或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

火の魚

2009-08-07 06:19:23 | 370 テレビ
録画してあったのを観て、なかなか良かったと思ったのが地元のNHK広島放送局が製作したドラマ「火の魚」。舞台が大崎下島という瀬戸内海に浮かぶ島だったので、予告を見た時からなんか親近感が沸いていて。NHKのドラマは割りと好きかなあ。内容はともかく現地ロケが充実しているから。バックの風景を眺めているだけで楽しめる感がある。今回も期待を裏切らなかった。

若い頃に直木賞を受賞しブイブイいわせていた作家が、病気を機に故郷の島に戻り執筆活動を送っていた。彼が書く連載小説の原稿を受け取りに来たのが東京の出版社に勤める若い女性編集者。才気も薄れ淡々と毎日を過ごす作家に芽生える淡い恋心。主人公で老作家の村田役が原田芳雄で、相手の折見役が尾野真千子。初めて彼女を見たけど、なかなかの美人。

ノスタルジックな海辺の街の風景が素晴らしい。特に作家の書斎の雰囲気は最高。原作が未だ読んだことがない室生犀星ということもあり、初版(1960年)をネットの古本屋で購入。上の写真がそれなんだけど、汚れ具合といい擦れ具合といい、まさにアンティークそのもの。嬉しくて少し興奮してしまって。古めかしい文体に戸惑いながらも短編だったのですぐに読み終えたけど。

驚いたのはドラマと原作のストーリーがかけ離れていたこと。登場人物と金魚の魚拓というモチーフを除けば、ほとんど関連がない。というか原作は随筆で、もともとストーリー性がないから。その意味ではよく練られた脚本だったような気がする。

面白かったのが原作の中でも出てくる影絵のシーン。村田の依頼で折見が島の子供たちを相手にお寺の本堂で劇を上演するのだけど、最近見かけないだけに懐かしさ満点だった。ウケたのは劇のひとつがオスカー・ワイルドの童話「幸福な王子」だったこと。こんなドラマで彼の作品が出てくるとは、なんかねえ、パリで彼の足跡を辿ったすぐ後だけに妙につながるなと。



幸福な王子―ワイルド童話全集幸福な王子―ワイルド童話全集

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