らんかみち

童話から老話まで

作品は触発から

2010年07月31日 | クラシック音楽
 のだめカンタービレで食堂のダメ息子(峰竜太だったかな)が千秋のピアノ伴奏で弾いたのは、ベートーベンのバイオリンソナタ5番「春」でしたね。10曲あるベートーベンのバイオリンソナタの中でも、あのドラマのおかげで9番の「クロイツェルソナタを抜いて赤丸急上昇した名曲です。
 
 ベートーベンのバイオリンソナタはどれも素敵なんですが、ぼくが一番好きなのは8番で、最初にベートーベンを弾いたのもこの曲でした。ただ先生はあまり好きじゃなかったらしく、「次はスプリング・ソナタやろうよ、やろうよ、ねえ~」おっしゃるもんだから春もやりましたけど、有名すぎる曲なので通俗なイメージがつきまとうんですね。

ドイツ人バイオリニストといえばこの方、アンネ・ゾフィー・ムターさんの演奏で第8番です。
Beethoven violin sonata in G major_ I. Allegro assai

 
 スプリング・ソナタが終わると、「じゃあ次はクロイツェル・ソナタやろうよ、ねえねえ、やろうよぅ~」おっしゃるもんだから、「いや、今のぼくにクロイツェルは無理です」と、きっぱり断りました。

 ベートーベンはクロイツェルというバイオリニストに触発されて彼に献呈したからクロイツェルの名が付けられています。トルストイの小説に「クロイツェル・ソナタ」というのがあり、ベートーベンのソナタに触発されて書いた作品らしいです。
 その小説を読んで触発されたヤナーチェクが、今度は弦楽四重奏曲第一番「クロイツェル・ソナタ」をしたらしいです。聴いたことないですが、一部にベートーベンの曲が引用されているものの、あくまでも小説の内容に沿った曲なのだとか。

Manhattan Sonata - Beethoven's Kreutzer


 上の動画のように、ベートーベンのクロイツェル・ソナタに触発されて映像を作った人もいるようです。ぼくも今、他人さまの作品に触発されて物語り書いてます。

物語を書いていて、マムシに

2010年07月30日 | 暮らしの落とし穴
お師匠さまの近所にあるラーメン屋に用事があって、ついでにお師匠さまの家に立ち寄ったら車はありませんでした。忙しい方なので外出中だと思ったのでそのまま立ち去ったけど、ガレージはきれいに片付けられてました。
 近所まで行ったのなら、お中元の一つも用意して挨拶に行かんかい、言われそうですが、それはできんのです。なぜってGoogleのストリートビューで訪れたのですから。
 おっと、こうしちゃおれん。物語を書くために広島の山奥に取材に行かなくては。
 
 先日訪れた広島の北西部よりもっと東寄り、つまり洪水の被害を受けた地区を訪ねようとGoogleマップをスクロールしたら、ブルブル! まむし養殖センターなんてのがあるじゃないですか。マムシって中国からの輸入だとばかり思ってましたが、日本でも養殖してるんですね、これなら安心です。というのもマムシは重さで取引されるので、マムシの中に食用のヘビを突っ込んで上げ底にしている悪徳業者がいたりするとか。
 それくらいならマシな方で、中には重金属が入っていたりするので、中国土産の漢方薬などは絶対に買ってはならない、と薬剤師さんがおっしゃってました。
 
 ああ、マムシを食わせる専門のまむし一品 生き生き食堂なんてのもある! マムシって作用機序は不明でも効くと信じられているから危険を冒して養殖されているんですよね。ウコンも効くと言われてカレーの色つけに使われたりしているし、ぼくも栽培してますが、ぼくの肝臓は呑む前にウコンを飲んだからといって元気になるほどセンシティブでもないようです。でもマムシ酒は身をもって体験しましたから、マムシの毒は効くと断言させていただきます。
 
 堺にある場末の飲み屋に通っていたある日、近所の爺さんがマムシを捕まえてきました。一升瓶に満たした水にマムシを放り込むこと一週間くらい。溺れ死んだころを見計らってホワイトリカーに漬け込んだのですが、何年経ってもだれも見向きもしません。
「もうええかげんで捨てたらどや」いう意見が出て、マスターもその気になったので、居合わせた客たちが最後に味わってみるかとなってぼくも飲んだんですが、聞いていたほどの臭みは無かったです。しかしその夜、痛い痛い痛い! 男性にしか分からない生理現象に出くわしました。

 最近ではバイアグラなんて素敵な薬が開発され、そちら系についてはマムシの影も薄くなりましたが、胃潰瘍に効くとかで人気は衰えないようですね。
 毒をもって毒を制すといいますが、毒は人間を活性させる作用もあるんですね、マムシの粉末など試してみようかな。

タンクを塗り直すように、物語を糊塗する愚

2010年07月29日 | 童話
 旅の途中でガソリンスタンドに立ち寄ったとき、あまりの暑さに長袖シャツの下に着ていたTシャツを脱ぐために裸になりました。もちろん女性店員だったらやりませんが、相手は若い男性だったのです。しかしいきなりのことで彼も面食らったか、満タンになってガソリンをタンクにこぼしてしまいました。
 しくじった彼は懸命に拭き取ってくれたものの、ガソリンの流れた跡が残ってしまいました。これは変だ! と、ぼくは間違った塗料、耐油性の無い塗料でクリアー塗装をしていたことに気がつきました。
 
 旅から帰ってガソリンをタンクにかけてみたら、あらら、やっぱり溶ける! 本来ならこの上に二液ウレタン塗料をかけるだけで良いはずですが、いっそのこと色を変えてやろうと思いつくのに、時間はかかりませんでしたが、塗り直すのには相当な労力を必要とされました。
 まずは黒い部分にサランラップをかけ、ガソリンを流して塗料をはぎ取り、サンドペーパーをかけてシルバーを吹き付けます。この色だって普通のシルバーではなくブルーイッシュシルバーなのですが、ホームセンターでずいぶん悩んで買いました。その甲斐あって、選色としては正解かな。
 
 それは良かったけど、マスキングで失敗をし、重ねて磨きすぎて下の色(シルバー)が見えて汚いったらありゃしない。一見すると非常にきれいなだけに、かえって悔しい。
 ぼくは丹精込めて最後に失敗するタチで、物語とか書いても最後に蛇足を付けて全てを台無しにすることも少なくありません。今書いている30枚作品も終わりまで見えているので、最後の一行が蛇足なのかどうか、きな臭いぞ。というか、今回は物語が、主人公が、勝手に動き始めない。ひょっとして間違った塗装を施しているのなら途中で引き返すべきか、悩ましい。

ウナギを食いつつ、官僚ファシズムを憂う

2010年07月28日 | 暮らしの落とし穴
 土用の丑の日も過ぎたというのに、近所に住む叔母から「江戸時代にウナギを食え、言うた人だれじゃったかいの」と、朝っぱらから電話がありました。
「もしかして、平賀源内のことを……」
「おお、それじゃそれじゃ。ほしたら、ウナギを食うな、言うたのはだれじゃったかい」
「ひょっとして、貝原益軒の食い合わせのことを……」
「おお、それじゃそれじゃ。うっかりして丑の日にウナギを食べ損ねたんよ」

 叔母ってのは、ぼくの上の姉とはまた違うタイプで半分宇宙人みたいな、半宇人とでも呼びたくなる人です。たとえば叔母の亭主は囲碁のアマチュア強豪で、囲碁仲間などから指導に招かれることが良くありますが、家に戻るなり叔母は「碁打ちや将棋指しは親の死に目に会えん言うぞん。碁もええ加減にしとかにゃ、プリプリ」と説教を始めるんです。
 勝負の世界に生きる者の宿命をなじったところで、叔父さんは100歳を目前にしてるんだから、今更親の死に目とかって言われても……。
 
 子どもの頃から知っているぼくなればこそ叔母の言いたいことを理解できるけど、世間様と会話が成立しているのかどうか。 
「ウナギを食べ損ねたけん、買いに連れて行ってくれるかん」
 歌詠みが趣味なので、ウナギを食べた歌でも詠みたいんだろうと思うけど、何年ウナギを食べても想像で歌はできないんでしょうかね。うるさいのでスーパーに連れて行きましたが、実はぼくもウナギを食べ損なっていたのです。
 がしかし、うわっ高ぁ~! ウナギを食べ損なった者の足元を見たような値が付いている。いや、好物でもないので滅多に買わないから値段を知らないだけかも分かりませんね。結局、中国産の尻尾の部分を買ったに過ぎません。

 思うに、貝原益軒先生の頃に銀杏とウナギを食べる人がいたかどうか知りませんが、今の時代ならウナギも銀杏も冷凍できるんだから「食べ合わせセット」と銘打って、ウナギのパックに銀杏を4、5個ほどオマケしてくれたら、ぼくは喜んで高いウナギを買いますよ、銀杏が好物なんで。
 
 吉野屋が牛丼を110円も値下げしたとか。デフレって嬉しいなって思う反面、こんなに安くなって大丈夫なんだろうかって思うのも事実。ついこの前まで中国の給与水準が低かった気がするけど、今じゃ中国資本や韓国資本に日本が買われている状態じゃないですか。
 中国産のウナギを買って喜んでいるうちに、やがて日本全土が中国の一部になってしまうような懸念を禁じ得ません。ああこれも、みんなの党の渡辺代表が言う「官僚ファシズム」の負の一端だろうか。
 

西瓜漬け、水なす漬け、初物で寿命が延びるかな

2010年07月27日 | 酒、食
「平均寿命 4年続け延びる」と、今朝の新聞の一面にありました。恥を告白するなら、ぼくは平均寿命っていうのが何のことか分かりませんし、計算方法も知りません。ただ何となく、日本人は長生きなんだなって嬉しくなったおりしも、「初物を食べたら寿命が延びるよ」と、上の姉から泉州特産の水なす漬けが送られてきました。
 
 ぼくの日記を継続して読んで下さっている方は、「上のお姉さんにしては、ありきたりな物を送ってきたな」と、がっかりされるかも知れませんが、違うんです。
「ほしい物があるなら言うてみんかい」と姉から打診があったので、「あの店のあの水なすがほしい」と、あらかじめ指定しておいたのです。そうでなければ半宙人(半分宇宙人)の姉のことですから、去年の母の誕生日みたいにゴキブリホイホイを送られても困るんです。

 ご近所さんにお裾分けした残りを、自作の濃い口返し、薄口返し、市販の「だし道楽」で食べてみました、初物です。う・ま・い! どれで食べても美味しいですが、だし道楽っていうアゴとコンブの入った、いかがわしい超薄口醤油がぴったりでした。

 写真にあるのは、ご近所さんがお返しにくれた「西瓜の醤油漬け」です。鳥取の名産らしく、これまた歯ごたえの素晴らしい醤油漬けです。知らない人は、まず西瓜だなんて思わないでしょうね。
 今宵は愛媛の日本酒、泉州の水なす、鳥取の西瓜漬けというコラボレーションの初物づくしでした。ぼくの寿命が延びるなら、ちょっとは楽しみかな。

旅の総括もめでたく終わり

2010年07月26日 | 暮らしの落とし穴
 広島市内から呉市に向かう途中、道を間違えてバイパスに入ってしまい、すぐに出たけど道に迷ってしまいました。ガソリンも入れることだからと、スタンドに入って、「呉れに行きたいんです」と店員のおばちゃんに尋ねたら、「はい」とだけ。いやそうじゃなく、道を聞いてる旨を伝えたら、「それならこの道を真っ直ぐ行ってください」と。
 そこはかとなく不安をかき立ててくれるおばちゃんだったけど、指示通りどちらにも曲がらずに真っ直ぐ行ったら呉市に到着できました。おばちゃんの道案内も捨てたもんじゃない。

                  

「大和ミュージアム」こと呉市海事歴史科学館の入館料は一般500円でしたけど結構な入場者数で、国籍不明な来館者は母国語のアナウンスを聞けるヘッドフォンみたいなのをしながら歩いてました(恐らく)。お隣のてつのくじら館と映画との相乗効果もあってか、ありがちな箱物と一線を画す人気施設なのだとのことです。
「てつのくじら館」こと海上自衛隊呉史料館というのを分かりやすく言えば、海上自衛隊のPR施設です。ここに一歩足を踏み入れるや、「兄ちゃん、自衛隊に入れへんけ、給料ええでぇ~」と入隊勧誘を受けるなんてことはありません。退役自衛官のボランティアさんが、熱心に展示物を紹介してくださいます。

 しかしねぇ、入館無料なら文句も言わないけど、せっかくの展示なんだから金を払ってでも潜水艦の内部を探索させてほしい。「狭くて危険である」というのを理由にごく一部の開放にとどまっているのは、案内役の潜水艦乗りの方も残念そうでした。軍事機密ってこともあるかしれませんが、アメリカなんかじゃ魚雷発射室とか、隈無く公開しているって聞くのに……。
 
 呉を後にして一路とびしま海道に向かううと我が島はもうすぐそこにあって、旅は終わりを迎えようとしている、はずが! Googleの地図を印刷したとき、橋のかかっていない島もフェリーでつながっているので、いつの間にか橋を通れると勘違いしてました。行けども行けども橋が見えず、やがて元の場所に戻っていることに気がついて、同じ所をぐるぐる回るリングワンダリング現象に陥っているのかと青くなりました。
 単に小さな島を一周しただけでしたが。そんなこともあってフェリーの終便に辛うじて間に合った次第で、家にたどり着いたときにはすっかり日が落ちていました。
 
 正直言って今回の旅ではGoogleの地図はほとんど使いませんでした。指示が細かすぎてかえって分かり辛かったのもあるし、新たな道ができていたり通行止めになっていたりで、現地の案内に従うか、現地人に聞く方が確かでした。
 バイクツーリング用の優れた地図が売られてるけど、文字が小さい上に値段がでかい。しかも地図を燃料タンクの上に置くのに、タンクバッグってものが必要になります。あの地図をナビに入れてくれたらバイク人に売れると思うけど、需要が少ないからなあ。やっぱぼくって人間にはナビが必要だと、今回の旅でも思い知らされた次第です。

                  

 上の写真は、福山童話教室のお師匠さまも通われたという野忽那島を、上蒲刈島(かみかまかりじま)から見たもの。こんな所から松山の沖合に浮かぶ島が見えるんだ!

旅の思い出に浸って若返るはずが……

2010年07月25日 | 暮らしの落とし穴
 もういいかげんで旅日記をやめんかい、と言う声が聞こえてきそうですが、今回の旅はまず三日目ありきだったので、これをないがしろにはできんのです。

 当初の予定は福山童話教室に赴いてから広島童話教室の親睦会に乱入しようと画策していたはずが、山口のパラサイトの求めもあってツアーは出立の4日前に根底からくつがえってしまいました。本来なら2泊3日の旅なのに、どうしても1日余計にかかってしまうので、余裕ができた分は広島市内の陶芸教室で教わることにしました。
 
 たまたまWEBでヒットした陶芸教室ボンジュール陶芸教室さんに電話しました。
「陶芸クラブに在籍しているんですが、先生に教わったことが無いのです」と窮状を訴えると、変な体験者といぶかりつつ快く受け入れてくださるとのこと。
 そんな事情で約束の時間ぎりぎりに到着してボンジュールさんの扉を開けたんですが、どなたが先生か判然としません。そう、陶芸の指導者は若い女の子もいれば芸術家然とした老爺もまでいて普通なんです。
 
 先生は線の細い風なおばちゃんでした。ぼくを指導するのにプレッシャーを感じていたはずですが、真摯に教えてくださるじゃないですか。ぼくが知りたかったことは実に簡単な、ちょっとしたことだからこそ見逃していた、あるいは軽視していたことでした。まっこと、先達はあらまほしきことなり!」
 
 さて、本命の童話教室ですが、最寄りのホテルにシングルが予約できず、広島童話教室からは歩いても電車でも遠いホテルにチェックイン。猛暑の中、道を間違えてほうほうの体で童話教室にたどり着いたら、お師匠さまがご機嫌斜め。
 童話教室というのも陶芸教室と同じで、一見しただけではどなたが先生か分かりづらいです。生徒さんの中には作家然とした紳士もいるし、お師匠さまのように美味しいものを独り占めしそうな福々しいご婦人も少なからずおられるからです。
 
 懇親会でのお師匠さまの振る舞いをぼくの視点から書けば楽しいと思いますけど、許可を取っていないし取る気もないので、これ以上のことを書くのは困難かと思います。ざっくり言うてもたら、お師匠さまはぼくの倍以上を食べておいででした。女とか男とか、労働者とか否かとか、そういった範疇を超越した食いっぷりに、お師匠さまのパワーの源を見た思いで圧倒されたのです。
 
 翌日は帰るだけなので楽勝のはずだったのに、実にバカバカしいエラーをやらかしてしまいました。それをあざ笑うかのようにNHKのBSで、「とびしま海道バイクの旅」が再放送されてました。観ていたのに、あほらしいエラーをやらかしてギリギリで家に帰り着けたのですが、それはまた明日に。

                  

 写真は旅の2日目、萩市「さんみ」の小原浜から、大げさに言えば朝鮮半島方面に臨んで……というか、2日目以降の写真をデジカメから消去してしまって……救出したけどファイルは壊れていて、たぶん20枚くらい修復できなかったのです!

旅の思い出2日目、モミーちゃんがヤハラちゃんになっていた

2010年07月24日 | 暮らしの落とし穴
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 島根県は浜田市の駅前にやわらぎの室(へや)エイド(AID)さんというマッサージ店があって、そこに空手整体師のモミーちゃんを訪ねました。といっても空手整体は未だ開発段階とのことで、臨床例第一号の危険を冒す度胸がぼくに無かったばっかりに、「ふ、普通のマッサージでお願いします、すんません」
 普通のとは言っても、カルテに所定の事項を記入しながらのオリエンテーションによると、カイロプラクティックとマッサージを組み合わせた、このエイドさん独自のリラクゼーションなのだとか。名刺をいただくと、
「ボディ&マインドケア やわらぎの室 エイド(AID) ハンドワーカー モミーちゃん」とあり、なるほど、按摩ではないのです。

 ボディケアをはじめ、足裏ケア、フェイスケア、カイロプラクティックなどお好みのコースと、30分から60分の時間を設定でき、15分単位で延長も可能です。
 ベルトを外すよう言われたので、あやうくジーンズまで脱いでしまうところでしたが、あくまでも「やわらぎの室」であり、肉月の室と勘違いされてリンクに飛ばれた方には申し訳ないけど、真っ当なボディケアでした。
 
 まずはうつぶせになって何やら体全体をチェックしていると思ったら、
「HALさん、骨盤が傾いてますよ、右足が短い状態になってます」と指摘されました。
 自分でもある程度は気づいてたけど、改めて「短い」と言葉にされたらゾッとなるもんですね。モミ爺にはいくら揉んでもらってもこれを言われたことはありません。モミ爺は全盲だからでしょうか。
 
 骨盤のあたりを調整してから首から肩にかけて揉んでいただきます。揉み具合はモミ爺に一日の長があるように思われますが、揉むのではなく、あくまでもハンドワーク、あるいはエイドワークなのです。
「そのカチカチという音は?」
 耳元で何かのスイッチを操作する音がするのでたずねたら、
「ロスタイムが出ないように、体勢を大きく入れ替えるときにはタイマーを止めております」と。おおこれは好感が持てます。

 でもこの体勢って未だかつて経験がありません。しかも施術者が若い女性とあれば、あらぬ部位が凝らねば良いが……などと見栄を張りつつパチリ。もちろん許可を取っての行為ですが、趣味が悪かったか!
 60分もまあお疲れ様でした、と終わってみれば、結構スッキリです。何をどうやってくれたのか思い出せないけど、モミ爺の施術が、風邪を引いて熱が出たときの解熱剤のような対症療法なら、こちらは免疫力をつける原因療法でしょうか。予約が一杯になるのも納得です。
 
 空手整体じゃなく、やわらぎの室にいるからには「やわらちゃん」か。偉い方と間違えるといけないので、ヤハラちゃんとでもしておきますが、にしても彼女にただ働きさせてしまったのは悔やまれる。彼女が結婚した暁には、大皿でもこしらえて贈らせていただくとするか。

バイクツーリングの2日、萩焼きの窯元から浜田市へ

2010年07月23日 | 釣り船とバイク
 バイクツーリング(しかも125ccの原付)の2日目は、なんといってもお尻に応えます。その次に腰が疲れ、ヘルメットをかぶった頭を支える首を凝りが襲ってきます。
 
 秋吉台の宿から萩市内へは楽勝ムードだったので、わざと道を変更したりしてツーリングムードを満喫し、萩焼の窯元を巡りました。電動ろくろ体験をしたかったんですが、最初に打診した窯元には予約が一杯であると断られました。
 それでも諦めきれず、いろいろと回った最後の窯元でついに電動ろくろ体験をしているシーンに出会いました。インストラクターは若い女の子で、お客さんは40代の主婦。横で見ていて、そんな爪で土いじりができるの? と言いたくなりましたが、ちゃんと30cm径のお皿が出来上がりました。
 
「あなた、とっても上手ですね。あれならお客さんが自分で作ったと錯覚できますよ」と、インストラクターの女の子の手際を、お客さんがいる前でほめました。
「そう感じていただけたら幸いです」
 彼女はにこやかに答えましたが、ぼくの言葉の意味を瞬時に理解できたようです。
「今のお客さん、電動ろくろを買って家でやってみたら、こんなはずじゃなかったって驚くでしょうね」
 お客さんが帰ってからインストラクターと談笑していたら、「今日は予約が一杯なんですが、今からならお昼抜きで対応しますよ」と誘ってくれたけど、ありがたくお断りしました。ぼくのレベルでやることじゃなかったのです。
 萩市は町並みも清潔で雅だったし、出会う人がことごとく人当たりが良くて気持ちよかった。観光客慣れしていると言ってしまえば身も蓋もないかしれないけど。
 
 萩から浜田へは海岸線沿いの、どうってことなさそうな道路をゆっくり走って2時間、のはずが、通行止め! 益田市になるのかな、山の中の道路を迂回していたら水の無いダムを発見。湖底になるはずだった河原を走ることができたのはバイクならではの体験でした。
 にしても、こんな立派なダムを作りながら、完成から一度たりとも満杯になった形跡もなく、大雨が降って土砂崩れで通行止めになったにもかかわらず、せせらぎしか聞こえないダムなんて、どんだけ見通しの甘いでたらめな公共工事が横行してきたかってことですよね。ぼくが環境保護活動に関わっているから言うのではなく、右翼だって怒る話ですよ。
 
 そんなことやってた罰が当たり、「美都」っていう道の駅に着いた途端にガス欠! 予備タンクに切り替えて、「浜田に行くには二通りのルートがありますが、どちらかの途中にガソリンスタンドはありますか」と売店のお兄さんに尋ねたら、一瞬間があって、「どちらを行かれても、ありません」と笑顔が返ってきました。
 下り道だし、距離的にもガスは持つはずだけど、念のために人里に出るのに近い方の道を走り始めて納得しました。こんな道にガソリンスタンドが現れたなら、それは注文の多いガソリンスタンドに違いない、とお兄さんの笑顔の意味が分かりました。
 
 浜田市に無事到着したにはしたけど、熱中症の初期症状か、目が回ってひどく気分が悪く、百貨店の生鮮食品売り場で涼を取ってからホテルに向かいました。悔いたのはその後のことですが、今もまだ疲れが残っているので、その話は明日に回します。

旅の総括1日目

2010年07月22日 | 暮らしの落とし穴
 旅を振り返って今後の旅の糧となすためには、思い出したくないこともあるけど総括しておかねばなるまい。
 半身不随の友人は少しマシになっていたとはいえ、奴はやっぱダメだ。
「右脳の半分が真っ白になっていて、兄は人格まで変わってしまったんです」とぼくに、妹さん。
「いえいえ、人格は変わってないよ。お兄さんとは長いつきあいだけど、昔っから人に甘えて頼り、自分では無理するとか頑張るってことをしない男だよ」と、彼がリハビリに消極的なのはデフォルトであることを強調しておきました。
 まったくぅ、利き手が使えるんだから靴下くらい自分で履けよと言いたくなるけど、励ましても泣かれるだけなんです。

「あんたって、アンコウのオスみたいやな」と、別れ際に彼に言ってやりました。
「アンコウのオスって?」
「なんでも、アンコウの一部の種類に関してらしいけど、長くオスの存在が確認できなかったとか。近年になって、オスは雌の体に寄生するって分かったんだそうな」
「つまり、ぼくは妹のパラサイトって言いたいわけ?」
 彼には酷かもしれないけど、ここはひとつビシッと宣告しておかねば、彼のためにも妹さんのためにもなるまい。
「そうそう、体長にしてメスの十分の一くらいのオスはメスに食いつくと、やがてメスの体と一体になるんだそうな。栄養もメスにもらい、精子を作るだけの役を果たし終えると、ついにはメスの体に吸収されてしまうんだって」
 彼は少し考えてから、
「ふ~ん、肉体も、意識すらもメスに同化するってことか、それ良いね、ぼくもそうありたいよ」と。
 アカンわこいつ、と思ったので、最後にもう一言告げたら、さすがに涙ぐんだけど、その内容はつまびらかにできません。
 
 宿に到着して、チェックインしたら、「四人部屋ですが、お客様ともう一人の相部屋となります」だって。冷蔵庫もテレビもない部屋で野郎と二人っきりなんて、酒でもないとやってられるか!
「ぼくの方は良いんですが、相手の方はお気の毒に。ぼくね、いびきでしょ、歯ぎしりでしょ、あと足が臭くてね」
 言外に別々の部屋にしてほしい旨を、友人で今は亡きテル爺に教わった手法で伝えたものの、
「いやいや、そんなのはお互い様ですから、是非ともお知り合いになられてはいかがでしょう」と、ご主人に譲る気配はありません。
「ぼくは男の姿をしているけど、もしかしたら女に生まれたのかなって思ったりすることもあるんです。それにぼくの前世は織田信長で、小姓の森蘭丸をこよなく愛しておったような記憶もあるんです」
 これは場末の飲み屋のマスターに教わった手法ですが、ご主人が息を呑むのをぼくは見逃しませんでした。よし、もう一押しだ。
「それから、自分では気がつかないんですが、夜中に首が伸びるって言うんですよ」
 これは童話講座のお師匠さまに教わった手法で、さすがのご主人もこれを聞くなり、
「そこまでおっしゃるなら……」と、人を哀れむような目で善処してくださいました。

 その夜は疲れているのもかかわらず、友人のことやら何やらで眠れないので、コンビニで買っておいたバーボンのポケット瓶のお世話になりました。
 気持ちよく眠れた翌朝の食堂で、「おはようございます」と、ぼくに挨拶してきた青年は、石川遼選手の肌を白くスベスベにしたみたいないい男じゃありませんか。ほう、これなら相部屋になっても悪くはなかったか、などと倒錯の自覚を促されたのも悲しい。
 ほかにもマイナーな反省はあるけど、初日はそんなところかな。でもって二日目は更に落ち込む出来事もありましたが、それはまた明日に。