春の宵 夜明けの桜は透き通る
寝なければいけない、と思うほど寝れなくなることが
一年に何度かあるのだった。
たいてい出張の前の夜だったりする。
妙に神経がザワザワするのだった。
夜中に咲く狂おしい桜が、
脳に何かの刺激やフェロモンを送るのだろうか。
思わず、外気を吸いに中庭へ出ると
まるで水中の植物のように
半透明でうすピンクに輝く桜が、
あの世のような美しさで
艶然と微笑んでいるのであった。
春の早暁は
まことに彼岸的である。
あくびをして、もう来ていた朝刊を拡げた。
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