川崎市議会における教育委員任命の同意案件(市長提案)に、重冨議員は議員のなかで、ひとりだけ反対した。従来の地方議会での慣例である「特に問題がなければ同意する」を破って、“明確な理由を基に同意する”をあるべき姿と考えたからである。この考え方を「了解型意思決定」と呼ぼう(後述)。
『審査・審議無の「教育委員同意案件」に反対有~川崎市議会の内部改革へ向けて160321』
何故、筆者が氏の考え方に共感するのか。その意思決定は川崎市民全体を代表するものになるからだ。
議員総体としての議会が意思決定を行うから、議会において意思決定が最重要な仕事となる。従って、議会が最高度の意思決定を行うように努力することが、議会の一員として各議員に課せられた第一優先の仕事になるはずである。
議会は人事の同意に関して、市長が任命する人物が適格であることを納得しなければならない。それは議場において確認すべきことである。
(1)市長の説明、(2)候補者の所信表明、(3)議員―候補者間の質疑応答、を実施することが本来の姿であろう。そうでなければ、議会は市民に充分な責任を果たしたことにはならない。
かつて、地方議会に関する或る「公開シンポジウム」において、片山元総務相が聴衆の中の地方議員に向けて、「意思決定を本当にやっています?」、「同意人事の案件では、ご本人から職務に関する取り組み方を聴いていますか?疑問点を質していますか?」、「少なくともその程度はやらないで、単に賛成するだけですか?」と話していたことが強烈な印象として、筆者の頭に残っている。
日本全国では二千程度の地方自治体があるだろうから、どこかで、これらの同意人事案件に対して「真の意思決定を行っている自治体もあるだろう」。重冨議員は同意に値する情報を得るべく、市の行政機構に問いを発したことをブログで語る。しかし、得られなかった。行政側からみても、答はだせないはずだ。
では、委員会での審議は行われたのであろうか。人事案件は「委員会への付託を省略する案件」になるのが慣習なのだ。本会議においても、提案説明「市長の任命理由読上げ」、質疑「議員の申出がなく終結」、採択「総員起立で可決」、即ち、“判を押す”様に、形式的に意思決定したことになる。
地方議会が批判させる場合、最初に挙げられる理由は以下のことだ。
(1)議案の圧倒的多くは首長提案であり、
(2)審議の過程で圧倒的多くは修正もなく、
(3)議決において、圧倒的多くは全会一致の可決である。
しかし、例えば川崎市議会の「議会基本条例」は、議会の役割として第一に“意思決定”を掲げる(第3条―1-(1))。
そこで筆者は「意思決定」の分類・整理を試みた。
()提案型意思決定…議会が新たな条例等を策定し、可決する
()承認型意思決定…首長提案を修正提案・附帯決議等もなく可決する
上記の(1)―(3)に示した過程は、()に該当する。
では、今回の重冨議員の考え方を川崎市議会が賛同して実施に移した場合はどうだろうか。ここで筆者は()「了解型意思決定」を追加すべきと考える。
単なる承認では無く、実質的な質疑を経て意思決定するものだ。例えば、通常の年次予算案審議はどこの議会でも質疑は行われるであろう。一方、それを議会が見直しに持ち込めば、マスメディアのニュース沙汰になる。
では、可決すれば、承認型になるか?それもおかしい。理解し、意見が違うところがあってもその地方行政全般を考量して納得すれば、それは議会の活動として正当な評価を与えなければいけない。問題は質疑の質になる。従って、承認型意思決定と了解型意思決定の違いは、議会活動を質的に評価する市民の姿勢が重要になるはずだ。
その意味で、議会の意思決定に一石を投じた重冨議員の態度は、今後の地方議会全体への提案として貴重なものになるのだ。従って、多くの議会・議員が先ずはこのことを良く知って、自らの活動にフィードバックするように、吟味して頂きたいと考える。
『審査・審議無の「教育委員同意案件」に反対有~川崎市議会の内部改革へ向けて160321』
何故、筆者が氏の考え方に共感するのか。その意思決定は川崎市民全体を代表するものになるからだ。
議員総体としての議会が意思決定を行うから、議会において意思決定が最重要な仕事となる。従って、議会が最高度の意思決定を行うように努力することが、議会の一員として各議員に課せられた第一優先の仕事になるはずである。
議会は人事の同意に関して、市長が任命する人物が適格であることを納得しなければならない。それは議場において確認すべきことである。
(1)市長の説明、(2)候補者の所信表明、(3)議員―候補者間の質疑応答、を実施することが本来の姿であろう。そうでなければ、議会は市民に充分な責任を果たしたことにはならない。
かつて、地方議会に関する或る「公開シンポジウム」において、片山元総務相が聴衆の中の地方議員に向けて、「意思決定を本当にやっています?」、「同意人事の案件では、ご本人から職務に関する取り組み方を聴いていますか?疑問点を質していますか?」、「少なくともその程度はやらないで、単に賛成するだけですか?」と話していたことが強烈な印象として、筆者の頭に残っている。
日本全国では二千程度の地方自治体があるだろうから、どこかで、これらの同意人事案件に対して「真の意思決定を行っている自治体もあるだろう」。重冨議員は同意に値する情報を得るべく、市の行政機構に問いを発したことをブログで語る。しかし、得られなかった。行政側からみても、答はだせないはずだ。
では、委員会での審議は行われたのであろうか。人事案件は「委員会への付託を省略する案件」になるのが慣習なのだ。本会議においても、提案説明「市長の任命理由読上げ」、質疑「議員の申出がなく終結」、採択「総員起立で可決」、即ち、“判を押す”様に、形式的に意思決定したことになる。
地方議会が批判させる場合、最初に挙げられる理由は以下のことだ。
(1)議案の圧倒的多くは首長提案であり、
(2)審議の過程で圧倒的多くは修正もなく、
(3)議決において、圧倒的多くは全会一致の可決である。
しかし、例えば川崎市議会の「議会基本条例」は、議会の役割として第一に“意思決定”を掲げる(第3条―1-(1))。
そこで筆者は「意思決定」の分類・整理を試みた。
()提案型意思決定…議会が新たな条例等を策定し、可決する
()承認型意思決定…首長提案を修正提案・附帯決議等もなく可決する
上記の(1)―(3)に示した過程は、()に該当する。
では、今回の重冨議員の考え方を川崎市議会が賛同して実施に移した場合はどうだろうか。ここで筆者は()「了解型意思決定」を追加すべきと考える。
単なる承認では無く、実質的な質疑を経て意思決定するものだ。例えば、通常の年次予算案審議はどこの議会でも質疑は行われるであろう。一方、それを議会が見直しに持ち込めば、マスメディアのニュース沙汰になる。
では、可決すれば、承認型になるか?それもおかしい。理解し、意見が違うところがあってもその地方行政全般を考量して納得すれば、それは議会の活動として正当な評価を与えなければいけない。問題は質疑の質になる。従って、承認型意思決定と了解型意思決定の違いは、議会活動を質的に評価する市民の姿勢が重要になるはずだ。
その意味で、議会の意思決定に一石を投じた重冨議員の態度は、今後の地方議会全体への提案として貴重なものになるのだ。従って、多くの議会・議員が先ずはこのことを良く知って、自らの活動にフィードバックするように、吟味して頂きたいと考える。