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山本純一写真集「越冬」

2013年01月31日 23時15分29秒 | つれづれ読書録
 北見の本屋さんで見つけて、衝動買いしてしまった。

 北海道にはネイチャーフォトを撮る人がたくさんいるけれど、その中でもかなりの水準の写真だと思う。

 何が違うといって、北海道のネイチャーフォトの大半は、見て最初の印象は「美しい」。

 山本さんの写真が美しくないといっているのではないが、彼の写真に添える言葉でいちばんふさわしいのは
「厳しい」
ではないだろうか。

 この写真集は、題のとおり、冬を越す動物や鳥が主なモティーフである。
 ハクチョウ、キタキツネ、エゾシカ、オオワシ…。

 ときおり、星空のある星景写真や、ダイヤモンドダストの写真が挿入される。

 表紙のハクチョウも、一般的な写真のように、「優雅」ではない。
 餌をめぐって、水しぶきを上げて2羽が激しく争っている。

 食物の少なくなる時期、生命をつないでいくことだけで、大変なのだ。

 極寒の、苛烈な環境の中で、必死に生きている動物たちを見ると、その生存競争の厳しさに震えてしまう。

 わたしが、この写真集に感動するのは、動物たちが生きている氷点下15度、20度という寒さを、日々身をもって体感しているからかもしれない。
 本州の人たちは、この話題になると
「(プラス)0度とかでも寒いのに」
「手ぬぐい凍らせたら硬くなるかな」
などと言って笑っているけれど、ほんとに、しゃれで済まされない寒さなのだ。
 それでも、人間は、防寒着を着込んだり使い捨てカイロを身につけたりできるし、いざとなれば建物の中に逃げ込むことも、暖房で寒さをしのぐこともできる。
 しかし、動物にはそういった逃げ場がない。
 もし、餌が見つからなければ、それは、死に直結するのだ。

 雪の下からササを見つけ出そうとするシカ。
 タンチョウから餌を奪おうとするワシ。
 生き物の気配に耳を澄ますキタキツネ。

 みんな、みんな、必死だ。
 観光客に見せる弛緩した表情は、そこにはまったくない。

 その必死さに、わたしたちは、感動するのだ。


 それにしても。
 これを撮る山本さんも大変だろうなと思う。
 昔のように、寒さでフィルムがぱりんと割れることはなくなっただろうが、昔のメカニカルカメラに比べると作動する気温の範囲は狭くなっていると思われる(そりゃ、カメラメーカーは氷点下20度で使うことを想定して製造しないからね)。
 機材を暖めようとして車内でヒーターをいれ、もう一度外に出すと、レンズが曇る。
 曇るだけならいいが、たぶん、その場で凍る。
 撮るほうも、命がけだ。

 題字は、中野層翠さん。
 北海道書道展の会員である。

 
2012年10月21日
中西出版
3000円(税込み)


□山本純一ギャラリー http://yamamotojunichi.com/index.html

写真展「越冬」の日程(名古屋、東京、福岡は終了)
2月7日(木)~13日(水)10am~6pm(最終日~3pm)、日曜休み
キヤノンギャラリー(北区梅田3-3-10 梅田ダイビル地下)

3月7日(木)~18日(月)9am~5:30pm、土・日曜休み
キヤノンギャラリー(中央区北3西4 日本生命札幌ビル)

関連するファイル
【告知】山本純一写真展 越冬-命の鼓動-(2013年3月7~18日札幌ほか)
Breath of Nature-自然の息吹- 山本純一写真展(2008年)
「越冬」山本純一写真展(07年)

amazonのページ http://www.amazon.co.jp/%E8%B6%8A%E5%86%AC-%E5%B1%B1%E6%9C%AC-%E7%B4%94%E4%B8%80/dp/4891152729/ref=sr_1_2?s=books&ie=UTF8&qid=1359536212&sr=1-2


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