北海道美術ネット別館

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追記有り*旭川は彫刻のまちを名乗れるか。多田美波作品の行方 2020年2月6~8日は13カ所(24)

2020年07月01日 16時58分00秒 | 街角と道端のアート
(承前)

 「取り壊されたビルとパブリックアートの行方」の記事の問題提起の続きです。
 なお、この「取り壊された」の記事には追記がありますので、お読みになっていない方はぜひあわせてごらんください。

 さて「ホーレス・ケプロン像/黒田清隆像」の記事から3カ月以上たっているので、まさか「2020年2月6~8日は13カ所」のシリーズがまだ続いているとはだれも思っていないでしょうが、じつは、旭川の街でこのとき見て、いちばんショックだったことをまだ書いていなかったのです。

 それは、旭川の買物公園通にそびえたっていた多田美波さんの野外彫刻「座標」が、跡形も無くなっていることでした。


 その危惧は、以前からうっすら持っていました。

 というのは、「座標」という作品は、旭川駅前にあった西武デパートの景観とよくマッチしており、建築と一体のものだと思っている人も少なくなかったからです。

 よく知られていることですが、旭川は北海道第2の都市で、長らく、旭川駅前からまっすぐのびる「買物公園通」が商業の中心地でした。
 日本で初めての常設の歩行者天国で、旭川西武、丸井今井の両百貨店をはじめ、大型店や専門店が軒を連ねてにぎわっていたのです。

 ところが、郊外にイオンができて、駅前・買物公園通の地盤沈下がじわじわと進み、2009年に丸井今井が閉店。デパートが1店舗になり、売り上げが伸びるはずの西武旭川店の調子も思わしくなく、16年に閉店となり、旭川からは百貨店が姿を消しました。
 その後、西武はまずA館、そしてB館の順に解体工事が行われました。

 こちらの「まちこみゅブログ」を見ると、2011年にはまちがいなく「座標」は存在しています。

 ところが、全国各地の野外彫刻を精力的に取材しているブログ「かけらを集める(仮)。 」では、2018年10月11日の記事で、次のように書いています。

買物公園の入口近くの百貨店前に、かつて大きな多田美波作品があったようだが、百貨店とともに、すでになくなって久しい。駅前の栄枯盛衰は激しい。


 画像は、2010年に撮った「座標」です。

 2017年12月26日の北海道新聞夕刊1面によると、A館の解体は2018年初めまで行われていたとのことですから、この文中にある「なくなって久しい」というのが適切な表現かどうかは意見が分かれそうです。しかも、このブログが書かれた後の18年12月からB館の解体工事が始まっているとのことなので、おそらく「座標」は、A館とともに取り壊しにあってしまったのでしょう。

(話はそれますが、この「かけらを集める(仮)。 」というのは、ほんとうにすごいブログで、土日となると全国を回って野外彫刻を見て、記録しています。道内の野外彫刻に関する取材では、この「北海道美術ネット別館」はまったくかないません)

 旭川市は、市立の彫刻美術館を抱え、明治期の有名な彫刻家の名を冠した「中原悌二郎賞」を主催し、隔年で「旭川彫刻フェスタ」を開いており、「彫刻のまち」を自負しています。
 部外者の勝手な感想かもしれませんが、「彫刻のまち」が、市内最大級の作品を失ったままでいいのだろうかと思います(もしかしたら、どこかに移設、あるいは保管されているのかもしれませんが)。

 いささかきびしい口調になってしまうのは、彫刻の行方不明がこの作品にかぎった話ではないからです。

 旭川駅前のイオンタウンの前に該当する場所に以前あった、折原久左エ門の「抱」も、現在は、筆者には所在がわかりません(次の画像)。

※7月2日追記。「抱」は、宮前公園に移設されているようです。
 廃棄されていなくて、ほんとうに良かったです。
https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/sculpture/sculpture_update/p000414.html)


 さらに、旧旭川駅の構内にあった、日本の抽象彫刻を代表する作家であった建畠覚造(1919~2006)の「双」も、駅舎の解体・新築後は一度も目にしていません。


 べつに「まちはずれにある作品だからなくなってもかまわない」というつもりもないんですが、まちの顔ともよべる旭川駅内外にある彫刻がつぎつぎと姿を消してしまっているというのは、あまり良いことだとは思えないのですが…。

 これらの作品のその後についてご存じのかたは、ご教示を願えれば幸いです。


関連記事へのリンク
多田美波さん死去 (2014)
多田美波「座標」 (2010)

折原久左エ門「抱」

(この項終わり) 


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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
消えた彫刻 (怜な)
2020-07-01 18:00:25
こんにちは。

旧旭川駅構内にあった「双」、駅前の「抱」、向かい側の西武百貨店に沿っていた大きな「座標」。作品を楽しみに観ていましたが寂しいですね。
折原久左エ門作品の「抱」は、函館美術館辺りの屋外にもあったと思います。
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Unknown (h-art_2005)
2020-07-01 20:45:15
怜なさん、いつもありがとうございます。「双」はストーブの室内煙突を二つ並べたみたいな作品ですが、どこかに保管していることを祈りたいです。折原さんの作品は函館にはあちこちにあるようですね。
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Unknown (SH)
2020-07-02 14:01:40
ヤナイさん、こんにちは。
私、「座標」は2014年に見ていますね。
あまりに巨大で彫刻と気が付きにくい作品でした。

管理者が変わっていくということは当然あるのでしょうけれども、一応「彫刻だ」という認識と、どうすべきかを識者に相談するだけの配慮はあって欲しいと思います。
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SHさん、こんにちは (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2020-07-03 08:01:35
例の東大生協の宇佐美圭司作品が廃棄されたときも、最大の驚きは
「えっ、どうして身近に詳しい人がいるだろうに、聞かないの?」
ということでした。
札幌や旭川の場合は相談すべきところが明白にあるのだから、ひとこと声をかけてほしいですね。

まあ、多田さんの作品は、保管が容易でないという事情もあるんでしょうが…。
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折原久エ門作品で (怜な)
2020-07-04 11:58:28
こんにちは。
作品「抱」の移設場所「宮前公園」は広いので、彫刻美術館ステーションギャラリーで確認しました。駐車場管理棟の近くにあるとのこと、管理している公園緑地協会で作品の存在は分からないでした。旭川に行った際、観に行きます。

ギャラリーで「双」も検討したが、設置場所などで難しかったようですね。
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怜なさん、こんにちは。 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット別館)
2020-07-05 16:31:11
旭川の野外彫刻については、以下のページに「たんさくマップ」があるようです。

https://www.city.asahikawa.hokkaido.jp/sculpture/400/p001111.html

折原久左ヱ門「抱」については、こちらのブログに紹介がありました。

https://pigmonm.hatenablog.com/entry/2019/06/28/005422

旭川の野外彫刻は、一度ゆっくり見て回りたいですね~。

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旭川市民です (Unknown)
2021-10-05 16:10:03
ふとこの彫刻のことを思い出し検索したところこのブログを見つけましたので書き込みさせていただきます

「座標」については2017年1月ごろに無くなったのを確認しています

無くなった瞬間ではないですが写真をtwitterに投稿していましたのでもし宜しければご確認ください
https://twitter.com/caitloup/status/818371281804369920

解体の工程表が殴り書きされているなど完全に解体対象の建物の一部として扱われているように見え、保管・移設などはなされていないのではないかと思います
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2021-10-05 17:08:54
情報提供ありがとうございました。
ツイッターは先ほど拝見しました。

旭川の方から反応があったのは初めてです。

建物といっしょに解体されてしまったっぽいですね。なんだか、モヤモヤするというか、残念でなりません。
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