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■オプ・アート展(2025年1月11日~3月16日、旭川)■抜海へ、冬の旅(3)

2025年01月30日 09時33分34秒 | 展覧会の紹介-現代美術
(承前。1月31日、2枚目の画像を追加しました)

 道立旭川美術館のサイトには、

「オプ・アート」とは、緻密に計算された形態や色彩によって、鑑賞者に動きや立体感、色の変化などの錯視効果を引き起こさせる抽象絵画です。

とあります。
 ただ、アートの歴史でいうと、1965年にニューヨーク近代美術館で開かれた「レスポンシヴ・アイ(応答する眼)」展、オプ・アートという語とともにでまとまって紹介されましたが、その後は、60年代に目まぐるしく登場した流行の一部ということになっています。

 道立近代美術館が体系的に所蔵しているオプ・アートの作品は、なぜか、まとまって紹介される機会がなく、2003年に初めて道立函館美術館がオプ・アート展を開催しました。
 その後、12年に道立帯広美術館がオプ・アート展を、21~22年に道立近代美術館が「オプ・アートとアール・ヌーヴォー/アール・デコのガラス」展をそれぞれ開いています。
 
 予算が厳しいなか、作品を有効活用するのは良いことだと思います。
 ジョーゼフ・アルバース(1888~1976)のシルクスクリーン作品をはじめ、ブリジット・ライリー「アレスト 1」、ヴィクトル・ヴァザルリ「BATTOR」、ヤーコブ・アガム、ヘスス・ラフェエル・ソト、リチャード・アヌスキウィッツの計41点。これまでと同様の顔ぶれと作品になってしまうのも、やむを得ないことでしょう。
 今回はそのほかに、旭川出身の山口正城の作品4点も展示してあるのと、最後に旭川市科学館から錯視関連の作品を借用している(次の画像です)のが新しい要素といえるでしょう。

 
 最初の函館のときには、興味深いテキストを載せた図録が発行されましたが、今回は図録はないようです。 
 したがって、初めて見る旭川地方の子どもさんにはおもしろく感じられるでしょうが、自分にはあまり得るところはない展覧会でした。

 もう3回目(近代美術館を含めると4回目)なのだから、そろそろ新しい切り口や問題意識による見方の提示などがあってもいいのではないでしょうか。

 たとえば、1960年代半ばにどうして米国で注目されたのか。
 オプ・アートだけでなく、同時代の他の潮流に連なる作品も展示して、考察するのも一案でしょう。あるいはテレビの急速な普及が、重要な背景なのかもしれないと、個人的には推察します。
 ネオダダやフルクサスなど、当時を広く見る視点が解説パネルなどに全くないんですよね。

 あるいは、道内のオプ・アートといえそうな(しかしまだ誰も言っていない)作品に目を向けるという手もあります。
 モアレなら、関谷修平さんに注目です。2005年のバングラデシュのBHARAT BHAVEN国際版画ビエンナーレ、07年にはNBC国際シルクスクリーン版画ビエンナーレで、それぞれグランプリを受賞しています。
 錯視なら、千代明さんがいます。彼の平面作品は、金属板に傷をつけて、見る場所によって奥行きが現れるという、とても不思議かつおもしろい作品です。
 もしこういう視座もあれば、いまの北海道とのかかわりのなかで、少しはオプ・アートを身近に感じられるんじゃないでしょうか。

 道立近代美術館がなぜオプ・アートの作品を所蔵しているのかもよくわからず、知りたい気持ちもあります。所蔵した当時は、ニューヨーク近代美術館の「応答する眼」展からまだ十数年しかたっていないフレッシュな傾向だったのでしょう。昔の道立館は新しい傾向にも意欲的だったことがうかがえます。
 いまは、隆盛からもう60年ほどが経過しており、オプ・アートをあたかも現代の美術のように提示するのはさすがに無理があると思われます(今回の旭川美術館の展示がことさら「現代」を強調しているわけではありませんが)。
 道立館における最初の展示からもすでに20年以上がたっていますが、今回の展覧会はその時点からどこがアップデートされているのか、筆者にはよく見極められませんでした。1月29日現在でサイトの解説も簡単至極なものしかありません。2002年に函館美術館が出した図録は面白いものだったので、せめて会場のいすに置いて読めるようにしておけばいいのに、と思いました。 
 1965年でも2002年でもない、現代にふさわしい切り口の展示が見たかったです。

 
2025年1月11日(土)~3月16日(日)午前9時半~午後5時、月曜休み(祝日の場合は開館し、翌火曜休み)
道立旭川美術館(旭川市常磐公園)

一般800(600)円、高大生500(400)円、小中生300(200)円 ※かっこ内は団体料金


過去の関連記事へのリンク
【告知】オプ・アート展 (2012)
オプ・アート展(2003、画像なし)



・JR旭川駅前から約1.7キロ、徒歩21分
・都市間高速バス「高速あさひかわ号」(札幌―旭川)の「4条1丁目」で降車、約640メートル、徒歩9分

・JR旭川駅北側の1条通の14番バス停(1条8丁目)から、3番、33番、35番のバスに乗り、「4条4丁目」で降車(3・33・35番)、徒歩5分


(この項続く。(5)はこちら) 


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