「突発性難聴=突難=とつなん」については、入院前夜に調べはしたものの、身の回りの用意で精一杯だったので、多くの人が辿るだろう道のりを知って愕然としただけでした。
「治る可能性が無いとは言えないが、治るとすれば……」
そう診断されて覚悟はしていたはずなのに、いざ多くの事例を目にする絶望的になるので、考えることをやめてしまったと言うのが、詳しく調べなかった理由の一つかも知れません。
それですから、入院の結果がこれほど不調でも今更ショックはないんですが、イヤホンで聴くテレビの音が右と左でずいぶん差があり、こんなんでは到底バイオリンの音色を評価するなんて出来ないぞ! と不安に駆られるようになりました。
「指一本を失ったら障害者でしょ? だったら片方の聴力を失えば、あなたは立派な聴力障害者じゃないの?」
声を失ったAさんと筆談したんですが、これには驚きました。自分が障害者と呼ばれるようになるなんて、今まで真剣に考えたことが無かったからです。
労災事故で指が何本も無い人と知り合いですが、その指の千切れ方が一様でないので、何回も事故したのかな? それとも「エンコの一本で許したるヤンケ!」と、玄人衆に凄まれた末の指詰めだったのかな? と、問わず語りに聞くと「借金が払えんでな……」と言いましたから、どうやら「社会的指詰め」を実施したということのようです。
「でもね、金なんかいくらもらったって仕方ないでしょ?」
声を失ったAさんの言葉には切実な響きを感じます。お金と指とは換えられないものなんです。どの指一本欠けたってピアノ、バイオリン、フルートのどれを演奏するにも支障が出ます。それは耳だって同じこと。左耳が健常ならそれで良いというものではないことが、今頃になってぼくもようやく分かってきました。
「治る可能性が無いとは言えないが、治るとすれば……」
そう診断されて覚悟はしていたはずなのに、いざ多くの事例を目にする絶望的になるので、考えることをやめてしまったと言うのが、詳しく調べなかった理由の一つかも知れません。
それですから、入院の結果がこれほど不調でも今更ショックはないんですが、イヤホンで聴くテレビの音が右と左でずいぶん差があり、こんなんでは到底バイオリンの音色を評価するなんて出来ないぞ! と不安に駆られるようになりました。
「指一本を失ったら障害者でしょ? だったら片方の聴力を失えば、あなたは立派な聴力障害者じゃないの?」
声を失ったAさんと筆談したんですが、これには驚きました。自分が障害者と呼ばれるようになるなんて、今まで真剣に考えたことが無かったからです。
労災事故で指が何本も無い人と知り合いですが、その指の千切れ方が一様でないので、何回も事故したのかな? それとも「エンコの一本で許したるヤンケ!」と、玄人衆に凄まれた末の指詰めだったのかな? と、問わず語りに聞くと「借金が払えんでな……」と言いましたから、どうやら「社会的指詰め」を実施したということのようです。
「でもね、金なんかいくらもらったって仕方ないでしょ?」
声を失ったAさんの言葉には切実な響きを感じます。お金と指とは換えられないものなんです。どの指一本欠けたってピアノ、バイオリン、フルートのどれを演奏するにも支障が出ます。それは耳だって同じこと。左耳が健常ならそれで良いというものではないことが、今頃になってぼくもようやく分かってきました。