
谷口明志(あかし)さんは札幌市内の高校で教壇に立ちながら、「絵画の場合」「プラスワン」をはじめさまざまな展覧会に、精力的に作品を発表しています。
ことしに入ってからは、小樽在住のベトナム出身アーティストのダム・ダン・ライさんらとともに、ベトナムで「プラスワン」展を開催しました。
彼の作品は、細長いかたちと、支持体の形状が一致しています。
また、壁からはみ出して床などにも展開しているのが特徴です。
今回は、会場のトオンカフェの空間を最大限に生かし、壁から床から、細長い“絵”がうねうねとはい回っています。

一見、ひとふでがきのようにも見えますが、ちょうど会場中央附近の床の上で、2筋に(すなわち、みつまたに)分岐しています。ひとつは、北側の壁を上がっていくつかに分かれて天井近くに至り、もうひとつは、ガラス窓の近くで床から斜めに離れて壁にいたり、さらに裏側に回って飲食座席の壁に走っています。
さらにもう一筋は、会場の床でとぎれているように見えますが、その細い支持体の方向の先に目をやると、書棚のある奥の壁に、その続きのように細長い作品が架かっているのです。
しかも、それぞれの支持体は、ときには数十センチおきにとぎれたり、部分的に二筋に分離したり、原始河川のように自由に会場をうねっています。



近代絵画は、それまでの透視図法的な奥行き感を排しつつ、なお空間の存在感を表すことに腐心してきました。
セザンヌの静物画やサント・ヴィクトワールから、ピカソ「アヴィニョンの娘たち」をへて、ステラのサーキットシリーズにいたるまでのプロセスは、その問題意識に貫かれている…などと書くと
「なんだ、知ったかぶりしやがって」
という声が聞こえてきそうなのですが…。
でも、米国の抽象表現主義の画家たちは、どんどん「平面的」になっていったにもかかわらず、その画面じたいは、新たな奥行き感を編み出していったといえるのではないでしょうか。
ミニマルアートにいたって、その試みは行き止まりに達してしまった感がなくもないですが、絵画空間の新たな可能性をさぐるという細い道(narrow path)を、谷口さんは果敢に進んでいるのだと筆者には感じるのです。

ただし、筆者のような者があれこれ言うのもはばかられるのですが、ここまで支持体が空間全体に拡散してしまうと、絵画の持つ特長(あえて、特徴ではなく特長と書きますが)である一覧性が失われてしまうのではないでしょうか。
絵画空間の拡大のためにはほかの特性を犠牲にするということなのでしょうか。
ここらへんは谷口さんの今後の展開にまちたいと思います。
2009年3月3日(火)-15日(日)10:30-21:00(日曜-20:00)、会期中無休
トオンカフェ(中央区南9西3 マジソンハイツ)
・地下鉄南北線「中島公園」から徒歩2分
・地下鉄東豊線「豊水すすきの」6番出口から徒歩6分
□グループPLUS ONE http://plus-one.ciao.jp/
■第6回北海道高等学校文化連盟石狩支部美術部顧問展(2009年1月)
■40周年小樽美術協会展(2008年6月)
■Dala Spaceオープン記念作品展(2007年)
■PLUS1 groove (2007年)
■第39回小樽美術協会展(2007年)
■絵画の場合(2007年)
■グループ プラスワン展(2006年)
■第3回高文連石狩支部美術部顧問展(2006年)
■谷口明志展(2006年)
■絵画の場合アーティストトーク(2005年)←一読を。おもしろいと思います
■5th グループ・プラスワン(2004年)
■高文連石狩支部美術部顧問展(2004年2月6日の項。画像なし)
■札幌の美術2002(画像なし)