散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

先進国人口減時代における外国人獲得競争~日本は人口減に拍車?

2015年11月09日 | 現代社会
「アベノミクス」の第2段階は経済政策と云うよりも、一億総活躍時代のキャッチフレーズを掲げた社会経済政策の色合いが濃い。名目GDPは600兆円、希望出生率1.8の実現、介護離職ゼロが新たな3本の矢となる。

その目標と大きな距離があるが、50年後も人口1億人を維持するという目標も掲げている。これに対して日経・編集委員の瀬能繁氏は、世界銀行が10月に発表したグローバル・モニタリング・リポートの人口推移を引用して、死角もあると述べる(2015/11/8付日経)。このデータを見出したのは氏の問題意識がなせる技であろうか。安倍首相の目標を検証した機関・個人は未だ日本にはない?



上記の図は、日本の出生率が今世紀半ばに希望出生率である「1.8」に達し、2100年まで同水準で続くという基本シナリオに基づくデータだ。それでも今から50年後の65年には人口が1億人を下回ってしまう。
(但し、安倍首相は「1.8」になる時期を2000年半ばではなく、もっと早い時期を想定しているー例えば、自らの任期中とかーと筆者は想像するが!)

出生率が「2.1」まで上昇すれば、50年後も人口1億人を維持できる。しかし、経済協力開発機構(OECD)によると先進7カ国で最も高いフランス(2014年時点で出生率1.98)を超える高水準で、難度はさらに上がる。

このデータに基づいて氏は次の様に議論する。
希望出生率は、子どもが欲しい若年層の希望が100%達成すると得られる水準。女性ひとりが生涯に生む子ども数、合計特殊出生率は2014年時点で「1.42」だ。しかし、「1.8」は1985年以降達成しておらず、非常にハードルの高い目標だ。問題は、仮に「1.8」が実現しても、中長期的に人口1億人を保つのは難しいという事実が認識されていないことだ。

では、外国人の受入拡大で1億人を維持できるか。「移民は受け入れない」方針の安倍政権の下では難しいが、それだけではない。人口減少圧力に直面する先進各国のなかで「外国人獲得競争」(みずほ総研・岡田豊氏)が強まるからだ。

国連によると、仮に加、英で移民無の場合、2100年時点の人口は2015年を下回る。米、仏を含めて人口増のかなりの部分を外国人に依存している国が多い。しかし、主に外国人を送り出す側の途上国の大半も2100年までに人口減社会に突入する。そこで、先進国がパイの限られた外国人材を奪い合う展開が予想される。

出生率を着実に高め、さらに希望出生率も1.8を超えて高まるような思い切った少子化対策を打ち出せるか。「移民」と一線を画したうえで、外国の高度人材や専門人材、留学生をどれだけ増やせるか。1億人維持の隠れた論点だろう。

氏は「外国人獲得競争」を死角としている。それは、先進諸国間の人材獲得競争でもある。各国は必死になって人材を囲い込むはずだ。日本が外国人を獲得できないだけではなく、日本人が外国に獲得される恐れのほうが、今は強いと思う。

最近の世界大学ランキングをみると、ランキングが何を意味するのかは別として、日本の大学の順位が後退していくのが気がかりではある。大学は優秀な人材を囲い込む基地になりのであるから。また、円安になって、企業の外国進出が滞ってくるのも問題だ。ここは出先機関になるからだ。

経済政策を、単に目先の株価高、輸出企業の利益を目安にするのではなく、広範囲、かつ、長期を視野に入れた社会経済政策にしなければいけない理由である。

      
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