常念が見える部屋から

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季節の移ろいに写真を添えて発信します。

小さな石仏

2010年10月07日 | 季節の便り


道端の樅の木の根元に安置された小さな石仏がある。
昔からあったようで、子供のそり遊びでは勢い余って衝突し、よくひっくり返したものだ。
風化して表情は定かに窺えないが、手を胸に組んだ姿勢と、かすかに残る面差から、真剣な思いが伝わってくるようだ。
亡くなった要二郎叔父が云った。
昔ここに小さな泉があって、流れ出した湧水が流れ込む池があった。
池の岸辺には葦が茂り、美しい水を透して小魚の泳ぐ姿が見られた。
ある夏の日、農家の馬小屋から抜け出した仔馬がこの池にはまった。
もがけば、もがくほど深みに足を取られ、ついに力尽きた。
仔馬を可愛がっていたその家の、病弱な少女は、その変わり果てた姿に泣いて、泣き暮し世を去った。
この石仏は、残された少女の家族が、痛いけない彼女の為に建てた供養塔なのだ。
これは、叔父が、祖父市十から聞いた本当の話だという。
市十と少女の続き柄は判らない。
仏壇の中に3枚の板位牌が収めてある、その戒名は童女となっている。


コメント
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