もうここではお馴染み。今や大阪屈指の蕎麦屋となった「なにわ翁」@老松町
ここへ来る前に、うどん屋の取材があったが食べられず、どうしても麺でカタをつけたかった。
この張り紙を見て、シメの蕎麦は決まった。
蕎麦屋へ寄るということは、一杯やりたいということ。
忙しい時間に蕎麦だけたぐって帰る…なんてことはしない。
この陽気なのでひやをもらって、この箱。 誰でぇ、骨壺なんて言う奴ぁ!
有明産の焼き海苔。網の下には小さな炭が仕込んである。
一旦、炙ったものをこうしてパリッとした状態で出す。
海苔の香りに山葵の香り、そいつを醤油チョイ浸けで食べる。 香りが鼻に抜けてすっと口融け。
そこへさしてお酒をクイッとやったんさい。 もう、何をか言わんや。 アタシは泣くね。
ブラック・カーボン紙と思い、海苔巻きを裏巻きにするような外国人にゃわかるめぇ。
いや、わかってほしくなど、ありません。
熱くなってしもたがな…思い出したが、海苔を消化できるのって
確か日本人だけではなかったか。西洋人には分解できないと何処かで読んだ。
だから、ま、やめときなはれ。
越前の名物、小鯛の笹漬け。カスゴてぇやつですね。こいつを酢味噌で。
山葵醤油でも行っても、もちろん結構。
子供の頃は苦手だったが、大人になるとうめぇ。
例によって石州の豊の秋で始め、秋鹿を燗で。
春だっていうのに、なんでか秋ばかり頼んでしまう。
腹を膨らましたくないので、春の定番・浅蜊そばは抜きにしてもらう。
浜名湖産の大ぶりな浅蜊はうま味が乗って、幸せな味。
木の芽が新緑の季節を告げ、バツグンの吸い物となる。
途中、原了郭の黒七味なんぞをパラリと入れると、これがまた結構な具合で。
で、シメはほたるいかざるそば。
やはりホタルイカは富山でないといけないらしく、噛んだ時のワタのコクが他所と違う気がする。
たっぷりのつけ汁にはほたるいかと、三つ葉だったかな。
いっぱい食べたいが、ホタルイケはこれ以上あっても食べにくいし、これ以下でも寂しい。
すべての食べ物屋は清潔でなければならないが、とりわけ蕎麦屋は気になる。
ここのうちは、いつ訪れても申し分ない。
四隅に目が配られている。その安心感。
いつ食べても、期待を裏切らない安定感にホッとさせられる。
時代やなんかで翻弄されない、蕎麦という食べ物はそんな精神安定剤的な食べ物でもあると思う。