
永桶麻理佳さんと永桶宏樹さんによるユニット「故郷 2nd」が、札幌で活動を始めてから10年になるのを機に、回顧展を開いています。
「こきょうセカンド」と読み、これまでの表記「故郷 II」をことし改めました。
1階の「SCARTS(スカーツ)モール」に、「ついたてアート」などを並べ、3階の「SCARTS スタジオ」に、薄暗い空間で光る作品を並べています。
1階には、2018年の新道展で発表した、直方体の四方に女性像を描き、それが頭部、上半身、下半身と三分割してあって、おとずれた人が自由に回せる作品もあり、ふだんアートに接点が少ない人でも楽しめる展示になっていました。

「漂う労働者たち」。
団体公募展に並ぶ絵画には、アトリエ内や大自然の風景や、ポーズを取った人物などがモチーフになっているものが多く、2020年代の現実を生きる人々を描いているというだけでも、意欲的だと思うのです。
で、これは、水の上に断片が浮かび、ほんとに「漂う」絵になっています。
1階にはほかに、3枚組みのリバーシブルタイプで、片側はお江戸娘がグー、チョキ、パーのしぐさをしている「お江戸3人娘/眠る人々」、顔ハメになっている「あしたの家族」、古い新聞紙が中央にまるめて突き刺してある「0歳の自画像/青空」など。
フライヤーの表紙になっている、額縁の中から海の水が流れ出しているように見えるだまし絵も、イーゼルに載っていました。
3階は照明を落として、光の効果が感じられるような作品を展示しました。
画像は「背ビレ症候群」。
スマートフォンをQRコードにかざし、ロックミュージックを聴きながら鑑賞します。


ピカピカと光る背が、まさにゴジラを思わせ、見る人に対し「3・11の放射性物質の被害を忘れるな」と無言で語りかけているようにも感じます。
そして、逃げまどう家族の様子も、ゴジラや大地震・津波、戦争といった災厄を、わたしたちに想起させます。
足元に散らばっているのは、原子炉の図面です。
ほかに、女子高生の変身願望をテーマにした「ただ、強くなりたい」、赤ん坊のまま老化した人形というテーマで戦後史の映像を取り入れたインスタレーション「PLASTIC BABY」もありました。
取り上げるテーマがジャーナリスティックで、漂うテイストがちょっと昭和っぽいというか、懐かしい感じがするのは、故郷 2nd の特徴だと思います。
それを生かして、多くの人に見てもらえる存在になってほしいです。
2022年8月12日(金)~17日(水)午前10時~午後7時(最終日~5時)
札幌文化芸術交流センターSCARTSスタジオ・モール(中央区北1西1)
□ kokyo2.jimdofree.com
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