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当地は温州ミカンはいうまでもなく、ブルーベリーの産地としても知られて……ないか。
ブルーベリー栽培の歴史は古くないし、出荷しているのも3グループほどという小規模なもの。それでも気候条件が適しているのか、良い品質のものができるという。
ブルーベリーは今がちょうど旬なので、日が昇る前に収穫されたものがスーパーや朝市の店頭を飾る。赤や黄色のパプリカ、深緑のズッキーニや濃紺のナスに囲まれてなおブルーベリーの群青色は涼やかなオーラを放っている。
おお、これは知り合いの栽培するブルーベリー、しかもジャムの製品もある。売り上げに協力しようかなとジャムの瓶を手にして原材料を……こ、これわぁ! ちょっと吹き出してしまった。
中国産と思われるブルーベリージャムが安価に売られてはいるけど、このジャムはハチミツ入りで付加価値を高めている。実に真面目に作られたジャムであることは疑う余地もないのだけど、惜しむらくはラベルに一文字のミスプリントがある。
このことを、嫌味との誤解を恐れずに忠告してあげるべきか、それとも他の誰かから指摘されるまで見て見ぬ振りを決め込むべきなのだろうか。
答えを出せぬまま家に帰り、ジャムを購入してから「恐れながら」と伝えれば良かったのに、と悔い始めていた。しかしプラムジャムもスイカジャムもまだ消費し切れていないのにブルーベリージャムまで買うのもナンだな、と冷蔵庫を開けて驚いた。桃の匂いがする。そうだ、二日前に「食べ頃です」といただいたのを忘れていた。すんでのところで白桃を黒桃に変えてしまうところだった。
白桃の缶詰ですら冷蔵庫に眠り続けているような家なので……たしか2年前にいただいたんじゃなかったか! 缶詰を取り出してみると、ほんの少しだけ開封されている。たぶんぼくが食べようとした途中でディスターブが入ったんじゃなかったか。
腐敗したような臭いはしない。でも絶対に食えるはずはない。恐る恐る中身を取り出したら、白桃は黒光りする何かに変態していた。
もう一つの缶詰の方は……ああ、賞味期限寸前じゃないか! 桃ひとつでも食べるのを忘れるくらいなので、こりゃもうジャムにするしかなかろう、という結論は自明だった。
桃はブルーベリーと違ってペクチンに恵まれているらしい。糖分も豊富なので煮込むだけで容易にジャムになるようだ。
桃の果実と缶詰を合わせておよそ800g、砂糖100g、クエン酸3gというシンプルなレシピ。ネットで検索しても、生の白桃と缶詰を使ったレシピなんてヒットしなかったから、やむなく自己責任のレシピ。味の責任をだれになすり付けることもできない。
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それは良いんだが、ブルーベリージャムのミスプリをどうするよ。ミスプリじゃなくて生産者の思い込みだったら、高いところから物言いを付けた格好じゃないか。ああ、どうすりゃいいんだ!
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