GRASSの日々折々

馬好きフォトグラファーが綴る日々の1ショット。

名馬クリフジの騎手

2006年07月22日 | 馬徒然
朝日新聞の毎週金曜日夕刊に、「有吉正徳の競馬ウィークリー」というコラムが掲載される。いろいろな視点から競馬をとらえた話題が多くて、毎回楽しみ。21日付けのコラムは、「伝説の騎手、悲しい帰郷」。
シベリア戦没者遺骨のDNA鑑定で、青森県出身者6人が判明。その中に、中央競馬会の騎手前田長吉氏が含まれていたという。前田氏は、名牝クリフジの主戦ジョッキーだった人。クリフジは下総御料牧場の生産馬で、戦時中の1943年ダービーに牝馬ながら優勝、その後、オークス、菊花賞を含め11戦11勝というすばらしい成績を残して、1944年に引退した。彼女の引退を見届けた前田氏は、満州へ出征。終戦によってシベリアの収容所の強制労働に従事したが、1946年に23歳の若さで亡くなったそうである。
終戦から半世紀以上も経ち、名ジョッキーの遺骨は、やっと故郷の青森県八戸に戻ったということだ。
大陸に渡って帰ることができなかったのは、馬だけではない。ダービージョッキーが、こんなにも長い間故郷へ帰ることができなかった、ということが、妙にリアルに思える。戦争とは、そういうものだったんだと、実感してしまう。
クリフジは、その後繁殖牝馬としても優れた産駒を送り出した。もちろん、殿堂入りしている。クリフジを語るとき、前田長吉という騎手なくしては語ることができない。クリフジが、長い時をかけて、前田氏を日本に呼び戻したのかもしれない・・・。
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