散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

川崎市長選・自民党、二重の敗北~阿部市長後継が「3党相乗り」を潰す

2013年10月30日 | 地方自治
敗北したのは阿部市長?自民党?どちらなのか、川崎市長選挙での疑問の一つだ。問題は落選した秀嶋候補が忘れられていることだが。表面的な経緯からは、秀嶋氏が立候補を表明、続いて、自民党が嶋崎、吉澤両市議を含めて4名?の中から推薦候補を絞りこんだ。後は、公明党、民主党が推薦した。
 『川崎市長選挙・福田紀彦氏が当選!131027』

しかし、当初は後継とは云わなかった阿部市長は、徐々に秀嶋氏に肩入れ、「阿部後継」を実態化した。最後に、阿部市長が秀嶋氏を脇においてマイクを握ることになり、傍にはみんなの党の議員が手を振っている有様であった。

自民党推薦が秀嶋氏に決まったとき、「自らの中から候補者を出そうと試みた市議団は市長に圧倒され、脆くも崩された」と記事で述べた。先ず、自民党市議団は知事に敗れたのだ。従って、本番の選挙を含めて二重の敗北だ。石破幹事長は敗因を分析するらしいが、ここを認めない限り、本当の反省にはならない。
 『川崎市長選・自民党候補は総務省官僚130906』

政令市において、市議は行政区(川崎市;7区・平均人口20.7万人)の代表である。阿部市長は「市議には地域の隅々までみて頂いている」とも云っている。逆に云えば、市政の重要項目は市長に「任せろ」とのことだ。それも確かで、全般に市議会から発せられる情報は、全体像は不確かで、特に財政問題に疎い。

また、監視・批判はできるが提案能力は乏しい。例えば、待機児童の問題を抱え、川崎市の「保育計画」は改定に次ぐ改定に及んでいる。しかし、市議会での質問の殆どは“員数”に関わる問題だ。

勿論、阿部市長もそうだが、市政の経験がなくとも市長に就任する方はいくらでもいる。なまじ、市議の経験がある人に対しては、経験の中で何を身につけたのか、との見方でみるのかもしれない。

また、自民党一党だけでは、市長選挙で勝てるのか、との問題もある。先ずは公明党、そして民主党との連携になる。この場合、党派性が薄い方が連携しやすいことは確かだ。従って、最低限、無所属出馬になる。

更に、市長が引退する場合、これまでの市政を基本的に引き継ぐ立場であれば、市長との関係を良くすることで優位に立てる。そうなれば、市長の注文も入る可能性は大きい。市長が現役の市議を積極的に押すとも思われない。

以上のように、1)市議の能力イメージ、2)党派及び首長との駆け引き、が有ることによって、市議が自民党の候補にのぼることは難しい。前回の選挙では長老の原市議が立候補したが、このときは、阿部市長の民主への擦り寄りがあり、独自候補を立てざるを得なくなり、候補者難のなか原氏が貧乏くじを引いた事情があったからだ。逆にこのことも、市議が候補になる難しさを示す。

先の横浜市長選で林市長に3党が相乗りした。このとき『川崎市はポスト阿部、市議団の大穴は自民・吉沢章子議員?』と筆者は呟いた。それが、7月末に嶋崎、吉沢両市議が自民党の候補者公募に名乗りを上げたとのニュースに接した。ふたり共に政策通として知られ、いよいよ登場かと思ったが、その後の経緯は初めに述べた通りになった。自民党市議団の思惑は一蹴され、阿部市長の前に完敗であった。市長にとって、おそらく、前回選挙の屈辱もあったに違いない。
 『自民川崎市議、遂に市長選挙に立つ137026』

ここで秀嶋氏が自己を表現すれば、展開は違ったはずだ。ところが、市長は「後継指名はしないが応援する」「争点は阿部市政の評価」と発言を変え、秀嶋氏が具体的な政策、スタイルを明らかにしない状況で「阿部後継」を顕わにする。

成果を示し、個人票も「後継」に結びつけるとの市長の思惑であろう。しかし、3党の市議たちは白けたに違いない。過去の人となる「阿部」の選挙ではない。将来の人でもある自らの勢力拡大が目的なのだ。「阿部―3党」の慢心連合にあった微妙なズレが、最後に拡大したと思われる。市長が「後継」を強く打ち出し、相乗り「3党」の存在感を打ち消したことが、敗北の大きな要因と考えられる。

第三期阿部市政は、新たな産業振興の場としての臨海部再開発、コンパクトシティとしての武蔵小杉超高層マンション地域開発に傾斜し、12年間の仕上げを意識していたかのようだ。

しかし、保育待機児童対策は横浜市に大きく遅れ、小学校は改築・増築でプレハブ教室ラッシュ、中学校給食は「愛情弁当」論で正面から否定、この世代及びその親に対する福祉政策は滞った面がでてきた。おそらく、市内部の風通しも悪かったのではないか。結局、自民党は割を食って二重の敗北になった。

      
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