北海道美術ネット別館

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■40周年小樽美術協会展 (6月8日まで)

2008年06月05日 23時33分11秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 札幌の隣まち、小樽の美術家たちが1点ずつ出品する恒例の美術協会展が開かれています。
 道内の各地方都市にはそれぞれ公募展がありますが、小樽の場合は、アマチュアがおもに出品する「市展」と、審査する側が大作を出す「協会展」が別々に開催されます。

 ことしも、水野智吉さんと水谷のぼるさんの彫刻をのぞけば、すべて絵画です。
 水野さんは、たしか昨年もおんなじ場所に裸婦を置いていたなあ。
 今回の乾漆作品「presence」が昨年と異なるのは、左足をすこし前に出して、動感を表現しているところです。題の通り、存在感のある女性像です。

 そのすぐ右にあるのは、一原有徳さん「KG6」。
 この作品だけは新作ではなく、1990年の作品で、市立小樽美術館の所蔵品からの出品です。さすがに明治生まれの人に新作を出せというのも…。
 一原さん、いつまでもお元気で!




 入り口からすぐ左側は水彩のコーナーのようになっています。
 右側の荒井武さん「窓」(F50)は、石の壁が漆喰を塗ったように盛り上がっていて、非常にリアルです。
 荒井さんの作品は、一昨年の小樽水彩画会展でも拝見しましたが、重厚さとリアルさでは今回の作品のほうがきわめてすぐれていると思います。さすが2年連続の市展賞受賞者です。感服いたしました。

 左は大塚明子さん「Summer Street」(F50)。
 色内の古い建物を利用した雑貨屋さん「アリババコレクション」を楽しくにぎやかに描いています。


           

 水彩コーナーのつづき。
 左は白江正夫さん「たそがれ(旧手宮線跡)」(40号)。
 白江さんは80歳をすぎたベテランですが、それをみじんも感じさせない力強い絵です。会場でご本人にもお会いしましたが、やはりとてもお若い方でした。
 以前も書きましたが、白江さんは、小樽をきらびやかな近代都市としても、ノスタルジックさだけのマチとしてもとらえていないように感じます。じぶんが生活しているリアルさがそこには感じられるのです。

 右は菅原睦子さん「祝津の春」(F30)。
 オーソドックスな写実の油彩ですが、S字にカーブする道路や、豪壮な番屋、丘の上の灯台、バス停など、ともすれば雑多になりがちな要素を、うまくまとめています。

           

 右は上嶋俊夫さん「早朝」(F25)。
 野原を流れる川、そのほとりに立つ4本の樹木、遠くの山並み…。ごくシンプルですが、見る人の心にしみいる風景画だと思います。いつまでも見ていたい、静寂が心地よい1点です。

 左は石川昌平さん「人たちの物語」(151×95センチ)。
 画面をすぱっと縦に、緑と赤のふたつの部分に分割したのが、思い切ったなあと感じます。

           

 昨年、リアルなタッチで木造の長屋を描いた羽山雅愉さんは、ことしは通例の画風に戻っています。「黄昏・小樽」(F120)は、高いところから港の方向を眺めた風景画ですが、全体が黄色に輝き、現実の小樽の街並みというよりは、幻想の中のマチのようです。
 手前はベテラン工藤英雄さんの「メカニズム」(S100)。
 滑車や歯車を図式化して組み合わせた工藤さんらしい作品です。
 会場にいたNさんが「工藤さんは病気を克服して、ますます絵が良くなった」という意味のことを話していました。


           

 山下脩馬さん「雪のN町」(F100)。
 小樽・手宮地区の錦町がモティーフ。
 冬の坂道は、いかにも小樽らしい風情を漂わせています。
 ああ、手宮を散歩したくなってきたなあ。


           

 「小樽派」と呼ばれた写実画家も健在です。
 佐藤順一さん「漁船」(S100)、冨澤謙さん「運河冬日」(F100)、古屋五男さん「小樽港の秋」(F100)といった道展会員の安定した作品がならびます。
 やはり道展会員で、長年にわたって小樽の街並みを画いている小川清さんは「旭橋」(F100)を出品しています。


                  

 ナカムラアリさんの版画「A relationship(ある関係)」(105×75)。
 卵形の形態が、あたたかみを感じさせます。


           

 左側の縦に細長い作品は谷口明志さん「イメージ」。
 高さ約3メートルです。もののかたちと支持体のかたちとの関係を問う-という意味合いもあると思います。

 中央は野田恭吾さん「崖模様」(F100)。
 暗く重厚な漁村風景などを描いていた野田さんはほとんど抽象に移行したようです。色合いはさほど変わっていませんが、岩のようなかたちがぶつかり合う画面は、北国の厳しい風土を聯想させます。

 右は堀忠夫さん「キャラバンサライにて」(F100)。
 大きな廻廊を安定した筆致で描いています。


           

 一原さんの作品の並びには、抽象的な傾向の、サイズの小さめな作品が集中しています。
 手前は大谷美由起さん「6.'08」(S10)です。
 1点おいて、北海道抽象派作家協会などで活躍中のベテラン三浦恭三さん「浮游」(F30)が見えます。

 このほか、画像はありませんが、松田孝康さん「蓮花無常」(変120)も異色作でした。
 3連画のようなスタイルですが、モティーフは純日本風。中央には、仏画のような女性が描かれ、左右の狭い画面には蓮が点在していますが、片方は緑色なのに、もう片方は枯れており、無常観を表現しているように感じました。
 また、石の壁と月光を沈んだ色調で描写した日向良子さん「寂」(F100)、バイオリンや金管楽器を手にした4人をにぎやかに描いた新覚吉郎さん「演奏」(F30)、黒い球体が虚空に浮かび深みのある世界を表現する高橋好子さん「空」(F20)、童画のような線がユニークな末永正子さん「Tsu・na・gu」(F30)なども目を引きました。

 他の出品作は次のとおり。特記しないものは油彩。
青木美樹 Autumn(40号水彩)
浅井勝代 窓辺(F100)
新井美代子 卓上の静物(F130)
岩崎 正 積丹海岸(F20)
大坂照子 真冬日(P40)
小川 智 出抜小路のプチショップ(F100)
工藤 茂 壱乃風(いちのかぜ)(P20)
小林達夫 春の音(F100)
崎野雄一朗 オアシスの人びと(F50)
鈴木明美 あたたかな日に(F30)
高橋 晟 蒼い樹(F30)
高橋雅子 笹の中で(F100)
高野理栄子 rule(ルール)74×99 版画
徳吉和男 秋深の岳(F30)
内藤信雄 話しかける漁師(F50)
中谷美枝 かがやく季節(F50)
中村訓敬 浅雪の公園から(F20)
中村信博 堺町脇道(F30)
濱多晃江 追想風景(F12)
深山秀子 なごり雪(20号水彩)
福原幸喜 波音が消えた(F20)
藤田勇一 余市風景(F30)
堀 槙子 おでかけの時(P30水彩)
水谷のぼる ヤンゴンの阿弥陀(高さ700ミリ)
三宅 悟 公園(F100)
宮井保郎 DAY DREAM(F30版画)
八尾道子 卓上風景(F20)
山田守之 泊・カブト岩海岸(F15) 


●40周年小樽美術協会展=6月3日(火)-8日(日)10:00-18:00(最終日-17:00)、小樽市民ギャラリー(小樽市色内1、市立小樽美術館3階)
●小樽美術協会40周年記念小品展=6月3日(火)-8日(日)10:00-18:00(最終日-16:00)、サロン・ド・宮井(小樽市花園1、宮井ガクブチ店内)




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