散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

野田首相と橋下氏~期待逓減による「脱改革」~

2011年11月19日 | 国内政治
「政治に対する幻想的期待に飽きてきたと感じている」
「アメリカ、EUでの経済危機は先進国に共通した構造的課題」
「“アキラメ”が浸透してきた段階で、野田政権が誕生!」
『大山鳴動してドジョウ一匹(09月03日)』において、書いたことだ。

改革への期待の幻想が逓減していくなかで、政権の弱体化が表面化し、改革とは逆に反動の揺さぶりも可能になったと判断した勢力の揺さぶりが現れた。それが昨今の、農協を中心としたTPP反対勢力の議員に対する攻勢であった。

これに対する国会議員の余りにもなさけない反応がマスメディアを賑わしたのがこの1ヶ月であっただあろうか。しかし、逆に、補助金に寄生する農協の姿を露わにした点で、農業に対する産業としてのイメージは却って地に落ちた感じもする。先進的な農業に取り組んでいる方たちも少なくないことを私たちは肝に銘じておく必要もある。

野田政権が多少の玉虫色表現で、TPPへの参加の階段を上り始めたことは、余りにも「閉鎖的なTPP反対勢力」の露骨な既得権益の主張が際立ったことを改めて明確にし、世評とは逆に、今後の政権運営に基盤を作った感がある。
自民党内の圧倒的なTTP反対の声に押されてか、谷垣総裁はTPP反対を明言したが、小泉Jrはこれを正面から批判した。マスメディアを介した国民に対する影響力は、圧倒的に小泉Jrが大きいことによって、民主党に劣らず、自民党も分裂状態に陥り、支持低迷は決定的の様相をしめしている。

既にマスメディアの話題は、東南アジア諸国連合を発展させ、日本、中国、韓国、インド、豪州、ニュージーランドに米国、ロシアを加えた18ヶ国・東アジア首脳会議に移っている。ここでの議論に比べれば、TPPなどは、ものが小さいはずである。
野田首相はここで、今後の日本の進むべき方向性を表現し、枠組を定めるはずである。中国と米国との間にあって、米国寄りにならながら、中国の力を直接的に感じる東南アジアとの関係を発展させるように動くであろう。それは現実がその方向に進んでいる追認でもあるからだ。

痛みを伴わない民主党マニフェスト「改革」への“アキラメ”を感じると共に、弱体化した政治体制へのTPP反対勢力による「反動」的な攻勢の危険性も察知できたことが、この間の国民的学習と総括できる。
更に、世界の状況変化は加速している。ヨーロッパにおける南欧勢、ギリシャ、イタリア、スペインと続く、経済危機である。具体的に、どのように経済危機は発生するのか、日本として見本を見せられているようなものだ。私たちの意識は、痛みを伴う「改革」の方向へと誘われているように思える。

先の9/3付記事では、「これからは、少しずつ民主党が国民の支持を回復する過程に入るのではないか。自ら没落の種をまかない限りでは。一方、自民党は浮上のきっかけを掴めず、おそらく、ねじれ現象の代償を支払うようになるだろう。公明党の存在感が増大すると共に、である。」と述べた。
民主党の支持が直ぐに回復とは行かないだろうが、少なくとも野田政権は安定基調に入ってきたようだ。一方、自民党は“山岡大臣追及”などに浮身を費やす始末である。相対的に公明党の比重が大きくならざるを得ない。

この中で注目されるのが、大阪での府市ダブル選挙である。
「脱民主党マニフェスト改革」が体感され、納得もされ、放置しておくと、南欧型経済危機の危険性も身近になってきているとの意識の中で、景気よく改革を謳っている橋下氏・大阪維新の会がダブル当選するのか、そこに関心が絞られる。

政治は権力をめぐる争いである。そこでは「強制力」という悪魔と手を結ぶ。橋下氏の権力的人間像は次の記事で述べている。
『権力と人間~橋下・元大阪府知事の人間像~(11月2日)』
当然、それに魅せられている人々も多いことは想像に難くない。

予想する気は起らないが、四つの組合せのなかで、次のケースは興味深い。仮に橋本大阪市長が誕生しても、同じく仮に倉田大阪府知事が誕生すれば、ねじれになる。当然、議論は膠着するだろう。その場合、以下の二点が注目に値する。
1)橋本氏が大阪市を特別自治市として大阪府から独立することに切替わるか。
2)区長の準公選を直ぐに実施するか。
というのも、1)は、大阪府が大阪市を飲み込んでも、大阪市が他の市町村と広域連合を組んでも、住民にとっては、同じことであるからだ。
一方、2)は住民に身近な政府として区レベルが設置されるのか否かは、住民自治にとって重大なことになる。
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TPP騒動での「アメリカ」陰謀説~政治学的解釈~

2011年11月12日 | 政治理論
今回のTPP騒動で象徴的なことは、民主党内で「離党」は話題になったが、野田首相への「退陣」要求の話はなかったようである。結局、TPP反対派が主張したことは、現状維持である。

しかし、ここで、アメリカの「陰謀説」がでたことは反対理由の水準が低いことを示しており、関心をひく。「陰謀説」は政治現象においてしばしば登場する。筆者の記憶の中には、次ぎの話がある。

春闘の恒例で「電車のスト」が行われていた時代、ある駅で、ある程度の通勤客が怒って騒ぎを起こした。このニュースに対して、労組の幹部が「右翼の陰謀ではないか」との見解を述べた。要するに、普通の通勤客が怒っていることを、ストを指揮している労組の頭にはまったくなく、自らの心理を庇うためには、不逞の輩を想定する以外になかったのである。

TTP問題でのアメリカ陰謀説の起源はどこにあるか明確ではないが、例えば、著名な経済学者である宇沢弘文・東京大学名誉教授の次の主張がある。

『農協新聞での提言』
「米国政府は東アジアにおける経済的ヘゲモニーを確保、維持するために、米国の忠実な僕として仕えている日本政府に対してTPPへの参加を強要している。…TPPに参加すれば「日本の農村」は消滅しかねない…」。
ここから「陰謀説」までは直ぐに進む。

『政治的状況認識の心理と論理 ~ 枠組・不協和・疑似論理 再論 2011年08月06日』
において、「陰謀説」に対する永井陽之助氏の政治学的解釈を示している。

そこでは、『現代政治学入門(Ⅱ政治意識)』(有斐閣 1965)から要約として、
「人間は、複雑な現実界を単純なイメージに短絡し、固定観念にあてはめる」
「政治状況は個性的であるため、その固定観念と「ズレ」を生じる」
「人間の認知構造は、極めて狭小な枠組内で外部情報を処理する」
「これによって、絶えず論理的一貫性を保持しようとする」
「その枠内で処理できない外部情報には、心理的「不協和」が生じる」
「そのため、論理的一貫性と心理的平衡を回復させる反応をする」

陰謀説は、失敗、認識の誤りを「実はXの陰謀だった」とする上記の疑似論理である。

その解説として、「新しい事態の発生で、自己の認識が誤りであり、失敗であることが明瞭
となり、「Xの陰謀」というロジックで、自己の「読みの浅さ」と「不明」を正当化するときの用いられる。…しばしな、敵の邪悪なる意図を途方もなく誇大視したり、万能化したりしがちになり、対立する両陣営がイマジネーションを際限なく増幅するのは、よく知られている。」

政治的思考の根源は、鋭く洞察されていると言うべきであろう。  

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権力と人間~橋下・元大阪府知事の人間像~

2011年11月02日 | 政治理論
橋下氏のツイッターはこれでもかと連続的に続く。字数制限は、なんのその、画面の占有も気にしない。内容も自分のこと、そして、他人を攻撃することに主眼がおかれる。

その内容に膨らみは感じられない。そこから出てくる人間像は、自己主張を強く打ち出し、追随者を引っ張っていくリーダーシップである。それが嵩じると自己劇化になる。強制力という悪魔と不可避的に手を結ぶ政治の世界では、権力を志向し、スケープゴートを作り出して敵味方を明確にしていく手法が得意だろう。

「権力と人間」の著者であるハロルド・ラスウェルは、ライフヒストリー(生活記録)の手法で権力を追求する人間の形成過程を跡づけた。それは幼少期に受けた傷(価値剥奪)の補完(補償)ということだ。

週刊誌に書かれている内容は特に理解していないが、橋下氏の独裁発言に通じる何かを暗示しているかもしれない。

    
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