日経新聞の世論調査によれば、消費増税に対する賛否は以下に示すとおり。
7月 反対45%、賛成47%
9月 賛成49%、反対42%
11月 賛成47%、反対45%
12月 賛成38%、反対53%
1月 賛成36%、反対56%
元来、増税に諸手を挙げて賛成する人はいない。世論調査をすること自体、消費増税を巡って状況が緊迫していることを示している。11月までは賛否が拮抗し、その中で賛成が反対を9月に一旦は抜いたかに見えたが、直ぐに指し返され、現在は拮抗から外れて、反対が大きくなっている。この意味する処は二つである。
一つは野田政権の政策に対する評価である。もう一つは私たちを取巻く環境の変化である。
先ず、野田政権の政策に対する評価。
先のエントリに書いたように、
『ヨーロッパにおける南欧勢、ギリシャ、イタリア、スペインと続く、経済危機である。具体的に、どのように経済危機は発生するのか、日本として見本を見せられているようなものだ。私たちの意識は、痛みを伴う「改革」の方向へと誘われているように思える。』
しかし、野田政権から消費税増税を具体的に提案されると、『民主党マニフェスト「改革」への“アキラメ”を感じる』とは言っても、国民として、これに諸手を挙げて賛成しては、増税分も官僚機構のムダ使いに使われるのではないか、という心配もにわかに浮かぶ。
“国民的ふんぎり”をつけられない状態だ!
更に、マスメディアの報道からは、一体改革とは言っているものの、増税だけを具体的に強調していることが窺われる。先ずは、与野党で協議して課題・論点・争点を明らかにして欲しいとの気持ちだろう。だから、これまでは“一般論”として増税やむなしと考えていたとしても、“具体案”に対しては、取りあえず反対に回った人が出てきている。更に、付け加えれば、一体改革と「その前にやること」、議会・行政改革を本気で行えば、消費増税賛成は50%を越えると予測される。それまでは様子を見よう、との態度である。
これが一つの解釈である。
次に、私たちを取巻く環境の変化である。
この“様子見”を僅かながらでも支える状況が出てきた。大阪市長・橋下徹氏による行政改革の始動だ。筆者が予測したような「期待逓減の『脱改革』」の方向へ向かわず、大阪市改革が国政へ波及することを望む展開になってきた。
筆者は橋下徹氏の政治的スタイルを状況型リーダーシップと表現した。国家機構の変革を志向するのであるから、“状況変化”に対して国の政治全体に対して影響を及ぼすように、素早く反応する必要がある。この“声なき声を含めた空気”を察知した橋下氏は自民党に付きながらも、距離感を置いている公明党へアプローチし、その反応を見ながら、1月20日の政治資金パーティーで爆弾発言を用意した。大阪府市の権力を握り、その権力の行使によって更に注目を集めている状況では、その発言は「独裁発言」よりも重く響くことを計算に入れてである。おそらく、ブレーンの堺屋太一氏、上山信一氏らと周到に協議したうえであろう。
「大阪都構想はゴールではない。いよいよ国を動かしていこうじゃありませんか。今年もう一度勝負をさせてください」と述べ、次期衆院選での候補者擁立に強い意欲を示した。
維新幹部は「この勢いを生かさない手はない。都構想に協力的な公明、みんな、自民の一部と合わせて衆院過半数を確保できるように、維新は200議席を目指す」としており、全国規模での擁立に傾いた模様だ(2012年1月21日03時03分読売新聞)。
一気に、国政も流動化し、既存政党も合従連衡に対してオプションが増え、立場が不安定になってきた(これを“状況化”という)。
このなかで、柔軟に素早く決断していくのが『状況型リーダーシップ』であり、橋下氏は自らの土俵を設定でき、一体改革を巡る状況は複雑化の様相を呈している。
以上