らんかみち

童話から老話まで

アダルトビデオの行く末は

2007年06月07日 | 暮らしの落とし穴
 ビデオのタイトルラベルをはがすのにぼくが取り出したのはガスバーナーでした。この炎を直にラベルに当てますと瞬く間に燃え上がるんですが、二度と使う当ての無いテープですから、凹もうが燃えようがどうって事はありません。とても効率良く全てのラベルを楽にはがし終えることが出来ました。
 
 さてそうなると、あとはゴミ出しの申し込みを済ませるのみですが、これは無料で引き取ってくれるのです。
「粗大小物を申し込みたいんですが」
「中身はどんなものでしょうか?」
「ビデオテープとかガラクタです」
「ビデオテープだけ別にして出していただく決まりですので、テープと明示して置いて下さい」
 フリーダイヤルで申し込めるのでありがたいですが、いつから粗大ゴミのテープまで分別しないといけなくなったんでしょうか。なんかスッキリしませんが、無料なので贅沢は言いません。
 
 来週の収集日のためにせっせと袋詰めにして準備を整えておりますと、おりしも粗大ごみ収集車が到着するではありませんか。「ついでにこれも持って行ってくれ」と叫びたくなりましたが、慌てることもありません。ほとんど毎週のように来てくれるのです。
 
 で、その様子を見てますと、ぼくと同じようにビデオテープを捨てた方もおられたようで、係の方はてきぱきと収集車のプレス機に放り込む……かと思いきや、ビデオテープだけは運転席に持ち込みました。
「アカンがな!」
 てっきりプレス機の中に放り込むものとばかり思っていたのに、運転席に!? これはいったいどうしたことでしょうか。捨てればテープはゴミ、しかし繰り返して鑑賞すれば資源でしょうか?
 
 どちらだろうが関係ありません。えらいもの見てしまいました。このままでは申し込みしたぼくの名前とビデオの内容がイコライズされるのは確定的です。それだけはなんとしても避けなければ、この先大きな十字架を背負って丘を登るように人生を歩むことになるでしょう。
 
 恐れおののきながらぼくは再びガスバーナーに点火し、テープが見えている部分に炎を当てると、燃える燃える! 黒い煙を出しながら、ダイオキシンを撒き散らしながら見る見る溶けていきますが、そこまでしなくてもテープが切れてしまえば大丈夫でしょう。分解してテープをつなぎ合わせて……なんて労力を払うほどの価値がアダルトビデオにあるとだれが考えるでしょうか。
 こうして一件落着しそうなわけですが、ビデオテープが普及した当初は「なんて便利なものが出来たんだろう」と感激したのに、今となっては始末に困るのですから不思議なもんです。