らんかみち

童話から老話まで

またもグルメ記事にだまされて

2007年06月20日 | 酒、食
 蜜蜂の生態を夏休みの自由研究として……って子どもじゃあるまいし、とは思いつつもネットで調べていたのは童話を書くため。しかし調べれば調べるに従って疑問が増え、こりゃ養蜂家に弟子入りでもせにゃ分からんな、でも今から弟子入りしとったんでは童話公募の締め切りに間に合わんし、と切羽詰っていたところにグルメ記事に面白い店を発見。堺市に養蜂家と行動を共にして自ら採蜜し、自分の店舗で販売するという奇特な女性がいるらしく、その方の店を訪ねることにしました。

 それと、グルメ記事なんてほとんど信用ならん、と何度もだまされてきたにもかかわらず、なぜかフラフラと記事を頼りに出かけてはがっかりするぼくですので、蜂蜜屋さんだけで堺市内探訪を終らせるつもりはありません。相棒のテル爺とその彼女らしい、食いしん坊の奈美さんを誘ってみました。
 
 テル爺と奈美さんは蜜蜂なんぞに用はないだろうから、そこだけは自力で攻略するべく蜂蜜屋さんを訪ねると、あいにく店長は採蜜のために留守でした。そこで店番をするお姉ちゃんに、ハチミツを買うことを条件に蜜蜂の生態を聞き出そうとしたんですが、彼女はぼくの質問にはほとんど満足に答えることができませんでした。その理由は、彼女が蜂蜜屋さんに勤めて1年という経験の浅いこともあるんですが、ハチミツのことは別として、いつの間にか蜜蜂の生態に関してなら、ぼくはそうとうな知識を得ているらしいからです。
 
 好きでもないのに、くそ重たい蜂蜜を背中にしょってぼくが次に目ざしたのは、全国的にも名を馳せているらしい蕎麦屋さんでした。
 テル爺と奈美さんと合流して店ののれんをくぐると、店員さんは蕎麦の量だけを聞きに来ました。その店は熱々のセイロ蒸し蕎麦を、熱々のつゆに玉子を落として食べるメニューしかないのです。
 蕎麦はあっという間に出てきて、すでに茹で上がっていたものをセイロに入れて蒸したかのようなすばやさです。ぼくが思うにこの蕎麦のノビ加減からすると、麺を先ず3分程度は茹で、その上にセイロで30秒は蒸さないとこのような状態にはならないと思えます。
 
 つゆは昆布とカツオのだしで醤油を割ったものと思われますが、つゆそのものを味わってみると、単なる醤油に過ぎないと感じます。しかし玉子を割り入れるとその味は一変し、とても美味しく感じたのですが、
「これは玉子かけ蕎麦なんやな! いやそれとも玉子かけうどんか?」
という意見の一致を見ました。早い話がうどんとも蕎麦ともつかない奇妙な麺を、玉子醤油に浸けて食っている図なのです。
 ぼくはお腹が空いていたので、不平をかこちつつ1斤を平らげたのですが、グルメな奈美さんは危なくお膳をひっくり返すんじゃないかと思うほどムカついてる様子で、ほとんど残してしまいました。
 
 その後我々は腹立ち紛れに堺東商店街を散策し、立ち飲みに入って口直しの酒を飲んで驚きました。最後にテル爺が注文したのはざる蕎麦だったのですが、これがマスターの手打ち、蕎麦粉はぼくが愛用しているのと同じものということで、6:4くらいの蕎麦に思えましたが、きっちりと打ててあり実に美味しいものでした。
 
 その後も餃子など食べたんですが、案の定裏切られました。グルメ記事なんて当てにならないのは承知の上ですので腹も立ちませんが、グルメ記事を書くためにグルメ記事を読んで食べに行く記者にお願いしたい。
 そりゃ他人をけなす記事は書きにくいだろうけど、不味いとは書けないなら、事実だけを書いておれば良かろう。
「立ち飲み屋のマスターが打った蕎麦が美味しい」
 なんてコアな情報が無理なら、せめて正直であってほしい。そうでないとこの先グルメ記事なんてだれも信用しなくなるでしょう。