ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

阿弥陀岳:中岳へ

2018年05月28日 00時02分23秒 | Weblog
赤岳と中岳・阿弥陀岳方面への分岐点までもうすぐというところまできて、遂に阿弥陀岳東陵に日が差してきた。
正確には「差してきてしまった」と言った方がこの時の気持ちだった。


決して慌てることはないが、できるだけ早い時間帯に東陵ルートを攻めたい。
攻めなければ斜面の雪の緩みは進むばかりだ。
「先ずは分岐点。でもって中岳までは少し急ごうか。」
「そうですね。そのほうが安心できますね。」


一度日が当たり始めると、あっという間に東斜面は日の光で覆われた。
そして中岳にも差し始めた。
「予定では10時までには阿弥陀に登りたい。途中アクシデントがなければ行ける・・・はずだ。」


8時前には分岐点に到着できた。
水分と行動食のみを補給しすぐに中岳へと向かった。

ジグザグに下って行く。
トレースがはっきりと残っており、おそらくは昨日小屋の手前ですれ違った人のものだろうと推測した。


中岳手前のコルでアタックザックを下ろし、二度目の休憩らしい休憩を取った。
本来であれば少しでも早く東陵に取り付きたいのだが、中岳を越えて東陵に辿り着くまで稜線を進まなければならない。
取り付くまではまだ先だけに、体力の温存を図った。

休憩を済ませ歩き始めると、ふいに後頭部あたりに暖かさを感じた。
振り向けば太陽が・・・。

「おぉ~眩しいね。今日は暑くなりそうだ。」

中岳へのルートは単調な一本道で、ただダラダラと登って行くだけ。
そう大して時間は要さなかったが、その先が待っている。

時折ふり返れば、今度は富士のお山がはっきりと目視できた。

赤岳と権現岳との間にすっぽりと収まっている富士山。
凛々しくも見事な容姿であるが、もう登るつもりはない。
何度か登ってはいるが、あまりの単調さに辟易してしまったというのが本音だ。
難易度、危険度共に中レベルであり、しかも登山者の数の多さに言葉を失ってしまった。
「静けさも何もあったもんじゃないな。勘弁して欲しい。」
自分もその登山者の一人であるにも関わらず、良い思い出はない。
確かに山頂からの眺めは抜群であったが、登山技術においては頑張れば子供でも登れるという程度だ。
「富士は遠くから見るだけに限る。」
これが下山後の結論だった。


中岳山頂手前からの富士山。



8時30分。
中岳に登頂。
遂に阿弥陀岳東陵が眼前に迫ってきた。
当然南陵壁も見える。
どのあたりで滑落してしまったのだろう・・・。
ご冥福を祈り、自身への戒めとすることしかできない。

真下には東陵ルートへと向かう稜線が見えた。
たっぷりと雪はあったが、片側はスパッと切れ落ちているポイントもある。
もう一度気を引き締め直さなければならない。