ひとり旅への憧憬

気ままに、憧れを自由に。
そしてあるがままに旅の思い出を書いてみたい。
愛する山、そしてちょっとだけサッカーも♪

阿弥陀岳:月明かりの下で

2018年05月15日 00時45分37秒 | Weblog
テントサイトが樹林帯の中であれば風を防いでくれるが、今夜はほぼ無風であり針葉樹林の細い葉が揺れる音が聞こえてくる程度だ。
また時折「ドサッ!」という音と共に、枝に積もっていた水分を多く含んだ雪がテントに落ちてくる。

静かである。
初めて経験する静けさではないが、深夜の家の中とは違う静けさを感じる。


テントから一歩出て上を見上げると、ちょうどシラビソの樹の隙間から月が見えた。
枝先がごく僅かに揺れているのが分かった。
コーヒーカップを手に煙草を吸いながら少し歩いてみると、自分たちのテントの灯りがやけに明るいことに気付いた。
雪面であること、つまり周囲が白一色であることが尚のことテントの灯るさを増しているのだろう。


時刻はまだ19時をまわったばかり。
眠るには少し早すぎる。
「ちょっと小屋の方に行ってくる」と言い残し歩いた。

アイゼンは外しているが、「ギュッ ギュッ」という雪を踏み固める音が響いた。
小屋の窓から漏れている灯り、そして月明かりのおかげでヘッドランプは不要だった。
小屋の屋根の上にはオリオン座が「これでもか」と言わんばかりに目映かった。
そして何よりも驚いたことは寒さを殆ど感じなかったことだ。
もちろんダウンジャケットは着てはいるが、体の芯から震えが来るような寒さではなかった。
グローブも不要だった。


ふり返ってみると、雪を纏った阿弥陀岳がぼんやりと見ることができた。
長く滞在していれば必ず見ることができる風景なのだろうが、今夜は本当にラッキーだ。

外のベンチに腰を下ろしもう一本煙草を吸った。
明日のことを考えるのだが、あの滑落死亡事故のニュースが頭を掠める。
「違うルートなんだから大丈夫・・・のはずだ。」
自信を持ってそう言いきることに抵抗を感じた。
登山であれば危険はつきもの。
雪山であればそれは尚更である。
ただ、人が亡くなったばかりの同じ山に登ることにどこか気が引けた。

考えれば考えるほど滅入りそうだった。
「こんな静かな月明かりの夜にもったいない」
そうも思えた。

明日は3時に起床予定。
「やっぱり無理にでも早く寝よう」

テントへと戻る道すがら、ちょうど阿弥陀岳の上に月が重なって見えた。
もったいない風景だと思いシャッターを押したが、一眼レフであればもっと良い写真が撮れるのだろう。


さて寝るべか。

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