過日、長田で行ったお好み焼店「青森」。 細身のオヤジさんは3年前に亡くなった。
真ん前に銭湯があり、風呂あがりにちょっと立ち寄って、ビールに小腹をふくらませるために
お好み焼を焼かせた。長田のこの辺り、震災前までは小さな民家が肩を寄せるようにあったが、
今やみんな新しく建て替わっている。
蛸のぶつ切り。蛸はタウリン豊富で、疲労回復にきくスタミナ食である。
神戸の人は、だいたい蛸にはうるさいよ。
おやじさんの息子さんの代になっていた。
神戸スタイルは薄焼きの生地の上にキャベツ、葱などを重ねていく広島式。
すじ煮込みを長田では「ぼっかけ」と呼び、こいつを何にでもぶっかてて食べた。
ご飯よく、うどんよろしく。 すじはかつては潜行艇と呼ばれ、並みの牛肉よりも下。
…波の下…というシャレ言葉で呼ばれた。
間で焼かれるのは、皮である。単なる牛皮ではなく、たぶん内臓の皮。
すじ・皮焼き。こういうのは、なかなか巡り合えない、ローカル色の強いお好み焼だ。
いまどきのお好み焼みたいにでかすぎないのがいい。粉もんに矜持があるとしたら、
今みたいに食事にしないところだ。 虫やしない、腹っぷさぎであった。
こういうおやつみたいなもんで、子供はサイダーなんぞを飲み、大人はビールを飲んだ。
外がパリッとして美味。 美味いといっても、美味すぎない辺りがいい。
ここへ来たら、やはり、そばめしと行こう。
一説に、ここが元祖ともいわれる。
長田はケミカルシューズの故郷であり、工場で働く女工さんが、冷えた弁当を持ちこみ、
そばと一緒に焼いて・・・ということになり、できたのがそばめし。
細かく刻まれたそばの食感、それとはちがうご飯の弾力。 これをコテで食べるのがいい。
港神戸とはまた違う、下町の顔がいい。
お好み焼&そばめし 青森 神戸市長田区久保町4
魚ヘンに日、四、又と書いて、鰻。 その文字に始まるのか、大阪には「菱」のついた鰻の老舗が多い。
「ひし好」、「菱富」、「菱竹」、「ひし屋」、「菱東」など。 考えりゃ不思議だな。
さて、こちらは菱ではない店。 地下鉄、野江内代(のえうちんだいと読む。なんでや・・・?)
駅を上がってしばし。
風に乗って、香ばしい匂いが鼻をかすめれば、もう近い。
何年か前に、こんなきれいな店になった、旭区の「魚伊」。
と、同時に、天神橋筋商店街に出店したり、繁盛けっこうなことである。
うざく 800円 鰻ときゅうりのざくざくの酢の物。
こういうので、陽の高い時分から一杯やってると、こたえられない。
酒もなかなか名酒が揃っているのに、こういうゴテゴテした徳利は苦手。
もっとすっきりした器で飲ませてほしい。アタシら酒飲み、飲めりゃいいってもんぢゃない。
東京に行ってから、鰻のうまさを知った。
バイトしたりなんかしてたのに、不幸な話である。
関東式は一杯やりながら待った。南千住「尾花」などでは1時間近くかかった。
それでもきちんと手をかけている証左なのだろうと、焦らず酒舐めながら待った。
串打ち8年、焼き一生などという言葉がある。炭の放射熱の前で大変な仕事だ。
ところが、関西の地焼きの場合は待たせない。
基本、蒸しの時間なく、次々に焼きあげていくのだから早い。
鰻に関しても、関西人は天下一品のイラチなのである。
こっちは1600円だったかの鰻重。
ぼくはどうもとり澄ました重箱が苦手で、丼を持って食べたいと常日頃思っている。
うな重 特上2300円 美しく食欲をそそる飴色。
鰻は温度が重要となる料理だ。ご飯は上等なのを炊き立てで、できるだけ熱々で出さねばならない。
これは塗りだが、瀬戸物の丼の場合、蒸し器などで温めておかねば面白くない。
これを一気呵成にいただく。 食べてから少々の粉山椒はよろしかろう。
下手に最初からかけると、「うちの鰻ははなから山椒かけるほど、泥くさくねぇぞ!」などと
怒鳴られる店もあるので注意されたし。 奈良漬の数切れあれば言うことなし。
三分の一ほどは、円生師匠譲りの、徹底的に混ぜ合わせる鰻めしにする。
こればかりはお里が知れる状態なので見せられない。
肝吸いは無いと寂しいが、あっても感動したことがない。
よく見りゃドザエモンみたいだし、ありゃなんとかして、もっと画期的な吸い物にならないもんかな。
テイクアウトできるコーナーもあり、半助なんぞを買って、焼き豆腐と葱を一緒に炊き込むと、おつな肴になる。
魚伊 大阪市旭区高殿4
どこぞのCMに出てくる欧米坊やのように、「ザッソウリキ~~!!」とでも
歌いたくなるような、実家堺のCat's Forehead Garden.。猫の額庭園。
ターシャの庭に影響を受けて、一切雑草を抜いたりせずに、放任主義で育てた
野趣あふれる庭園が近所でも評判をよんでいる。
というのは真っ赤なウソで、なにがターシャなものか。
愛情をもってハーブを育てて…どこがだ。
実家の老人を覗くついでに、庭の手入れもしたいのはやまやま。
「ああ~伸びてしもたなぁ、でも暑いから草抜きはまたにしよう…」が続き、このザマだ。
手がつけられぬ。しかし、千載一遇のチャンス。台風の雨上がり。これだ!
つわものどもが風雨で横倒しになっている隙に、根がゆるんでいるタイミングにやっちまおう。
写真は、庭にやってきたシルバー人材センターの人。ちがわい。
改心して庭師になった、白昼の川俣軍司。お久しぶり。ちがう!
川俣軍司知らん? 知らない奴は置いていくで。義務教育やないので。
ちがわい、ワシだ、オレだ。
手に持ってるのは万田酵素の宣伝でもチェルノブイリで採取した野草でもない。
育ち過ぎた、オオアレチノギクか、セイタカアワダチソウ。
とりあえず、どっちゃでもよろしい。3メートル近くでかくなってやんの。
雑草魂!といいたいところだが、雑草もなかなか始末に悪い。
近所で園芸に凝ろうと思っても、うちみたいなのがあると、種が飛んでくる。
こりゃ金魚迷惑というものだ。
身体じゅうに虫よけふりかけ、蚊取り線香を炊き、
とにかくでかいのから引っこ抜いたのだった。
ジャージの下は汗みずく。
おまけにマスクまでしているので、頭がモウロウとしてきた。
雑草などというものはない。どの草木にも名前がちゃんとあるのだとおっしゃったのは、昭和天皇とか。
雑草もいちいち眺めていれば、情が移りそうな気がするが、そんな悠長なこと我ら下々は言うておれません。
とにかく引っこ抜き、ヘクリカズラか、そこらじゅうの木々に蔓で寄生するヤツをひっぺがし、
対決姿勢で強制代執行である。しかし、ここまで手強い相手だとは思わなんだ。
わてら人間サマだが、この先、雑草力に勝てないかもしれない。
この場合、人間が比喩として使う雑草ではない、ほんまもんの雑草にだ。
我々が行方不明になったら、実家の猫額庭をお探し下さい・・・