違和感がある。余り論理的に整理できてないので、思いついた順に指摘したい。

余りにもドメスチック

最初に感じたのは、「官・民」揃って成果主義すらきちんと機能させられないのか、と言う失望感だ。グローバル世界で如何にして国内外から優秀な人材を確保することが出来るか競い合う時代に、発想が極めてドメスチックである。成果をきちんと評価出来ないとギブアップした組織で、優秀な人材がわざわざ海外から来て働いてくれるだろうか。

「成果主義」単独では機能しない

日米で働いた私の経験では、成果主義を単なる賃金制度として切り出して機能させるのは無理がある。年功制度など旧来の日本的システムを残したまま成果主義を持ち込んでも機能しない。成果主義を導入した多くの会社は単に総賃金を減らす目的で、その動機不純さがシステムにそのまま残され、社員は敏感に感じ取った。

選択肢のない社員には馴染まない

成果主義は「幹部から以前話題になったエグゼンプト(残業の付かない社員)まで」同じコンセプトで適用され、部下の評価であると同時に上司の評価でもあると理解すべきだ。その関係はより対等でなければならず、転職の難しい日本の労働市場は馴染まないかもしれない。部下は評価に同意しないなら転職する選択肢がないと対等になれないからだ。

労働市場の流動性

そうなると、優秀な人材を失うと上司が会社からどういう評価を受けるか自明であろう。だが、一方で評価対象の職位の部下が期待される能力と成果を出せないなら、外部から適切な人材を見つけて入れ替える選択肢が上司にあることも、又、前提となる。それを含めて上司は成果を求められるとすれば、欧米と同じ環境とは全く異なる。

人事部の官僚的体質

憶測ではあるが、成果主義の導入は賃金を抑制する為、人事部主導で海外の事例を調べ、自社の人事システムにはめ込んで導入された。経験では日本の人事部は欧米に比べより中央官僚的で横並びを重視する体質が、極めて中途半端なシステムにしたように感じる。

最後に、これまた憶測ながら、この人事部の体質と評価する側の理解不足が成果主義導入の失敗の主因になった気がする。現場に入り評価者(上司)と密接に連携して評価基準・手法などを確認しながら人事評価を実施すれば結果は変わったはずだ。成果主義は失敗で終らすわけには行かない。人材も携帯電話みたいになってしまう。■

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする