EUノーベル賞の起原は第二次大戦直後、仏独中心に構想された石炭鉄鋼共同体であり、ここで平和の構造の基盤が造られた。これに倣って、東アジアにおける日本の「軽武装・非核・平和憲法」を基にした経済大国化も、アジアにおける手本として、ノーベル賞候補になっても良いのではないかと、10/13、10/16の記事で述べた。
一方、英ファイナンシャルタイムズ(FT)紙は、同様にEUの受賞からアジアへと発想し、眼は未来へ向け、「ノーベル平和賞に相応しいアジアの地域機構を」(10月25日付)と提案した。
FT紙が言うように、アジアは欧州よりもはるかに複雑で、重複した組織は存在するが、EUと同じ役割を果たせる幅広さや奥行きを持った組織はなかった。そこで、その空白を埋めてきたのは、パックス・アメリカーナだった。米海軍のプレゼンスは、多くのアジア諸国が自国の驚異的な経済成長を描くことのできる安定した背景を提供してきた。
これは否定できない事実である。これに筆者の主張を載せれば、「米海軍―経済成長」の先駆けは講和条約―日米安保で構築された日本の姿である。従って、アジア・太平洋地域の石炭鉄鋼共同体に相当するのが、日米同盟ということになる。東西の冷戦下、ヨーロッパではソ連が東欧を支配し米国と対立し、アジアでは朝鮮、ベトナムで熱戦が起こり、中国が米国と対立した。
そのなかで形態、機能はそれぞれ異なるが、共に西側同盟としての役割を果たしたのだ。
FT紙は、日中をアジアの仏独に相当し、東西の異なるブロックに分かれたことをヨーロッパとの違いにしているが、これはアナロジーとしては強引に過ぎる。因みに筆者の考え方でアナロジーがあるとすれば、仏独対露に対して日米対中である。ここで大切なのは、東―東南アジアだけでなく、東―東南アジア・太平洋地域として考えることだ。実はFT紙も同じ考え方だ。豪前首相・ケビン・ラッド氏が「パックス・パシフィカ」と呼ぶアジアの制度を提唱したと述べているからだ。その目的は、地域の不安定化を回避し、米中戦争を防ぐことだ、という。
これには先ず、米国政府が中国の台頭の正当性を認め、中国政府が地域における米国の継続的なプレゼンスを認めることが起点となる。この制度が米中による地域分割にならないように、ASEAN諸国が中心的な役割を担う。重要なのは中国の反応だ。地域の秩序を再構築する構想を支持するか、アメリカによる「封じ込め」だと結論づけるか、別れ道になる。
最後に、触れられていない「日本」を考える。日米安保のもと、経済大国・日本の「軽武装、非核」の姿勢はこれまでと同様に「東ー東南アジア」の今後の発展にも寄与し、他国も認める体制だ。この現状は将来にわたって、東ー東南アジア・太平洋地域における平和の構造の基盤になるはずだ。日本は基本的に“現状維持国”である。中国の軍備増強につられて、日本単独の考え方で自主独立・核武装などに変更することは不安定要因になるだけである。
一方、英ファイナンシャルタイムズ(FT)紙は、同様にEUの受賞からアジアへと発想し、眼は未来へ向け、「ノーベル平和賞に相応しいアジアの地域機構を」(10月25日付)と提案した。
FT紙が言うように、アジアは欧州よりもはるかに複雑で、重複した組織は存在するが、EUと同じ役割を果たせる幅広さや奥行きを持った組織はなかった。そこで、その空白を埋めてきたのは、パックス・アメリカーナだった。米海軍のプレゼンスは、多くのアジア諸国が自国の驚異的な経済成長を描くことのできる安定した背景を提供してきた。
これは否定できない事実である。これに筆者の主張を載せれば、「米海軍―経済成長」の先駆けは講和条約―日米安保で構築された日本の姿である。従って、アジア・太平洋地域の石炭鉄鋼共同体に相当するのが、日米同盟ということになる。東西の冷戦下、ヨーロッパではソ連が東欧を支配し米国と対立し、アジアでは朝鮮、ベトナムで熱戦が起こり、中国が米国と対立した。
そのなかで形態、機能はそれぞれ異なるが、共に西側同盟としての役割を果たしたのだ。
FT紙は、日中をアジアの仏独に相当し、東西の異なるブロックに分かれたことをヨーロッパとの違いにしているが、これはアナロジーとしては強引に過ぎる。因みに筆者の考え方でアナロジーがあるとすれば、仏独対露に対して日米対中である。ここで大切なのは、東―東南アジアだけでなく、東―東南アジア・太平洋地域として考えることだ。実はFT紙も同じ考え方だ。豪前首相・ケビン・ラッド氏が「パックス・パシフィカ」と呼ぶアジアの制度を提唱したと述べているからだ。その目的は、地域の不安定化を回避し、米中戦争を防ぐことだ、という。
これには先ず、米国政府が中国の台頭の正当性を認め、中国政府が地域における米国の継続的なプレゼンスを認めることが起点となる。この制度が米中による地域分割にならないように、ASEAN諸国が中心的な役割を担う。重要なのは中国の反応だ。地域の秩序を再構築する構想を支持するか、アメリカによる「封じ込め」だと結論づけるか、別れ道になる。
最後に、触れられていない「日本」を考える。日米安保のもと、経済大国・日本の「軽武装、非核」の姿勢はこれまでと同様に「東ー東南アジア」の今後の発展にも寄与し、他国も認める体制だ。この現状は将来にわたって、東ー東南アジア・太平洋地域における平和の構造の基盤になるはずだ。日本は基本的に“現状維持国”である。中国の軍備増強につられて、日本単独の考え方で自主独立・核武装などに変更することは不安定要因になるだけである。