らんかみち

童話から老話まで

生きているだけで素焼きのありさま

2009年04月30日 | 暮らしの落とし穴
 この二日ほどは酒が飲めないどころか、ほとんど食べられないような体調不良をかこちつつも、「熱があってお腹が痛くて」などとうっかり救急車など呼ぼうものなら、宇宙服みたいなの着た救急隊員がどっと押し寄せやせんかと、時節を鑑みて我慢してました。
 
 その甲斐もあってか、メタボの追跡検診では良好な結果を呈して、「頑張りってますね」って保健師さんにほめられても……。「完全ダイエット」とか、まあ何かを詐称したわけでなし、彼女たちにとっては結果さえゲットしたら業務を遂行したことになるんだろうから、今日は一日一善でした。
 
 生きているだけで誰かの役に立っているのかなぁと、そこはかとなく安心したものの、その何倍も人に迷惑をかけていながら知らずに過ごしている可能性もあるかもしれません。陶芸を始めて三回目の素焼きでしたが、ぼくの作品は背の高いものや幅のあるものなど一貫性を欠いているので、窯詰めをして下さった先輩が頭を悩ますことに。
「あの、無理に立てなくても、その辺に転がして置いてくれたら」
と、キャリーオーバーになりそうだったのを、けじめをつける意味でも無理やり詰め込んでもらいました。

 でも本当のところ、「こんなもの自分でも使わん!」というような駄作もあって焼いていただくのも忍びないけど、挽いたものは焼いてみないと分からないこともある。なので本焼き時点で間引きするつもりなんです。
 で結局転がして焼いていただきましたが、人は生きているだけで誰かに助けられているんですねぇ、良い作品を作ることでお返ししなくては。

しめ鯖を作ってはみたものの

2009年04月29日 | 酒、食
 釣りたての鯖をもらったのでシメサバにしてみました。今が釣りごろの鯖、死んでいるのにピリピリと痙攣してるのは、いわゆる沖締めという手法でしょうか。びくびくしながら第一刀を頭と胸びれの間に打ち込むと、自分の指を切ったかと見まごう流血に驚きました。お腹を開けてみると大きな卵がぎっしり詰っているってことは、身が痩せているってことでしょうか。
 
 卵を産む前がおいしい魚、産んで後においしくなる魚といろいろありますが、鯖は果たしてどちらだろう、などと考えていて、シメサバの作り方がわからない! 
 こういうときにネットは便利で、たまたまヒットしたページを参考に作ってみたんですが、小骨が抜けない。新鮮な魚というのは小骨が抜きにくいのか。仕方ないので塩を振りかけてから2時間待ち、酢で塩を洗い流すようにして出汁昆布と一緒に酢漬けにして冷蔵庫に。
 
 およそ4時間後、冷蔵庫から取り出してみると、いくぶん小骨は抜きやすくなってますが、売られているシメサバみたいに完璧とはいきません。でも味は新鮮な鯖だからさぞ旨かろうと期待したのに、酸っぱい刺身という以上のものじゃなかったんです。売られているのはもっと乳酸菌っぽい柔らかな酸味と旨みなのにどうして? 
 出し昆布が少ないのか、それとも白ワインビネガーを使ったのがいけなかったのかも……あるいはバルサミコ酢にすべきだったかって、そういう問題じゃなさそうなので、一晩冷蔵庫に寝かせてみます。

豚にもマスクを

2009年04月28日 | 社会
豚インフルエンザに関するQ&A(ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト) - goo ニュース

 かつてSARS(新型肺炎)流行の兆しがあったとき、医療機メーカーは競って感染症患者搬送ストレッチャーを開発し、ぼくも病院に売り込みに行ったもののほとんど売れませんでした(その後予算が下りたかもしれない)が、今回の豚インフルエンザ問題では間違いなく売れるでしょう。
 
 また当時、N95という性能のマスクはバカ売れし、売っている側ですら仕入れができず、本当に必要な人にまで行き渡らないという事態も起きたんです。どこかの賢い人が大量に買い占めて、ネットオークションで売り出し、その価格も本来なら1枚100円程度なのに5000円の値が付いてそれでも売れていたようでした。
 
 あれから6年くらい経ってサーズという言葉は聞かれなくなりましたが、代わって鳥インフルエンザ、そして今回の豚インフルエンザの猛威。豚にもインフルエンザがあるとは知りませんでしたが、鳥みたいに広範囲を移動しないのにどうして感染が広がるのか不思議です。
 
 思うに、昔からインフルエンザウィルスにとって、人とその他の動物の垣根なんて無かったんじゃないでしょうか。人間が勝手にウィルスを分類していただけのことで、もしかしたら人インフルエンザを動物に感染させてきたのは人間だったんじゃないでしょうか。そうなるとマスクが必要なのは家畜の方なのかもしれません。
 
 豚にマスクは無理としても、豚舎の対策はできそうです。でも問題なのは、黒毛和牛とか黒豚とか、同じ種の家畜ばかり飼うようになって、家畜の進化を人間が止めてしまったこと。薬に頼るようになって人も進化を止めたこと。
 死んでいくのも進化のうちだといわれても、淘汰される側に立つのは嫌なので、犠牲になった方々に敬意を払いつつ、ワクチンが開発されるのを待ちたいと思ってます。マスクは今ならまだ簡単に手に入りそうです。

廃墟じゃないけど、四阪島もいい

2009年04月27日 | 暮らしの落とし穴
 端島(はしま)通称軍艦島の観光上陸が解禁されたニュースを聞いてムッとなった廃墟マニアも多いのではないでしょうか。立ち入り禁止の場所が設定されたり遊歩道が設置されたりと、廃墟マニアのエンスー魂を殺ぐ事態に失望したでしょう。
 軍艦島に上陸するのは確かに禁止されていたんですが、実際には隠密ツアーが存在したらしく、島で一泊したような話をこっそり書いているブログを見たことがあります。
 
 廃村、廃墟はぼくも好きで、遍路で四国を歩いていて廃村を通過したときは心躍ったものです。何が良いって、そこにはかつて確かに生活があり、その匂いをまだ微かに残しながらも存在は無い。存在しないけれど存在を超えた何かが厳然と有る。その静謐さゆえにかえって確信に満ちる瞬間がたまりません。
 
 色不異空、つまり存在するというのは存在しないことと異ならず、空不異色、つまり存在しないのは存在することと異ならない。色即是空、空即是色、是諸法空想。元々無いものなら生まれることも死ぬことも無い、という般若心経の教えを体現できる、異界との接点が廃墟なんです。
 
 うちの島にも廃墟に近いけれど今も工場が細々と稼動する「四阪島」という島が、まるで衛星のように寄り添ってます。現在の住民はゼロですが、ぼくが子どもの頃には小中学校があって、陸上の交流試合なんかが行われてました。四阪島というからには坂があるのかな思っていたら事実、高台にある学校に通学するのでみんな足が早かった。
 
 軍艦島の観光が成功したら、もしかして四阪島も観光利用されるようになるか知れません。歴史や人口などもかつての軍艦島と良く似ているようですが、面積が広く文化的な遺産は見所十分。
 今でも住友金属鉱山さんに許可をもらえば上陸できるし、テレビなどでもよく紹介されてます。どこかの旅行会社さんに、ぜひともツアーを企画してもらいたいです。

文芸の公募は楽だなぁ

2009年04月26日 | 童話
 公募ガイドを読んでいて、陶芸コンクールの情報が載って無いことに今の今まで気がつきませんでした。人は見たいものしか見えないということでしょう。
 専門誌にはもちろん陶芸コンクール情報があるんですが、それによるとほとんどの公募で出品料、あるいは審査料の名目で1000円から10000円くらいを要求されるようです。
 さもありなん。原稿用紙と違って重くてかさばるし、返却しないといけないなら傷もつけられない。そればかりか、有象無象のゴミ作品が大量に寄せられたら、審査する側だってかなわんのでしょう。そのかわり賞金は悪くないです。
 
 なになに? 一次審査は写真審査で、それを通過した作品のみが作品の搬入が許されるか、ミスコンみたいだな。応募要領を読んでいて(出せるほどの腕は無いが)知らない世界にカルチャーショックを受けながら、はて、受賞した作品はどうなるの?
 搬入は持ち込みと運送屋を使う手があるようですが、賞金と引き換えに作品を納めるんでしょうか。文芸なら著作権放棄を要求されますが、あまりにも当たり前なことなので書いてないんでしょうか。
 
 そういえば「怖い話の賞金を振り込みました」と主催者側から電話連絡があって、口座を見たら確かに陶芸の出品料くらいの小銭が振り込まれていました。賞金が少なくても無いよりはマシですが、文芸はネットでも応募できるから楽でいい。しばらく陶芸にかまけていたので、そろそろ文芸に戻らなくては。

猥褻と慈善の境目

2009年04月24日 | エンタメ
 そうか、裸になるのは最低の輩のすることか。だったら米長将棋連盟会長も最低の人間ということになって、逮捕ということに。といってもあれは時効だろうし、最近じゃセクハラ疑惑のほうが問題になっているんだとか。
 人の地位や名誉、業績は、性癖や性的嗜好と何らの相関関係も無いということは、聖職者がたびたび猥褻事件で逮捕されるのを見てもわかります。アメリカじゃ大統領までが不倫だかなんだかで弾劾されそうになったじゃないですか。
 
 草さんが何をやったのか詳しく分かりませんが、裸で騒いだくらいで家宅捜索ってどうよ。自宅から薬でも見つけたら鬼の首でもとったような発表をするつもりだったんでしょうが、勇み足の別件逮捕みたいな印象はぬぐえません。酔っ払って騒いだならヨンパチ(48時間拘留)を食らう程度が相当でしょう。
 
 ぼくは酔っ払って道端に座り込んで将棋を指したことはありますが、裸になったことはありません。自分の肉体を他人様に見せるのに忍びない、というだけの理由です。
 自信がある人はどんどん脱いで、道頓堀川でもどこでも飛び込んだらよろしい。叶姉妹だって自信があるからこそ脱いでいるんでしょう。叶姉妹もそうですが、草さんの裸ならぜひ見てみたい、と思った人も多いんじゃないでしょうか。だったら慈善行為と認定。

命賭ける思いで徳利

2009年04月23日 | 暮らしの落とし穴
 ローズフェスティバルに向けの作品つくりは今日が最後。あと1回の窯入れなのでなんとか玉壺春とっくりを挽きたかったんですが、やっぱり難しい。もちろん分厚いので良ければ一応はできますが、それだと乾いた後でどっさり土を削る必要があります。要は高台を削る以外のことはできるだけしたくない、いやできるなら高台も削らないのを目標にしてるんです。
 
 形にこだわるのをやめ、とっくりにこだわるのもやめ、ひたすら数を挽こうと思ったものの、ロクロの前に座り続けていると腰が痛くなり、肩が凝って我慢できなくなりました。
 ロクロって命を削るような思いをしないと上手くならないのか! と腰を伸ばしているところへ携帯の着信。泥だらけの手でとってみると、3年ぶりに友だちからでした。
 
 久しぶりに話が弾むかとおもいきや、どうも様子が変なので聞くと、半身不随になって3年間寝たっきりで、今も入院してリハビリ中だとか。杖を突いて歩けるまでに回復したものの、左手が麻痺したまま。世界中を旅して回った男がベッドに縛り付けられ、3年間をどんな思いで過ごしたか想像することさえはばかられます。
 見舞いに行くと約束したものの、山口県まで行くなら高速1000円でないと損するなとETCを注文しようと思うのに、なんと入荷予の目処が全くたたないのだとか。
 
 それにしてもこの歳になると、どこも悪くない友人って少ない。みんな手負いのありさまなのも、昔でいう隠居の歳なんだから仕方ないか。

他人事じゃないよね

2009年04月22日 | 暮らしの落とし穴
結婚せず家族を支え続けた清水由貴子さん…悲しい死(スポーツニッポン) - goo ニュース

 朝日新聞の小噺欄に、2歳の子どもがウォシュレットのトイレを使って、「トイレもおしっこするんだ」と言った。を読んで思わず吹き出しました。子どもの迷言っておもしろいけど、年寄りの迷言も劣らずおもしろい。
「姑が『今何時? 今何時?』としきりに聞くので『時計を見たら分かるよ』と言うと、『でもあの時計、針が上がったり下がったりするから分からんの』って、そりゃ時計の針は上がったり下がったりするわい言うたんよ」

 近所の70歳くらいのお婆ちゃんの言うことですから、姑はたぶん100歳くらいでしょうか。ぼくの母もそこまでではないものの「今日は何曜日?」と1日に何回も聞くので、姉に曜日のはっきり分かるデジタル時計を買ってもらいました。おかげさまで「何曜日?」とは聞かなくなったんですが、なぜか日めくりカレンダーを出鱈目にめくって破るようになって……。
 
 清水由貴子さんのことをぼくは知らないんですが、介護に疲れたんだろうなって容易に想像できます。うちも、ただならぬ物音がすると、転んだんじゃないか? とか、母が台所に立っているときは火の消し忘れに神経を使うし、帰りが遅いと帰巣本能を失ったんじゃないかと心配します。
 肉体的に元気な母ですらそうなんですから、車椅子のお年寄りを介護するのはさぞ大変だったことでしょう。願わくば清水さんが安らかな眠りにつけ、お母さんが何も分からなくなっていてほしいです。

ハイタネ、竹の子じゃないよ似てるけど

2009年04月21日 | 酒、食
 ♪ツクシだれの子スギナの子♪ 幼き日に歌ったような記憶はあれど前後の歌詞は忘れました。本当にそうなのか年甲斐もなく知らないんですが、筍が竹の子だというのは知っている、といっても子どもの頃はイタドリ(ハイタネ)が竹の子だと思ってたのは不覚です。
 
 イタドリというのが正式な名前なのかどうか、高知県の人に聞けばそういいますが、学校の帰りに道草を食っていたのは正にそれで、スカンポと呼んでました。手折ると「スカンポ」と音がして、皮をむいて食べると酸っぱくてシャキシャキしてて、今の季節に咽を潤す道草としてはうってつけだったように思います。
 
「あの酸味はシュウ酸といって、結石の原材料だから生で食べたらダメよ」といいながら、ご近所さんがイタドリを数本くれました。皮をむくだけで肩が凝りますが、それを茹でて更に一昼夜水に浸してシュウ酸を抜き、ごま油で炒めながら醤油みりんで味をつけてみると、なるほどこの食感、高知の人が愛して止まないわけだ、と理解できる柔らかくも歯切れの良さ。

 風味というのはないので、とにかくやさしい歯ごたえを大事にするため、茹でるのは10秒程度が良いようです。たくさんあったので、残りは塩漬けにしてみました。シナチクの代わりにラーメンの具などにできそうです。

ハテナの徳利ばかり

2009年04月20日 | 暮らしの落とし穴
 陶芸を始めて2回目の窯出しに朝飯も食べずに臨んだものの、出てきた作品はトンカチものばかりでした。本焼でひび割れしたのもあったけど、釉薬が今ひとつ冴えを欠いたものばかり。ぼくのだけじゃなく、他の方の作品もおおむね低調だったのは、詰め込みすぎて十分に火が回らなかったからでしょうか。
 
 なかなか処女作を超えられないもんだなぁと改めて実感したのは、自分でハードルを高くしたから? それとも初めての窯出しほどの感動がなかったから?
 とにもかくにも自作の器に料理を盛り、自作の徳利とぐい飲みで飲む酒は美酒の味わい、といってたらなんと、徳利から酒が漏れてるじゃありませんか。他のはどうかと水を入れて調べてみると、作品の半分に許しがたい水漏れを認めました。
 
 ハテナの茶碗という落語があります。お茶屋で茶を飲んでいた油屋さんが、茶道具を商う有名な茶金さんと呼ばれる御仁とたまたま隣同士になります。その茶金さんがお茶を飲み終わってしげしげと茶碗を眺め回し「ハテナ?」といって立ち去ります。これを見ていた油屋さん、きっと値打ちのある茶碗に違いないと、お茶屋さんから無理やり買い取って茶金さんの店に行くのですが「割れてもいないのに水が漏れる。ハテナ?」といったのだと分かり、油屋さんはがっかり。しかし最終的にはその茶碗に1000両の値が付いたという話。
 
 普通の家庭にある多くの器は、光は通すけど水を通さない磁器だと思います。我々が作っているのは、光は通さないけど水を通す陶器というもの。実はどんな高価な陶器を買っても水は漏れるんです。ぼくの釉薬かけに問題がないとはいわないけど、貫入 (かんにゅう=ガラス質のひび割れ)が入ったものは初めのうちはかなり漏れ、使い込むうちにやがてひび割れに何かが詰って漏れなくなる。なので商品にする場合には、あらかじめ食用シリコンをしみこませておくのが普通らしいです。
 でもまあ何わともあれ、自作の器でいただく酒と肴に一時の至福を見出しながら今宵は酔い痴れるとしましょう。