らんかみち

童話から老話まで

女房に財布の金を抜かれ

2007年04月24日 | 男と女
「財布から金が無くなる気がすんねん。女房が抜いてるんや思うわ!」
 何も身内の不祥事を酒の席であかさずともよかろうにと思うんですが、久しぶりに会った男は真顔でいいました。
「あんたが奥さんに十分な生活費あげてないんとちゃうか? しゃあないで、そら」
「いや、そういう問題やなくて、足りんならいうてくれたら渡すやんか」
「いうて金をもらえるならとっくにいうてるやろがぁ」
 とまあ夫婦のことは所詮他人には分からないんですし、彼が何を隠してどの部分を誇張していってるかも分からないんですから、真剣に受け答えしていると腹が立つだけです。
 
 それはともかく、日本の一般家庭での収支って、夫婦のどちらが管理しているんでしょうか。アメリカの家庭では夫が財布を握っているのが普通だと聞いたことがありますが、ぼくの周りの夫婦だって結構その図式が多いと思いますし、ぼくの父もそうやっていたはずです。
 今となっては真偽の程は確かめようもありませんが、たぶん父の場合は自分の飲み代が何にも増して最優先であり、家計は二の次だったと想像しています。吝嗇というほどではなかったにしろ、父は自分のこと以外の出費には倹約家だったのです。

 父が亡くなると、もともと金銭に執着しないたちだった母は、それまでの忍従の日々から開放されて、タガが外れたかのように豪快に散財(といってもたかが知れてるのですが)し始めました。
 でも考えてみればそれは当然の権利だろうと思います。なぜなら父は生活費は出していたかも知れませんが、母の主婦業に見合っただけの報酬なんて一切支払ったことが無かったに違いないからです。

 自分の財布から奥さんに金を抜かれるやつも、どちらかというとぼくの父に似た実に身勝手でけちな男なので、奥さんはじゃんじゃん金を抜き取ったら良いと思います。だってじっと耐えていたって旦那が先死ぬ保証はありませんし、年上女房なんだし……。
 
「ほら財布見てみぃ、これだけ入ってたら万札の一枚や二枚抜かれても分かれへんやんかぁ!」
 あのバカ、何がいいたいのかと思ったら、このところ金回りが良いのを自慢したかったらしいのです。
「お前なぁ、そこまでいうんやったら今日は奢りやろなぁ!」
 その通り、きっちりというか珍しく奢ってくれましたが、たまにはバカとバカ話するのもそれなりの刺激にはなるもんです。

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