タイミング良く、日経が国際政治学・イアン・ブレマーのインタビュー記事を載せている(7/2朝刊)。離脱の基本的な手続きを見ながら世界的な背景と今後の進展、影響をブレマーに沿って理解してみる(「 」内は筆者のコメント)。
リスボン条約第50条(日経6/29)
質問 欧州問題を今年のトップリスクに予想した理由
・EU離脱を問う英国民投票は事前予想が拮抗、大きなリスク。
・テロ、ギリシャ危機、難民問題、大衆迎合主義の台頭等、明らかに不安定
・背景は、移民、主権問題以上に、下記のことが大
・国から大切に扱われず<社会契約>が途絶えたと感じる人々の抗議
・結果として、EUへの拒絶と同時に、支配階級層に対する拒絶も意味
「権力と社会における政策の循環が途絶え、権威的決定ができない状態」
質問 EUに対する懐疑的な見方が他のEU加盟国にも広がるか
・シェンゲン協定、単一通貨を強化する国と、それ以外の国とに分断は広がる
・共通の価値観で、難民、中間層空洞化を解決する力はリーダーに乏しい
・超国家的アイデンティティを持つというEUの野心的な実験は失敗に終わる
「少なくともEUには悲観的である。理念は立派だが、現実の動きについていくには、力が及ばないということか。国家レベルに戻ると巧くいく?」
質問 米国でのポピュリズムの台頭はどうか
・米国は多文化・多民族な国家、大統領選への影響は小さい
・米国の課題はトランプあるいはクリントンの選択
・米国でも支配階級層と国民層との対立は強まっている
「やや楽観的、米国には余裕があるとみているのか」
質問 欧米以外の大国への政治的、経済的な影響
・英国EU離脱での勝者はロシア、EU弱体化でウクライナ問題が緩和
・個別の国々とエネルギー、防衛の関係を築き易くなる
・中国は貿易や安全保障で悪影響を被る
・世界の秩序が乱れるため、英国のEU離脱を歓迎していない
・中国の持続的な経済成長には、強い米国と強い欧州が必要不可欠
「ロシア対EU、中国対日本の政治・経済・軍事的な対立が深まる可能性も」
「米国の政治情勢の行方と政策の方向が大きなポイント」
「クリントンの圧勝を期待したい処」→当面の結論
質問 世界のパワーバランスは変わるか
・同時テロ、金融危機を経て米国が世界を引っ張る構図が弱まる
・世界はリーダー役を欠く『Gゼロ』の状態
・グローバル化の影響に対する人々の怒りをおさめる指導者は不在
・一段と不安定な状況になる
「ハンナ・アーレントが50年前に、その『暴力論』(みすず書房)において、現代の管理社会を<ruled by nobody>と呼んだ。
金融・経済のグローバル化、巨大な官僚機構の増殖、更にEU機構あるいは国連機構も各国の官僚機構に屋上屋を重ねているようなものだ。
その中で権力者・指導者たちも巨大な“情報の壁”によって現実世界から疎外されているようだ」
リスボン条約第50条(日経6/29)
質問 欧州問題を今年のトップリスクに予想した理由
・EU離脱を問う英国民投票は事前予想が拮抗、大きなリスク。
・テロ、ギリシャ危機、難民問題、大衆迎合主義の台頭等、明らかに不安定
・背景は、移民、主権問題以上に、下記のことが大
・国から大切に扱われず<社会契約>が途絶えたと感じる人々の抗議
・結果として、EUへの拒絶と同時に、支配階級層に対する拒絶も意味
「権力と社会における政策の循環が途絶え、権威的決定ができない状態」
質問 EUに対する懐疑的な見方が他のEU加盟国にも広がるか
・シェンゲン協定、単一通貨を強化する国と、それ以外の国とに分断は広がる
・共通の価値観で、難民、中間層空洞化を解決する力はリーダーに乏しい
・超国家的アイデンティティを持つというEUの野心的な実験は失敗に終わる
「少なくともEUには悲観的である。理念は立派だが、現実の動きについていくには、力が及ばないということか。国家レベルに戻ると巧くいく?」
質問 米国でのポピュリズムの台頭はどうか
・米国は多文化・多民族な国家、大統領選への影響は小さい
・米国の課題はトランプあるいはクリントンの選択
・米国でも支配階級層と国民層との対立は強まっている
「やや楽観的、米国には余裕があるとみているのか」
質問 欧米以外の大国への政治的、経済的な影響
・英国EU離脱での勝者はロシア、EU弱体化でウクライナ問題が緩和
・個別の国々とエネルギー、防衛の関係を築き易くなる
・中国は貿易や安全保障で悪影響を被る
・世界の秩序が乱れるため、英国のEU離脱を歓迎していない
・中国の持続的な経済成長には、強い米国と強い欧州が必要不可欠
「ロシア対EU、中国対日本の政治・経済・軍事的な対立が深まる可能性も」
「米国の政治情勢の行方と政策の方向が大きなポイント」
「クリントンの圧勝を期待したい処」→当面の結論
質問 世界のパワーバランスは変わるか
・同時テロ、金融危機を経て米国が世界を引っ張る構図が弱まる
・世界はリーダー役を欠く『Gゼロ』の状態
・グローバル化の影響に対する人々の怒りをおさめる指導者は不在
・一段と不安定な状況になる
「ハンナ・アーレントが50年前に、その『暴力論』(みすず書房)において、現代の管理社会を<ruled by nobody>と呼んだ。
金融・経済のグローバル化、巨大な官僚機構の増殖、更にEU機構あるいは国連機構も各国の官僚機構に屋上屋を重ねているようなものだ。
その中で権力者・指導者たちも巨大な“情報の壁”によって現実世界から疎外されているようだ」