蝶の挨拶

ベランダのスミレで育ったツマグロヒョウモンたちが、羽化を始めている。

今期は50匹ほどがいっせいに育ってしまい、
やむなく半数以上を、近所のスミレ群生地に放した。
我が家のスミレは、それだけの数の幼虫を養えない。
ベランダのスミレはすべて食べつくされてしまったので、毎日スミレの葉をつんできて残った幼虫を育てるのも毎年恒例である。

本来は、人のあずかり知らぬところで蛹になり、羽化し、飛んでいく彼ら。
羽化はたいがい午前中である。
私の気がつかないところで羽化し、飛べる状態になれば自由に飛んでいけるのである。
けれど彼らは飛んでいかず、夕方、外出から戻ると私の目の前をヒラヒラ舞って、それから夕方の空に飛んでいくことが何度かあった。
蛹の場所は、可能な限り確認しているので、ああ、今日はこの子が羽化したのだとわかる。

「無事に蝶になりました」
蝶たちは、挨拶をして飛んでいくのではないだろうか。
なんて礼儀正しく律儀！
勝手な解釈ではあるが、あながち検討ハズレでもないと自己満足する日々である。