うちの村が盛りだくさんの行事を抱えているわけを知りたければ、およそ600年前にまで遡って海賊の書を紐解かねばならないのですが、近代になってのことなら、椀船で村が繁栄を謳歌した名残である、といえそうです。
まあそのへんのことは
土井中さんのホームページでもご覧になって、というかあくまでもおもしろ百科であることを念頭において、氏のゆるキャラ振りに思いを馳せながら読んでいただければ幸いかと……。
つまりぼくが言いたいのは、面倒な事が次から次へと押し寄せてきて窯焚きを始めるのが1時間も遅れてしまった、という愚痴に過ぎません。本焼は8時間という長丁場ですので、窯焚きの終わりが5時を過ぎてしまうと、照明も無い窯場は逢う魔が時(おうまがとき)も只中、とても怖いのです。
まあ時間の調整はなんとかなるとして、この時間を利用して童話を書いちゃいましょ♪ と、ノートパソコンを持参して窯を焚き始めたというのに、「よ、要釉斎先生! な、なぜ……」
「うむ、君がでたらめ仕出かして窯を傷めるようなことがあってはいかん、監視じゃ!」
そうなんです、陶芸クラブの重鎮、要釉斎先生が窯の取扱説明書を持参してお出ましになられたのです。
「ああせぇ、こうせぇ」と、例によって檄を飛ばしてくださるんですが、先生自身はこの窯が嫌いで焚いた事がないんです。アドヴァイスはありがたいのですが、ぼくの目論見とややズレがあるので聞いた振りして別のことをさせていただきました。
「おぅ、もう昼時か、儂は忙しいでな、すまんがこれまでじゃ」と先生はかえって行かれ、お昼も只中というのに魔と逢うたみたいに疲れたけど、これでようやく童話が書ける、と思った矢先に窯の温度上昇が鈍ります。
供給する灯油の量、空気、煙突の開け具合、いろいろ調整しても事態は悪化するばかり。このまま温度が上がらないと初めからやり直しか、釉薬が溶け始める900℃付近で黒煙でも噴出そうものなら、中途半端な還元がかかってひどい目に遭うでしょう。ぼくの前に焼いた方の窯出しに立ち会って、そのむごたらしさを目の当たりにしたばかりなのです。
こんなときに要釉斎先生がいてくれたらなぁ、なんで帰ってしまうねん! とさっきまで厄介払いできて喜んでいたというのに勝手なもんです。ええい、ままよ! と大きく燃料ダイヤルを回したら、あぁこれの調子が悪いんだ、と気がつきました。
陶芸は窯焚きが最も難しいと云われますが、その難所も最終盤をむかえクラブのだれもやらない徐冷でフィニッシュ。よっしゃこれで明後日の窯出しを待つばかりじゃ……あ、童話が書けてないやんけ!