らんかみち

童話から老話まで

そば屋を、蕎麦を食べない地域に開業すると

2012年04月30日 | 暮らしの落とし穴


 足元の悪い今日みたいな日でも、そばを打っていたらお客さんは来てくれるんだ! この一週間というもの、「そばが食べたい」と来店して下さったのをお断りして窯作りに勤しんでいたのだ。
 損長総会みたいなのもにも(20年やってる人が表彰されてたけど、頭下がるわ!)忙殺される状況だったから、蕎麦を食べに来てくれた方々には申し訳ないことした。

 そんなこんなで、ふと気がついたら枯山水畑が一面緑色に粧っている。良い蕎麦が実るだろうか。夏蕎麦はまだ一度も収穫したことがないけど、去年の秋そばに限っていうなら、最高級の蕎麦と胸を張るわけにはいかないだろう。
 そりゃそうだ、当地の気象条件がどうのこうのという前に、アマチュアが片手間に栽培したそばを「最高だ」などといおうものなら、「うんうん、自分の孫は世界一だよね」と生温かく笑われるに決まっている。

 まあそういった位置づけの蕎麦だけど、完全無農薬だ。蕎麦用の登録農薬は2種類あるらしく、それを勧める人もいるけど何が何でも無農薬で栽培する。収量は下がるかもしれないが、端っから儲けようとは考えていないのだ。
 蕎麦を食べる習慣の無い地域に、どうやって蕎麦文化を伝承するかって腐心している。それは何も食べる側に限ったことではなく、粉屋さんですら蕎麦のことを理解していないのだ。楽観できる機運にない。


船頭窯の火入れ式

2012年04月29日 | 暮らしの落とし穴


 火入れ式ったぁ何事でぃ? といわれても初めてのことなので、写真のごとく窯に焼きを入れることかいな。これにてヒートセット・モルタルが硬化する、といっても煉瓦のように硬くなるのではなく、水に溶けなくなるだけのこと。

 約1時間で上部の炉内が400度以上に達したと判断し、冷凍しておいたピザ生地を延ばして焼いてみた。直に置いた予備焼き1分でクリスピー感が出たので、ピザソースなど塗らずにチーズをパラパラとちりばめて本焼きしたところ、2分でなかなかいけるじゃないか。

 次にソースを塗ってトッピングしたのをトレーに載せて焼いてみたら、予備焼きなしで約4分かかって焼けたが、残念ながらパリパリ感に欠けた。次にトレーを温めた後、5分30秒焼いてみたらほぼ満足のいく結果となった。

 総括するには早すぎるが、このタイプ(大きさ)の窯は温度が上がりやすい反面、断熱を考慮しないと連続して使うのは厳しい。子豚の丸焼きやターキーを焼くのに都合が良くても、ピザやパンに特化した窯ではない。一般家庭の多目的ユースで実力を発揮する設計だと思われる。
 この窯は完成を見たけど次があるんだよね、でも船頭は今期で卒業だ。


移動スーパーが来るようになって思う

2012年04月28日 | 暮らしの落とし穴


 移動スーパーが島を巡回するようになった。村には日用品を扱う個人商店が1軒あるが、今は事情があって閉まっているから、渡りに舟といえる。

 電動車いすを持っている年寄りなら2Kmほど乗ればスーパーに行けるが、そうでない人は配達をしてくれる店に注文しておくか、近所の人に買い物を頼むという手もある。ぼくのように生協を利用するケースもあるから、村の店が閉まったら年寄りが飢えてしまうってことはない。

つまりこの移動スーパーは、高齢者の利便を謳ったところで二番煎じなのだが、鮮度の良いものを自分の手にとって選べる魅力はある。それに、この移動スーパーが来る前にはお年寄りたちが定位置に集うので、サロン的な効用はある。

 そんなことより、地元で最も大きな店がこういうサービスを始めたところに、あぁついに高齢化もここまできたのか、と思い知らされるのだ。なんとかしなくては、どうやれば過疎化をくい止めることができるんだっ!


あだれ蕎麦の命運は

2012年04月27日 | 酒、食


 逆光を受けて金色に輝き、まるで干潟のシオマネキと見まごうこれが、2日前に発芽したばかりのそば。およそ70日で収穫できるので、刈り取りのころに梅雨が明けているってこと、無いよなぁ。

 そんなことを今から心配してもしょうがない。それより、もう一枚の畑でまたもや「あだれそば」が発芽しているじゃないか! 小さな畑なんだけど、そこには昨年、信州大そばという品種を植えた。

 大そばというのは4倍体というくらいだから、見た目でもかなり大きい。粉屋さんによったら「勘弁して下さい、機械の調整が面倒なんで」と、製粉を断られるかもしれない。うっかり信濃1号と交雑させたりして粉にできないと困る。

 しかし、たとえ蕎麦と雖も生きとし生ける物、半年ぶりに出した芽を摘み取るに忍びない。しかも昨年のは2年越しの種だったこともあり発芽率が悪く、収穫できたのは播いた量の倍程度しかなかった。そういった困難を乗り越え、未来に命をつないでいる姿は健気じゃないか。

 本当は枝豆を播く予定の畑だったが、こうなったら信州大蕎麦が夏蕎麦として当地に適合しているかどうか見てみよう。粉にしてくれるところがあるかどうかってのは、収穫できてから心配したらいいのだから。
 

華うどんも蕎麦も、万事塞翁が馬

2012年04月26日 | 酒、食
「もろやま華うどん」という、塩を使わず捏ねることや熟成の必要もない手打ちうどんを打ったことがある。しかし加水率のエラーや室温が低かったことなどもあって上手くいかなかった。それよりもなによりも、捏ねないと繋がらないだろう、という先入観が邪魔をしての失敗だったに違いない。

 そのときの日記を書いた記憶はあるが、自分でもいつ頃のことだったか思い出せない。その程度の記事なのに、読んで下さった方がおられ「もろやま華うどんと味噌煮込みうどんの相性はどうでしたか」といったメールをいただいた。
「もろやま華うどん 味噌煮込みうどん」のようなキーワード検索でヒットしたのだろうか、残念ながら一度試して上手くいかなかったので味噌煮込みには使わずじまいだった。

 埼玉県にある毛呂山町は、もろやま華うどんを地域おこしに活用しているらしく、ホームページにはその作り方が詳しく紹介されている。1度やってみた限りでは、プロセスが単純で年寄りや子どもでも造作なく作れる、はずなのだが、前述の通り失敗した。で、すっかり忘れていたときにメールで激励してもらったので、またやってみよう。

 穀雨の日に播いた蕎麦は、昨日発芽した。1号畑は収穫のときに落ちた種が20日には発芽していたので、新たに種を播く気にならなかった。なので十分畑を耕してない草ぼうぼうの中に蕎麦が育つことになり、恥ずかしいったらないのだが、蕎麦は万事塞翁が馬、くらいの気持ちでトライしている。

ラスト船頭であれかし

2012年04月25日 | 暮らしの落とし穴


 石窯の扉も完成し、これで損長鉄工所の任務はおしまい、と思っていたところへ、「誰が石窯を作っとるのか思うとったら、あんたか」とやって来たのは、またもや新たなる船頭さん!

「これは耐火煉瓦ぢゃろ、外側に壁土を塗らんけん。最初に建築用パーライトを混ぜた土を塗って、その上にラスを巻いたら、また土を塗って、中層には藁を混ぜた土を塗る。それが湿っている間に水硬性のポートランドセメントを塗ったら耐候性もしょわない」
 なんと、今までのどの船頭さんより理路整然としていて話が通じやすい。それもそのはず、一線を退いたとはいえ、ボランティアで左官をやっている爺ちゃんなのだ。

 ラスト船長の進言で、うちのメンバーが土壁掘りに山へと入ったが、その後どうなったか杳として行方が知れない。今は亡き地元の陶芸家も使ったと聞く赤土を探しに行ったはずなので、「陶芸に使える土だったら、ぼくにも分けて下さいね」とお願いしておいた。もし彼らが戻らなかったら陶芸用の粘土は……いやそういうことじゃなく……窯が完成しないじゃないか。


石窯マイスタージンガー

2012年04月24日 | 暮らしの落とし穴


 ぼくが石船船頭に名乗りを上げて6日目、窯が大きすぎることに恐れをなしたので、新たなる船頭に来てもらって助言を請うた。曰く「石窯に正解というものはありません、焼ければそれで良いのです。もし焼けなかった場合は、壊して改良できるじゃないですか」と。
 あ、そうだそうだ、コンクリートでがっちりくっつけているんじゃなく、ヒートセットモルタルを目地に入れているだけだった。800度くらいの熱で固まるけど、それでも接着された状態ではない。だから煉瓦も再利用できるんだった。

 そういうことか、ならさっさと組み上げてテスト焼きをやるに超したことは無い。窯の外側をL字アングルなどで支え、最も難所と思われる焚き口と焼き口をアーク溶接で仕上げたのだが、次々と仕様が変更になるので、パッチワークのような溶接になってしまった。
「なんか、ハウルの動く城を彷彿させるね」という声もあり、ちょっとモチベーションが下がるも、午後からは溶接機に使う延長コードに太いのを買って使ったら上手く溶接できた。

 船頭がよってたかって石窯を作っているので、「そのうち石窯が空飛ぶんじゃないか」みたいな心配する人もいる。大丈夫、ぼくがターミネーターとなって「石窯マイスタージンガー」を終わらせてあげよう。
 発注している部品さえ入荷すれば明日にでもぼくのナビゲーションは終わり、週末には火入れ式の運びとなろう。もっとも、これ以上船頭が現れなかったら、という条件付きではあるが。


石窯プロジェクトに危機が!

2012年04月23日 | 暮らしの落とし穴


 石窯プロジェクトも大詰めを迎え、本日は煙突の取り付けが完了した。最初からプロジェクトに携わっていなかったぼくとしては、この窯がどれほどの規模のものか理解していなかったが、今日の今日になってようやくどんなものか判明した。

 この窯って、ピザを焼くためだけに限定するなら、無駄にでかい! 大きすぎて天井からの輻射熱を利用できないため、ピザが焼けない可能性がある。
 世間ではこのタイプの窯が増殖中で、それぞれにピザを焼いたりパンを焼いているレポートが公開されているけど、我が子可愛さの欲目で見ていないか? うまく焼けていないんじゃないか?

 石窯そのものより焼くオブジェクトに関心のあったぼくなので、改めてこの窯のサイズを見て考えたら、子豚の丸焼きができる大きさじゃないか! 
 どうしよう、これは煉瓦屋さんにそそのかされたサイズじゃないのか。どうしよう、どうしよう……最初はパーソナルサイズだと思っていたのに、これは小さなパン屋を開業できる大きさだ。

 もしも修学旅行生を受け入れてピザ焼き体験をしてもらうなら、この窯の現状では厳しいのは明らかだ。この内部を3段構造にするとしたら、ピザを焼くだけなら十分な能力を発揮するはず。
 どうしよう、ぼくは並み居る船頭さんたちを説得するだけの経験値もなければ、鶴の一声を出せるほどのカリスマ性も持ち合わせていない。どうしよう、どうしよう……。


どっかに腕の良いバイク屋さんはないのか

2012年04月21日 | 釣り船とバイク
 バイクショップの「赤旦那」から「そろそろバイクの点検しゃりまへんか」いうてきたので持ち込んだのだが、2時間もかかるなんて、勘弁してくれよ~!
 オイル交換、タイヤの空気圧チェック、チェーンの給油くらいで済むはずだったのに、「後ろのタイヤがパンクしているかもしれない」とのことで、そんなはずはないのに? と眉にツバをつけながらも修理にかかってもらった。

 バイクの後輪というのは太いだけでなく構造が複雑なので、仮に自分で修理出来ても大変な作業ではある。帰り道も怖いから3600円ならお任せしても、なけなしのプライドに傷がつくということもない。
 だけど、「このタイヤはチューブレスなので、ホイールとタイヤの隙間から空気が漏れています」といわれ、急に不安になった。
「これはチューブレスじゃないよ、バルブの形状を見てごらんよ」と指摘して初めてパーツリストを調べた。いや、調べなくても見たら分かるんだって!

 素人のぼくでも知っていることなのにと作業を見ていたが、もちろんチューブは入っている。しかもどこからも空気が漏れていない。この辺りまでに1時間以上を費やしていた。待ちぼうけの身としては辛いのだが、針で穴を開けられて「ここがパンクしています」みたいな流れにはならんとは思いつつも、念のために付きっ切りということで。

 組み立てるのに時間がかかるので、1時間前から姿を見かけるお客さんと話したのだが、「もう1時間かかるといわれました」なんて、ぼくより気の毒じゃないか。彼のはドゥカティといイタリアメーカーのバイクなら、パーツを組み付けるのだけでも一苦労なのだろう。
 あそうだ、ドゥカティは一昨日からドイツ社になったんだった。BMWに対抗するためか、アウディーが買収したんだけど、え、赤旦那さんはご存じなかった?

 因島に腕の良さそうなバイク屋さんを見つけたんだけど、バイクを預けなくてはいけなくなったときのことを考えると厳しいものがある。しかしパンクしてないタイヤを修理するようじゃ……本日の請求はオイル交換だけということにしてくれて、3900円なりぃ。

穀雨に蕎麦の種まきとは洒落ているじゃないか

2012年04月20日 | 暮らしの落とし穴
 二十四節気というのは中国の気候が元になった季節の名前なんだそうな。旧暦と勘違いしそうだが、太陽の運行に基づいて決まったというから、新暦での日付ということだね。それで本日4月20日は「穀雨」といい、穀物の成長を助ける雨の降る季節らしい。ということで満を持して蕎麦の種を播く。

 種と一緒に畑に鋤き込む肥料も必要なので、ホームセンターで14号化成肥料20kg(1750円)と牛糞堆肥5袋(1350円)を購入した。車には店員さんに載せてもらったのだが、走り始めてみると、オゲゲ、オゲゲ、くっさ~!
 牛糞だから臭いは覚悟していたが、ビニール袋に入っているのになぜ臭い? フゲゲ~、窓を全開にしても臭くて堪らん。百姓をやりたければ軽トラックは必須だと思い知らされた。




 ようやくの思いで1号畑に到着して牛糞堆肥の袋を良く見たら、穴が開いている! 発酵し続けているらしく、ガス抜きの穴が開けられているのだろう。堆肥は試験的に撒いてみたのだが、臭いだけでなく扱いも面倒だった。その上に1反の畑なら20袋も必要なのだとか。
 蕎麦の種は約5kg播き、14号を約10kg撒いた。種は去年の秋と同じ量だが、肥料は倍にしてみた。しかしこれで上手くいくかどうかなんて分からない。昨年のように初夏が猛暑だと、同じ轍を踏むことになるだろう。





 2号畑の隣に3号畑を準備したが、これは地主のたっての頼みということで、やりたくはなかったが断れなかった。ごらんの通り切株やら何やらが残っていて、トラクターを入れるのが叶わないからだ。
 だが良く見ると、これはこれで味がある。畑にも情緒ってもんがほしいと思っていたので、切株やニラを禅寺の枯山水に見立てて残す。駆地兵衛くんで耕すのは面倒だったが、趣ってもんがあるじゃないか。

 継子扱いされているように見えるなら残念だが、この畑には種を播かなかったのだ。播けなかったというべきでであり、播く必要がなかったともいえる。播こうと思って一歩足を踏み入れたところ、既に蕎麦が発芽しているじゃないか、いったい誰の仕業だ!

 恥ずかしながら……ぼく自身の仕業。というのは、昨秋この畑で収穫した時期が遅かったこともあるが、実に杜撰な刈り取りをしてしまったのだ。地元のおばちゃんたちの表現を借りるなら「あだれとるがね!」というように、回収しきれなかった蕎麦の実が大量に落ちたのだ。

 漁夫の利ってのはこういうことか! いや絶対に違う。違うけれど、ここまで成長した命を摘み取ってまでして収量を上げる気になれなかった。
 たくさん収穫できるに越したことはないが、ぼくらの農業はこの程度で良いと思う。

「儲からないと続かないよ」という声もあるし、それに反論はできないが、日本で無農薬の蕎麦を栽培しても中国やミャンマーの蕎麦に対抗はできない。蕎麦処の県じゃないので補助金もない。それでも、自家栽培の蕎麦って美味しいんだよ、というのを島の人たちに知ってもらいたい。
 蕎麦を播いてみたいと思う人には無料で種をあげている。ホームセンターにも「蕎麦を播きたい人に」と、商売の邪魔をしながら種を置いてもらった。島の人たちを、ゆっくりだがそそのかしている。