夏山

10年前、初めて遠野を訪れたのは7月下旬、梅雨が開けて間もない頃だった。

高原牧場の一番高いところに、放牧されたすべての馬たちが集っていた。
梅雨明けからお盆までのひと月、活動が活発になるアブを避けるための馬たちの知恵だった。

アブは気温が上ると、すざましい勢いで馬たちにたかってくる。
気温の上昇をいち早く察知して、
ばらばらになっていた馬たちが急ぎ一箇所に集ってくる。
群れが集って団子状態になることが、アブから身を守る術だというとことを、彼らは昔から知っている。
馬たちの五感は、人間より敏感だと思う。

馬たちの壮大な群れ、それもまた、遠野の夏の風物詩。