或る「享楽的日記」伝

ごく普通の中年サラリーマンが、起業に向けた資格受験や、音楽、絵画などの趣味の日々を淡々と綴ります。

シューマンの指

2010-12-20 05:52:31 | 010 書籍
小説はホント久しぶり。調べると書籍関連の記事は昨年の10月以来で約1年ぶり。振り返れば、職場を変わり、さらには転職をして、環境が大きく変わる中で気持ちに余裕がなくなっていたんだなと。気を引くような小説に出会わなかったというものあるけど。前置きはいいとして、読んだのは奥泉光が書いた「シューマンの指」(2010年)。図書館で4ヶ月も待った人気作品。

音楽ネタで、しかもシューマンがらみだったので食指が動いたのは確か。読み始めて驚いたのが、小説というよりシューマンの音楽論とピアニストの音楽評論がほとんどだったこと。まあこういうのは嫌いじゃないので「ふむふむ、そういう好みなのね、あなたは」、なんて感じで読み進んでいったのだけど、クラシック音楽の素養がない人にはチンプンカンプンだったはず。

それにしても少々度が過ぎた感があったかな。とにかく前半はミステリー小説としての進展はほとんどなかったから。後半に入りようやく事件の全貌が明らかになってからは、逆に話が早く進み過ぎて味わう暇がなく、気がつけばラストに突入していたって感じ。まあシューマンが題材なので、構築性に欠ける彼の音楽の特徴を自分の小説に投影したのなら天晴れだけど。

なかなか気が利いていると思わせたのが「ダヴィット同盟」を引用していたところ。シューマンが自分の意見を述べるために設定した架空の団体を小説のネタとして持ち込んだあたりは手がこんでいる。だけどそれ以上だったのは、やはり題名にもなっている”指”の話かな。冒頭からラストまで、いろいろな場面にうまくちりばめられていて面白かった。

読み終えて脳裏をかすめたのがデュッセルドルフ。シューマンの終焉の地。梅毒に起因するとされる精神障害が悪化して、最後はこの街を流れるライン川で投身自殺を図った。それが1854年2月。何度か出張で行ったけど、ライン河畔に位置する旧市内の繁華街であるアルトシュタットの石畳の通りが懐かしい。そういえば、クリスマス前のちょうどこの季節にも河畔を歩いたっけ。

シューマンの指シューマンの指 シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、幻想曲シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集、幻想曲

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