散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

べビーシッター不足が示すこと~時間の稀少性

2022年01月30日 | 現代社会

都市部を中心にベビーシッターの利用者が急増している。国の支援策の拡充が利用を後押しする一方、人材確保が追いつかず、サービス提供が滞るケースも出ている。共働き世帯の増加に加え、新型コロナウイルス禍で保育園休園が相次ぐ中、子育て支援のさらなる充実は不可欠だ(日経01/30)。
 ( 新型コロナ: シッター不足、都市部深刻 支援拡充・コロナで利用増)

保育待機児童が筆者の地元、川崎市において喫緊の政策と公明党、共産党によって主張されたのは、十年前頃、阿部市長時代からだ。それ以降も共働き夫婦が増えている。また、その働き方も多様化する。子育てしやすい環境づくりはどうしても後追いになる。

その状況から現在では資格不要なベビーシッターの世界へ及んでいる。オミクロン禍のなか、保育園、幼稚園の休園も相次ぎ、国の支援制度がある中で支援を求める人たちが急増する。個の自由と効率を追求するなかで、「時間の稀少性」は益々高まっていく。
ここに現代社会における基本的な問題が潜んでいる。
 それは「子殺しの風土」(朝日新聞:1974年9月9日)と呼ばれた時期に顕著となり、その後も続いているように思える。

 

新聞に例示されているのは、都の30代会社員夫婦、行政の補助を受けても月々10万円以上の支出。働き方を諦めるか、シッターをフル活用するかの二択。後者を選ぶと、将来の教育費を貯蓄する余裕がない。しかし、これを贅沢だと思う同世代の夫婦もいるだろう。
一方、シッターの多くは非正規雇用であって、一日数時間の稼働では安定した収入にはならない。担い手が増えないのは当然だ。

 


岐路に立つ、住宅政策~戦後持家政策と格差

2022年01月23日 | 政治

岸田首相は新しい資本主義を標榜する。しかし、具体的な新施策は未だ出てきていない。そこであるだろうか。この数年に議論がなされている問題点にについて過去も振り返りながら議論を紹介する。先ずは住宅問題から…。
戦後の住宅政策は一本道(持家へ)であった。この先は如何にあるべきか?平山洋介・神戸大教授は朝日新聞のインタビューに答える(21年12月18日)。

コロナ禍は、人々の意識を「住まい」へ向けさせた。感染対策でのステイホーム、テレワークで在宅時間が増す。感染リスクの高い都市部を離れて郊外へ移住、収入減で家を失う不安を持つ。「住まいをめぐる課題の背景に「持ち家促進」に傾いた戦後の住宅政策がある。

コロナ禍の下、住まいのセーフティーネットとしての住宅政策が、日本にはほとんどなかった。国の家賃補助は、欧州では一般的な住宅政策、日本も平時から制度化が必要だった。 戦後日本の住宅政策は持ち家を重んじ、借家の改善を軽視してきた。

これに対して、政府は失業対策だった「住居確保給付金」の条件を緩め、離職していない減収世帯でも利用可能にした。2020年度だけで13万件を超える利用があり、実質的な家賃補助となっている。しかし、「目的外使用」の不安定な措置に過ぎない。

 戦前、都市部では借家暮らしが一般的。しかし、戦争中に多くの家が焼け、終戦直後には約420万戸の住宅が不足した。さらには戦後のベビーブームと、農村から都市への人口移動で、世界でもまれに見る大きな住宅需要が生まれた。

 住宅を増やす必要に迫られた政府は、人々の「持ち家」取得を促しました。国の財政だけではとても住宅需要に対応できず、国民の家計や民間資金を動員して家を増やした。


 その政策では「家族・中間層・持ち家」が重点となる。経済成長時代、人々は借家から持ち家への「はしご」を登る。雇用と収入の安定化、持ち家をゴールに、中間層の膨らみで社会の安定化を図った。政策の柱は住宅金融公庫のローン、低金利で長期に供給、購入層を広げる。

特に石油ショックの後、政府は住宅建設で景気の刺激を図り、公庫ローンの供給を拡大、住まいの「金融化」を図る。即ち、個人の借金を経済対策に用いた。それでもインフレのなか、給料上昇の時代、ローンの負担も相対的に軽くなる見通しもあった。

しかし、金融化の行き着く先が、バブル経済だった。景気刺激のため、住宅ローンの規制緩和で多くの人が借金、住宅価格の上昇がローン借入れ条件緩和へと結びつく。このサイクルの果てにバブルが発生する。

バブル崩壊後、政府は金融公庫を廃止、ローン供給の主体は民間金融機関へと移る。巨大な住宅金融市場、銀行間の競争、少ない頭金、低金利のローン商品が開発・販売される。そのローンの「市場化」によって、重い返済負担で家を購入する人も増加する。住宅ローン減税も、住宅購入を後押しする。

一方、『持ち家重視政策』は、住まいのはしごから外れた人々、「単身者・低所得者・借家人」に対する住宅政策を置去りにしていた。

日本には公営住宅が全住宅の3.6%程度(2018年)、欧州諸国と比べて著しく低い。一方、90年代の地方分権化で、地方自治体も住宅政策のあり方を決めるようになる。しかし、公営住宅の拡充は低所得者を呼び寄せると考え、その供給に消極的であった。

国家に代わって、そうした人々を支えてきたのは家族だった。過去30年に渡り、親の家に住み続ける非正規雇用の若い人たちの増加が続く。親の家が公営住宅の代わりになっていく。高齢者とその子ども家族の3世代同居を誘導する政策も続く。国家ではなく家族に福祉を担わせる「日本型福祉社会」を反映する形だ。

経済成長が終わった今、非正規労働者、未婚の人が増える。長引くデフレのなかで、住宅ローンという借金を背負うリスクは大きい。インフレ時代にあった住宅資産の含み益も消え、住まいのはしごを登れない人々は更に増える。

 その一方、経済的に豊かな層では、親の持ち家の相続、購入資金を親が支援等の子世代も増える。経済成長期に働けば誰もが持ち家に手が届く「出自を問わない社会」が生まれると考えられていた。成長後の時代に入った今、資産となる住宅を持つ家族がさらに豊かになる「再階層化」が進む。

また、住宅価格が上昇する「ホットスポット」と、下降が続く「コールドスポット」の分化が進む。東京都心、湾岸部、大都市中心部では住宅需要が増え、タワーマンションが次々に建つ。大企業に勤める共働き世帯は立地を重視、都心の住宅を買い、タワーマンション建設を支える一因になる。一方、郊外、地方では資産にならない持ち家が増える。

格差が広がるなか、何が求められるのか。

新築持ち家以外の施策を充実させ、幅広い政策手段を用意する必要がある。少ない公営住宅を増やす。家賃補助制度も実現するべきだ。中古住宅市場を拡大、既存住宅のストックの流動化も必要になる。空き家を活用した、低所得者向けの賃貸住宅供給も期待される。

「マイホームへの一本道」の価値観は、特に若い世代の間で薄れている。多くの人が結婚、所得増、家を持ち、資産を増やす、との想定は成立しない。新築持ち家を重んじるのではなく、多くの選択肢を準備し、多様な人生のあり方に対応する住宅政策が、政府に求められる。

 

 


自分史を上梓~漸く、やっと発行

2022年01月03日 | 個人史

この度、自分史を上梓しました(2021年12月10日付)。

 既に『自分史完成』(1)~(5)として、以下の様に報告していた。
 「市井人」の自分史として(1)     2021/03/11
 「ベビーブーム(BB)世代」と「団塊世代」(2)03/12
 市井人としての意義(3)          03/30
 「筆者」と「自分」の関係(4)         04/02
 本書の構成~四部、二十三章(5)     04/24

しかし、本人だけでなく、他人の眼も必要と考え、何人かの方に読んで頂いた。指摘された内容の中で納得した事項を中心に、本文の手直しを行った。更に、この段階での修正には、他の箇所にも影響を及ぼす箇所もでてくるので、全文を慎重に見直した。但し、上記の投稿の表題に修正の必要はない。

ここで追加する事項は、重複も含めて下記の説明だ。

 表題:或るベビーブーム世代の生活世界(副題:個人・住民・Citizen)
  「A5版、全223頁 (写真、図面等ナシ)」
   …200頁以下に抑えようとしたが…削除は難しい…書くときよりも!

 表題は書き始める際の“立ち位置”を、
 副題は本文を書き終える際の“後半生の指針”をそれぞれ示す。

 本文では生誕からの半生を起承転結で表現、以下の四部構成としている。
 「成長期」、「発展期」、「転換期」、「統合期」。
 また、社会状況の描写、自らの活動に係わる社会事象等については、多くの文献を参照した(引用文献参照…約150項目)。

 なお、製本・印刷を業者へ依頼、校正は筆者のみ…誤字・脱字等の校正漏れの可能性はあるように思える…。