らんかみち

童話から老話まで

宅配ピザの熱き戦い

2007年03月31日 | 暮らしの落とし穴
 近所に宅配ピザ屋さんがオープンしてくれて、ピザ大好きのぼくにとっては大変喜ばしいことなのですが、不思議なことにその店が開店する前から、ライバル店のチラシがポストを埋め、宅配ピザの業界もかなり競争が激しいことがうかがい知れます。
 
 ピザが大好きといっても、シーフード系や和風系のものは食指が動きません。本当を言うとマルゲリータだけで十分なのです。それがなければブラックオリーブさえトッピングされていたら文句は言いません。オプションでトッピングしないといけないのは、高くなるのでちょっとムカつくのです。ところが悲しいことに近所にできた店はデフォルトではオリーブが載っていない店でした。
 
「キャンペーン期間中半額!」のチラシを持って、できたばかりの店に行きましたら、別にオリーブをトッピングするのは半額にはならないので、スーパーでオリーブの缶詰を買って自分でトッピングしました。ざまあみろ!

 ところで、ピザの宅配は、キャリングケースというのか、岡持ちのついた細身の三輪バイクというのが一般的ないでたちです。あのバイクのライダーが高校生のバイトだったりするのは良くあることですが、彼らの間でも実は競争があるらしいんです。
 
 Dピザの店員が配達に行く途中で赤信号で停まると、その横にライバル店のKピザのバイクが停まるではありませんか。互いにヘルメットのバイザー越しに目と目が合いました。
「オレとやる気か?」
「そっちこそ後悔するなよ」
 言葉を交わすまでもありません。信号が赤に変わってスタートしたなら、次に赤信号で止められるまでにどちらが先んじているかが勝負です。
 グゥングゥン、グゥーン
 クロスする側の信号が青から黄に変わると、二人はエンジン音を響かせ、対面信号が青に変わるタイミングを見計らっていたそのときでした。
 
 ピザ宅配のバイトをやっていた坊やから聞いた話ですが、つづく

統一地方選、馬鹿を選ぶなよ

2007年03月30日 | 社会
 統一地方選挙が告示され、あれからもう4年も経ったのかと、前の市会議員選がついこの間のことのように思い出されます。あの時は場末の飲み屋に集う飲み友だちが市会議員に立候補したので、ちょっとだけ応援したのですが、他の飲み友だちは仕事の合間にビラ配りなんか手伝いました。
 
 当時ぼくはまだ会社に在籍していたので、立候補した飲み友だちとはそんなに深く付き合いは無かったのですが、知らない偉い人が議員やってるより、たとえ馬鹿でも知っているやつが議員の方が何かと都合が良かろう、という下心から一票を投じたのです。
 でも知り合いなんか「ワシの息がかかっとるやつを市議会に送り込んだるんや!」と息巻いていたのですが、あえなく落選しました。
 何度目かの立候補だったので、順当に行けば当選するはずだったのですが、そうならなかったのにはちゃんとした理由があったのです。
 
 ぼくがに思うに、彼を取り巻く連中はどことなく雰囲気の良くない人たちでした。ですが、落選したのは彼らのせいではなく、そんな連中にすら逃げられた彼自身に問題があったのは明らかです。
 にもかかわらず、彼が落選して言う事にゃ「今回は戦術が間違ってたと思うねん」って、お前の選挙ポスターはだめだって教えてやったろうが、と冷たく突き放してやりました。なぜって、当選する前から偉そうにふんぞり返った写真を使っていたのですから。
 
 その後の彼の凋落振りは目を覆わんばかりなのですが、貧すれば鈍する、の喩え通り、彼の本性が馬脚を現し、とうとう最近では場末の飲み仲間からも見捨てられてしまいました。今どこでどうしているやら、ちょっとだけ可哀想に思っても、やつの電話番号は着信拒否にしてますので行方は分かりません。
 
 選挙が告示されるとあの頃はそれなりにそわそわしたものですが、あの馬鹿がいなくなってそれが無くなるのは寂しいなと思っていたら、場末の飲み屋に新人さんのポスターが貼られたではありませんか。「今回の選挙は○○さんにお願い」と、飲み仲間が言うので投票してもいいんですが、こいつは知らない馬鹿じゃないんだろうな!

地震の波に乗せて、鳥野菜

2007年03月29日 | 酒、食
 能登はまだ強い余震が続いているらしい。サンケイ新聞によると石川県は当初の、ボランティアを受け入れない意向をひるがえして、どうかお年寄りに手を差し伸べてあげて下さいと、一転して受け入れを表明したのだとか。
 
 そりゃあ、ボランティアにもいろいろあって、手伝いもせずに飯だけ食いに行ったり、ゴミを捨てに行くような不貞の輩も出現するんでしょう。そうなるとボランティアの定義とか、奉仕の精神みたいなものがあやふやになり、悪化が良貨を駆逐するように、真摯にボランティア活動する人々が変な目で見られる状態になるのでしょう。治安の問題もあるでしょうから、石川県の対応は分からないでもありません。
 
 ぼくも車椅子を押すボランティアをした経験があって、障害者の人たちと仲良くなって一緒に酒を飲んだりしました。酔うと彼らは体の緊張が取れ、自力で車椅子を動かしたりできるようになったりするんですが、こちらの方はだんだんと舌が回らなくなる、足元はおぼつかなくなるで、結局彼らの家に泊めてもらったりするような不良ボランティアでした。
 
 なので、ボランティアと聞くと、描きかけていた絵を途中で投げ出したみたいな気になって、あのカンバスを無駄にせず、なんとか絵を完成させたい、と気ばかりあせるんですが、ずっと二の足を踏んだまま今日に至っております。
 ですが、能登ならボランティアでなくても今一度行ってみたいと思うのは、能登の名物「鳥野菜」を食べたいからです。
 
 今から10くらい年前でしょうか、仕事でかの地を踏み、とある食堂で食べた鳥野菜鍋がとても美味しく、「これは秘伝の味噌を使っているんですか?」と、店の方にたずねたのですが、「いいえ、松屋さんの味噌ですけどぅ?」と、変な顔をされました。
 どこでも買えるからと言われ、確かにどこでも売っていたので買って帰り、鶏肉と適当な野菜を鍋で煮たら、間違いなくあの味が出ました。
 
 その後コンビニのファミリーマートから「鳥野菜ラーメン」なるものが発売されましたが、一過性に終わったようです。味はあの通りだったんですが、たぶん、ラーメンにしたのが間違いだったと分析します。
「雨降って地固まる」といいますから、今回の地震で、石川県も能登も知らなかった人たちにも当地の名産が知れ渡ったのですから、地震をバネにして更なる発展をしてほしいものです。

魂を売るようにして公募に入選

2007年03月28日 | 童話
 スーパーの野菜コーナーに立って、3本で178円の人参を買うべきか、それとも、量は要らないのだから2本で148円の方を買うべきかで、5分ほど悩んだ挙句に買えない! というほどの優柔不断振りを嘆くぼくですので、昨日の日記の続きを書けなかった言い訳に、再び咳止め薬を持ち出したいと思います。
 
 本当をいうと日記を書き上げてはいるんですが、内容がぼくにとってはジュニアバンタム級(良く分かりませんが、ちょっとだけ重い)なので、昨日の日記を完結させるのはまた後日ということにしたいと思います。
 
 で、その代わりに能天気な内容をアップするんですが、またエッセイの公募に入選しました! といっても400字という、日々書いている日記よりも短いもので、起承転結で構成はしているものの、ほとんどエピソードに終始した作文です。
 
 ある企業のイメージアップのための公募だったので、その会社の製品をとことん褒め千切らないといけなかったのですが、ぼくとしては少なからず抵抗があったので、賞賛の言葉は書きませんでした。
 そのエッセイを投稿した日の日記を読み返しますと、あのときの胸の内が思い出されますが、まだまだ青臭いですね。
 
 それはともかく、ぼくの受けている童話講座は単に童話のみを勉強しているわけではなく、文章教室でもあるわけで、当然ながらお師匠さまはエッセイの書き方だって教鞭をとって下さるのです。
 お師匠さまは、ゴルフでいえば最前線で活躍するトーナメントプロなので、講座を主宰するというのは、いわばツアーの合間を縫って打ちっ放し練習場に来て下さっているようなものでしょうか。
 そう思うと、月2回の講座は大変に貴重な時間のはずで、ぼくなど行き詰って書けないときも多いのですが、中途半端でも、だましだましでも、なんとか作品を作品を提出するのです。
 
「皆さんの力は既に入選するレベルにあるんです」
 落選が続くと、教室でそう激励してくださるお師匠さまですが、「気休めを言われてもなぁ」と、ぼくがふてくされておりましたら、このところの連続入選です。
「HALさんのの努力が実を結び始めたのですね」
 お師匠さまに入選報告をしますと、そうねぎらって下さったのですが、
「違いますって、お師匠さまの情熱が花を咲かせようとしているのではありませんか?」
と、逆にお師匠さまをねぎらいたく思います。

 お師匠さまの講座に誘われて足かけ3年になるのでしょうか、これほど長く弟子をやっていながら、未だ何の結果も出せないことに忸怩たる思いでしたが、少しだけ肩の荷が下ろせた気がします。
 46歳という遅いスタートでありながら、「目標に向かって努力していれば、必ず花が咲きますよ」と、信じて導いて下さったお師匠さまに、感謝の言葉も見つかりません。

曲がった薬指を見ながら

2007年03月27日 | 暮らしの落とし穴
 右手の薬指が曲がっているみたいだなと気がついたのは5年くらい前だったか……そう思った頃から第二関節が痛くなってきたのでした。原因ははっきりしていて、左手の人差し指と右手の中指が密着するようにゴルフクラブを握るからです。
 ではゴルファーなら誰でも指が曲がっているかといえばそうではなく、長年にわたって間違ったところに力を入れてボールを打っていたからに他なりません。
 
 咳止め飲んで目が回り始めたので、続きはあした。

地震も万事塞翁が馬と思いたい

2007年03月26日 | 社会
 ぼくが日曜日の地震に見舞われたのは、NHK教育テレビの将棋番組を観ようとしたときでした。あ、揺れる揺れるぅと思いながらも、この団地は最近耐震補強をしたばかりだし、最も危険な縦型ピアノはもうないからへっちゃらです。
 いやそれどころか、久しぶりに揺れれるとなかなか気持ちが良いものだなぁ~なんて思っていますと、石川県で震度6強! そう、ここは震源からずいぶん遠いのでした。
 
 一夜明けて報道を見ると、死傷者こそ少なかったようでも、被害の大きさはかなりなものに思えます。一昨年の福岡県西方沖地震は3月20日午前10時53分で、やはりぼくはNHKの教育番組の将棋を観てました。
 将棋は決勝戦の白熱した戦いの真っ最中で、将棋ファンとしては途中で地震報道に切り替わったのは残念ですしたが、こればっかりはやむを得ません。自分が被害をこうむる立場なら災害報道を軽んじるわけはないのですから。
 
 しかし2005年の将棋番組中断でたった一人だけ得をした人がいるとすれば、それはあの決勝戦に羽生さんを負かした山崎隆之7段でしょう。あの一戦に勝ち、番組が中断したことで再放送され、あたかも2回優勝したみたいな印象を観る人は持ったのでした。
 元々人気も実力もあった棋士ですが、あの一件で更に人気が高まり、獲得賞金も10位以内にランクされ、あちらこちらに引っ張りだこになってしまいました。
 
 ところが世の中ままならないのは、金を稼いだからか、それとも将棋の研究をする時間が無くなってしまったのか、翌年度も、今年度も成績はぱっとしません。人間万事塞翁が馬といいますし、何が良いことにつながるか分からないのですから、地震から復興したとき、石川県は今よりも住みよい県になっていることを期待したいです。

求む、ニュー露出姐さん

2007年03月25日 | 酒、食
 飲酒運転の取締りが厳しくなったというのに、あいも変わらず車に乗って来て、飲んで運転して帰る客は後を絶たない場末ですが、中には駅前からタクシーを乗り付ける人もいたりします。この金曜日もそうでした。
「歩いても15分なんやから、金使うてタクシーで来ることないヤンか」
「アホか! ワシは今金持ちやねんぞ、んなことができるかい」
 そう豪語するのは、ついこの前飲酒検問に引っかかって現在免停中のお客ですが、免許が戻ったらどうするのか見ものです。
 
「さて、そろそろ店閉めるしぃ、餃子食いに行こうかぁ?」
 カウンターの向こう側で焼酎のお湯割りを飲み干したマスターが言いました。
「店閉めるて、まだ7時半やんか! ナンボなんでも早過ぎるでぇマスター」
 嘘じゃないんです。あのまま放っておいたら確実に店を閉めたに違いないのですが、さもありなんと、電話をしてくるお客がいて、マスターの目論見はついえたのです。
 
 とはいえ9時に店を閉めると、結局は餃子を食べに行き、さらに駅前のうどん屋さんに繰り出したのですが、準備中の札が下がっていて、仕方ないので初めての店で飲んでいますと、あらま、いつぞやの露出姐さん! しかも20台の男性とお手手つないで入ってきて、少し期待したんですが、この日は露出は無し。
 
 それどころか、お姐さんは職場が変わるらしく、どうやら会えなくなりそうで、とても残念です。余人をもって代え難い人材だったので、バックアップを見つけるのは難しいでしょう。だからぼくも場末はしばらく休みたいと思っています。

どんなもんじゃい! と叫びたくはあれど

2007年03月24日 | 童話
「客をないがしろにして店を閉め続けとんのはえーとして、開店した思たら客のオレにワン切りで呼び出しかぃ? えー根性しとるやんけぇ、マスター!」
 客をナメるにもほどがあろうと、場末の飲み屋のマスターにこんな怒りをあらわにするようでは、「まだまだビギナーやのぅ」と、常連客の失笑を買うでしょう。
 ムカつくのをグッとこらえるぼくですが、新聞などに今回のエッセイ受賞が発表されるらしく、写真の提出を要求されているので、マスターにぼくの近影を携帯で写してもらうことにしました。
 
「なんでメガネみたいなもんかけるねんな?」
 目は悪くないのですが、100円ショップで度の入ってない伊達メガネを買って撮影に臨んだら、マスターが不審がりました。
「何でって、ちょいと世間に顔を出しせんならん羽目になってね」
「素のままやったらアカンのかいな?」
「アカンってことないけど、閉店間際のスーパーで半額の惣菜やら酒なんか買うてるやん、後ろ指されて笑われへんかなぁ思うねん」
「だぁれもアンタのことなんか見てへんってぇ、心配しぃないなぁ」
 まあ確かにマスターの言うことも一理あるんですが、酒焼けした昼あんどん面を少しでも知的にグレードアップできないものかと、黒ぶちのメガネをかけてみましたが……やっぱり大したことなかったです。
 
 人生初の公募入選ですので、「どんなもんじゃい、優秀賞やぞー!」と、亀田兄弟ばりに快哉を叫びつつ自慢して回りたいのはヤマヤマなんですが、まだ正式発表でもないし、記念品や賞金をもらったわけでもありません。いつ何時大逆転が起きるか知れないのですから、祝杯をあげるのはまだ早過ぎる気がします。
 哀しいかな、ほめられた思い出の少ない子がそのまんま大人になると、こんなときにでも臆病になるんですね。ほめられて伸びるタイプのぼくですが、今回は授賞式は無いのだそうです。ちょっとがっかり!

またも童話公募の落選通知、のち晴れ

2007年03月22日 | 童話
 3週間ぶりに出席した童話教室の合評で、生徒さんがたにめった打ちにされました。いつもなら問題にしないような文章の端々にまで懇切丁寧な突っ込みを入れてくださるばかりか、「この手口はホームアローンで既に使われていましたわよ」などと、痛いところをかき回す歯科衛生士さんよろしく、ぼくの人格、作品共々に断罪されたのです。
 
 しかも悪いことに今回は他に提出された作品がなく、休憩を挟んでの後半もまたぼくの作品がまな板に乗せられました。
「どれもこれも中途半端ですね。どんなストーリーなのか言葉で完結してごらんなさい」
 久しぶりにお目にかかったというのに容赦のない先生に促され、ぼくが大まかな梗概(プロット=粗筋)を話す間にも、生徒さんがたの取調べは続きますし、携帯には見たこともない電話番号が表示されて気持ちが悪いしで、もう散々です。
 でも先生が、ああでもありぃの……こうでもありぃのと、手入れをして下さり、なんだか立派な作品が完成しそうな錯覚をするぼくなのでした。
 
 いちるの望みを残して糾弾会はお開きとなりましたが、こんな日は飲まずにおれましょうか。自棄酒にふけるべく安ワインを買い込んで家路に着いて郵便受けを見ますと、××童話公募の落選通知が届いていました。
 やってられません。腹の虫が泣いています。顔で笑ってお腹の虫で泣いて、それでもだめな日は、うどんか蕎麦打ちに逃避した後に自棄酒というのがこのところの図式です。
 
 うどんも蕎麦も嘘はつかないし裏切りもしませんが、その時の心のありよう、心理状態がそのまま蕎麦やうどんの出来上がりを左右します。当然のように今日打ったうどんは信じられないくらいの出来の悪さでした。
「ついてない言うより、何やってもアカンなオレは。タミフルでも飲んだろかな!」
 本当にそんな気分でパソコンを立ち上げ、メールをチェックしました。未読メールは1件です。どうせろくなメールではないはずだから開くのをためらっていましたが、もしも先生からのお慰めメールだったら無下には出来ません。
 
「○○様 おめでとうございます」
 誰にメール送っとんじゃ、オレは△△じゃ、ボケがー! とゴミ箱へ捨てようとして驚きました。「おめでとう、当たりです」なんて、くじ運が良かったためしがないぼくなので、はなっから疑ってかかりましたが、よく読んだらエッセイの受賞通知ではありませんか!
 
 年末に書いて送った作品ですが、あの時なぜかメールがうまく送れず、受領メールも返信されなかったので、送れなかったものとばかり思ってました。それに過去の受賞作品を読むとどれも格調の高い文章で、今回のぼくの作品はそれらの足元にも及ばない拙いものだったのです。
 
 なのですっかり忘れていましたのに「優秀賞に選ばれました」(最優秀ではなかった)とあります。そうなのです、童話講座の時にかかってきた知らない電話番号とは、この受賞通知だったのです。それにペンネームで応募したのを忘れてしまっていたのでした。
 果報は寝て待て、捨てる神あれば拾う神ありですね。つくづくタミフル飲まなくて良かったと思いました。

一期一会、会いたいと思う人ほど、あえなくなるのは早い?

2007年03月21日 | エンタメ
「最後の真剣師」将棋のアマ強豪、大田学さん死去(朝日新聞) - goo ニュース

 そうか、とうとう亡くなられたのか! 太田学さんといえば、ぼくが将棋を覚えた頃の、アマチュアのヒーローだった方です。通天閣で会ったことはあったのですが、将棋を指してもらったことはありません。

 実はついこの前、場末の飲み屋でぼくと将棋を指した方から、「大田学さんと、大阪なんばの『天狗道場』で駒落ちで指したよ」と、聞いたのです。彼の実力は4段で、県代表クラス。
 互いに酔っているとはいえ、彼の力は相当なものだと感じました。その彼が駒落ちで指したんだからまだまだ大田さんは健在だな、と安心したんですが、「こっちが駒を落としたんですよ、飛車と角をね」と聞いて、耳を疑いました。

 太田さんは長く賭け将棋で数多の真剣師としのぎを削り、低段のプロとなら五分に渡り合った方で、それほどの手足れが二枚落ち!? いくら歳老いたといえどもちょっと信じがたい気がしました。いや、それより何より、駒を落とされる、つまりハンディキャップをもらうことをプライドが許すでしょうか。

 かつてアマトップに君臨し、最後の真剣師とまでうたわれた人が、駒を落としてもらってまで将棋を指すなんて、相当将棋好きだったんでしょうね。
 遠慮がちだったぼくは、通天閣で会っても声もかけられなかったくらいで、500円とはいえ将棋なんて教えてもらうどころじゃなかったんですね。早いうちに天狗道場に行こうとは思っていたんですが、おそかりしでした!