残雪と偃松(はいまつ)と残雪と偃松と
黒と銀と黒と銀と
ゆらゆれる尾根をわたって
一人の人がゆく
その人はふりかえらない
ふりかえることは孤独にとって罠である
もしも背後の景色のほうが美しかったら
どうする?
もとのみちを帰るのか?
霧がやってきてゆがんだその人の後姿を乳色のカーテンでかくしたときに
おそるおそる頬をまわしたのは 臆病なけもののようなその人だ
何が見えた?
見えたのは霧にとりかこまれた自分だけではなかったか? それが罠だ
ついに罠にかかった痛ましい過ちを
やがては消えてゆく霧も運び去ってはくれない
残雪と偃松と残雪と偃松と
ゆらゆれる尾根をわたって
二度とはふりかえらない人がゆく
黒と銀と黒と銀と・・・・
□鳥見迅彦「霧の尾根」(『けものみち』、昭森社、1955:第6回H氏賞)
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黒と銀と黒と銀と
ゆらゆれる尾根をわたって
一人の人がゆく
その人はふりかえらない
ふりかえることは孤独にとって罠である
もしも背後の景色のほうが美しかったら
どうする?
もとのみちを帰るのか?
霧がやってきてゆがんだその人の後姿を乳色のカーテンでかくしたときに
おそるおそる頬をまわしたのは 臆病なけもののようなその人だ
何が見えた?
見えたのは霧にとりかこまれた自分だけではなかったか? それが罠だ
ついに罠にかかった痛ましい過ちを
やがては消えてゆく霧も運び去ってはくれない
残雪と偃松と残雪と偃松と
ゆらゆれる尾根をわたって
二度とはふりかえらない人がゆく
黒と銀と黒と銀と・・・・
□鳥見迅彦「霧の尾根」(『けものみち』、昭森社、1955:第6回H氏賞)
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