散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

トランプ現象は克服可能か~『アメリカン・コミュニティ』渡辺靖著

2016年07月24日 | 先進諸国
いわゆるポピュリズムを克服する一つの道は、迂遠であっても「孤独な群衆」がコミュニティの一員として各自の社会的存在感を回復させることにある。ここでコミュニティとは、自発的な参加者が広く社会への働きかけを行っている組織としておこう。トランプ現象だけが目立つ米国に注目する所以である。

表題の主題は筆者の問題意識である…。
一方、本は2013年再刊(新潮社選書)であるが、初出は2005-2007年に同社の『考える人』に連載された「カウンターアメリカ」であり、それを下敷きにしている。従って、時期は約20年前だ。しかし、米国人の生活意識の一端を知り、合わせて紹介されている活動の意義、課題、ひいては位置づけを知ることができる。即ち、著者の学識と広い視野がコラボし、深い知見が展開されている。

更に、再刊に際し、序文『アメリカを見つめて』が書き下ろされる。それが、九つのコミュニティを紹介した後の総括には、終章『アメリカとコミュニティ~国家と個人が交差する場所』に対し、近年の状況を含めた感想が述べられる。

連載の表題は、謂わば、それぞれが「もう一つのアメリカ」であることを示すものだ。そこで、序文にはカウンターディスコース(対抗言説)の最たるものとして2008年、黒人初の大統領・オバマが挙げられるのは当然だ。

更に、オバマのアメリカへの対抗言説として、草の根保守の「ティーパーティ」と「ウォール街を占領せよ」運動を挙げる。ここからトランプ現象及びサンダース現象までは次の一歩である。従って、渡辺氏の描写と論議の中には、筆者の問題意識に何か示唆を与える洞察が含まれているはずだと感じた。

戻って、九つのコミュニティの中で筆者が関心を引いた事項を紹介する。
「アメリカン・サモア/南太平洋」を除いて白人が主体となり、特に
「セレブレーション/フロリダ州オーランド~ディズニーが創った町」、
「ゲーティッド・コミュニティ/カルフォルニア州コト・デ・カサ~資本・恐怖・コミュニティの二つは、
富裕層中心の自治体みたいな構成である。続いて、

「ミドルタウン/インディアナ州マンシー~最も典型的な「アメリカ」」、
「ビッグスカイ・カントリー/モンタナ州~連帯する農牧業」の二つは、
古き良きアメリカを未だ軸にして生活が営まれている感が強い。対して、

「ダドリー・ストリート/マサチューセッツ州サウス・ボストン」は、
南部から北部へ移動した黒人が住み、中産階級の白人は郊外へ移動し、下層のアイルランド系中心の白人が残り、更に、南米及びアフリカからの移民が流入し、典型的な都市問題を抱える地域、それを再生したコミュニティの話だ。

白人人口が95%(1950年)から、75%(1970年)を経て、7%(1990年)と激変し、自宅での二つは、英語以外の言語を使う家庭が40%(2000年)にのぼる。NPO組織を立ち上げて住民自治を築き上げた経緯は、日本では出来ないことと感じる。

「刑務所の町/テキサス州ハンツビル~アメリカにおける死の首都」は、その背景及び現実の風景が暗く描かれるのもいたしかたない。米国人口は、白人70%、黒人13%であるが、刑務所内の収監者の50%は黒人、全体の70%が非白人だ。著者は「そこにアメリカはあるのか」との自問となる。

以上の四つのコミュニティでは、今日に至って、最初の二つと後の二つとでは、その数及び質において、更に差が広がっているように思える。
草の根民主主義の米国で、根なし草の人口が多くなり、その人たちのある部分がコミュニティならぬネット中心の疑似コミュニティを構成し、不安を掻き立て、怒りを発散させる断片的で、かつ断定的な情報に頼って自らの考え方を決め、それを互いに拡散・伝搬することで、トランプ現象も生成されるのだろうか。

「メガチャーチ/アリゾナ州サプライズ~「クールな教会」宗教右派の草の根」は、共和党右派の牙城といわれるところだ。ショッピングセンターあるいはイべント広場のような雰囲気でカジュアルな対応をする教会を描く。ターゲットを定めたマーケティング活動を行っている様子が興味深い。これも、世俗を離れた宗教心が基盤にあるからだろうか。

2011年での米国人口は、白人78.1%、黒人13.1%、その他8.8%。都市の中で下層階級が住む地域はコミュニティが欠如しがちだ。白人警官と黒人が対峙する状況は、50年前から報道され、最近は極めて悲惨な事件になっている。
ディズニーの町、ゲート付き集合住宅による自己中心主義をエリート集団が超えない限りは、トランプ現象は形を変えて、拡散しながら現れ、米国社会は常に不安定性に悩まされる様に思われる。

      

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消費増税先送り後、4つの経済シナリオ~公的債務圧縮への道

2016年07月15日 | 経済
参院選挙が終り、大方の予想通り、自公政権が更に安定化した。消費増税19年10月までの先送りの下、財政出動の段階だ。そこで、今後の経済政策の行方を既に予測した河野龍太郎氏の表題の論考を紹介する。(「 」は筆者のコメント)

<現状認識~遠のく緩和の出口、20年春まで引き締めは不可能>
・安倍政権は既に大規模財政に舵を切った
・日銀のインフレターゲット政策は既にソフト化へ移行済
・株価の下落を回避、円高には政治的に金融緩和へ(マイナス金利の深堀り)
「株価嵩上げは安倍政権の一枚看板になり、後の政策はバラマキに収束…」

<ゼロインフレ下、マイナス金利による金融抑圧を継続>
・公的債務に対して、税収増加、歳出削減による債務返済財源を確保が必要
・黒田金融緩和以降は、中央銀行のファイナンスを必要とする政策が不可避
・これまで、4つの中長期シナリオを想定
S1)ゼロインフレ、スローな金融抑圧(生起確率39%)
S2)4-5%インフレ、モデレートな金融抑圧(生起確率35%)
S3)10%インフレ、激しい金融抑圧(生起確率25%)
S4)2%インフレ、2%成長、金融抑圧(生起確率1%)

S1)~メインシナリオ(昨夏・年初の国際金融市場の混乱以降)
・中国人民元切り下げ、米国経済減速等グローバル環境がデフレ的
 →円高傾向、当面はインフレ上昇回避、インフレタックス=公的債務圧縮は進まない
 →マイナス金利政策による金融抑圧が継続

S2)~最終的シナリオ(公的債務圧縮はインフレタックス政策へ向かう)
・市場がインフレタックス政策への移行を読み取り、インフレ期待がジャンプ!
 →日銀は物価安定と長期金利安定の二律背反(財政破綻回避、後者選択)
 →マイナス金利政策、長期国債大量購入政策を継続
 →円安進展、現実のインフレも徐々に加速=公的債務圧縮が進む
・グローバル経済が下降局面へ、各国とも金融緩和に踏み切る
 →シナリオ2の実現は先送り、シナリオ1が先行
 (米国・中国が底堅い景気拡大~確率は高くない)
 (米国経済が堅調な拡大=FRBが利上げ→シナリオ2が徐々に実現)

「シナリオ1及び2の順位を変えたことは、河野氏の現実洞察と冷静な判断力を示すものだ。これは、現実の複雑さを再考して自らの理論仮説を修正したもので、将来を予測するかめには必須の資質なのだ。しかし、多くの学者、批評家、評論家に欠けているものだ!(以前のシナリオは下記の記事を参照)」
 『岐路に立つ日本経済~財政規律を喪失した日銀141123』

S3)~破綻シナリオ(インフレ加速、円安とのスパイラル)
・政府は安易にインフレに頼り、財政再建の努力は失われる
 →二桁インフレへと加速
・資源配分を歪め一段と成長率が低下
 →資金は海外と不動産にシフト、株価は低迷
 →高率インフレが成長阻害=最終的に財政調整を人々は選択
S4)~生起確率は事実上ゼロ
・消費増税先送り=アベノミクスが全く機能せず

<英国:高インフレ/金融抑圧から財政調整を選択>
・英国 第2次世界大戦直後の公的債務260%(GDP比)
・「S2→S3→財政調整」の道を進む
 1940年代後半~60年代前半 4-5%インフレ→公的債務圧縮
 1960年代後半~二桁インフレへ
 1979年~サッチャー首相:財政調整開始

<日本:第二次大戦後の英国と同じ経路?>
 *当時は固定レート制→英国の経験が早回しで観察か
・シナリオ3は時間の問題?
 *多くの国が大規模な公的債務を抱え、低成長の状態
  →日本での円安/インフレスパイラルの可能性が低下
  →シナリオ3は避けられ、シナリオ2に止まる
  →世界的なディスインフレ傾向、シナリオ1が長引く
 *マイナス金利政策:ゼロインフレ、デフレと親和的な政策
  →公的債務圧縮:マイナス金利の深堀り=適用範囲が一般預金へ

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新自由主義時代の終焉、英EU離脱~トランプ現象も含めた経済的視点

2016年07月13日 | 先進諸国
経済的亭受が期待を生み、それが実現しないことによって、失望に変わったときが、政治危機(政治暴力の発生)になる。これをJ曲線理論と呼んでいるが、永井陽之助は「現代社会と政治暴力」(『柔構造社会と暴力』所収)において、更に、“情報空間の拡大”、“新しいユースカルチュアの登場”を視野に入れて、当時(1968年前後)の政治状況を分析している。

日本のおける金融関係の実務家は英国の政治現象を如何に見ているのか?これまで何度か取り上げた河野氏の論説を今回は紹介する(ロイター コラム 2016/07/06)。
以下のまとめを理解するうえで、上記の文献が役に立つと思われる。

『筆者(河野氏)が最も衝撃を受けたのは、1980年前後からグローバリゼーションの恩恵を享受していた英国において、離脱派が過半数を獲得したこと…同様のことは米国にも当てはまる』。従って、『英国、米国などを中心に広がった新自由主義的政策が曲がり角を迎えた可能性がある』との問題意識だ。

<サッチャー・レーガンの新自由主義時代1980~>
・2000年代はグローバリゼーション時代の絶頂期
・各国とも「大いなる安定(Great Moderation)」、マクロ経済は好調
・一方、生産拠点の新興国への移転継続、先進国は製造現場を喪失
・稼ぎ頭:金融、IT、新興国関連→陳腐なスキルはジリ貧
・低所得者層に落ちた人々:実質所得の継続的増加は困難
・ブッシュ政権(父):「アメリカンドリーム」実現=持家推進政策
・サブプライムローン問題→“バブル破裂”へ

 <低成長時代へ>
 ・金融システム崩落回避:米英、金融機関へ資本注入=金融緩和
 ・危機の基本的原因―収益性の高い投資機会減少、潜在成長率低下
 ・中央銀行:現象の囚人(バブル崩壊で低成長)→インフレ醸成で成長率高
 ・量的緩和(QE)時代到来 通貨安/株高、潜在成長率低=実質賃金回復緩慢
 ・原油高・通貨安→輸入物価上昇→実質賃金改善遅延
 ・株価上昇、富裕層・大企業だけ恩恵→苛立つ多くの国民
  (賃金低迷の主因:潜在成長率低下、労働分配率低下)

<経済統合の論理と実際>
・分業/自由貿易の利益 国全体の経済厚生改善
・実質所得増加―安価な財・サービスを購入可能
・配分の分極化「享受―高いスキル」、「被害―低いスキル」
・全体のパイ増加=国内の分配構造が分極化
・主流派経済学~分配問題には触れないでトリクルダウン理論を発案
 →自由貿易推進(GDP水準高)→ランプサム(一括)型の所得再分配政策
  (現実には、ランプサム型の所得移転は実行が難しい)
・サッチャー・レーガン革命 資源配分 小政府、民営化、規制撤廃、自由貿易
          所得分配 稼ぐ人が更に働く 最高税率引下げ

<ポピュリズム政治としての英国民投票>
・残留支持  :年齢―若者 、階層―中高所得者層
・EU離脱支持:年齢―中高年、階層―低所得者層
 *低所得者層=低い人的資本、経済統合・移民流入で更に収入目減り
・米国:トランプ現象…保護主義的、排外的、反グローバリゼーション的
 英国:ブレア、第3の道…社会政策充実の修正
    →トランプ現象と似ている

<「ヘリマネ」の危険性>
・ばら撒き政治:常習性が強く、抜け出すことは難しい
  →ポピュリズム政治に取り込まれる可能性高い

筆者コメント
「冒頭の政治暴力理論に戻る。
J曲線理論に永井が追加修正した二つの事象の中で、“新しいユースカルチュアの台頭”とは、学生運動・大学紛争の関連であり、“情報空間の拡大”とは、暴力行為をメディアに晒す露出の政治といわれる手法である。」

「トランプ現象に関して、後者は更にSNS等に拡大が進んでおり、顕著になっている。一方、若者はその現象の主体ではないようだが、サンダース現象において、ウォール街占拠運動の主体が雪崩れ込んでいるかのようである。」

「従って、永井が指摘したことは、今の時代からみても息の長い、重要な事項に感じる。現代的視野からの考察が必要となる所以である。」

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英国ショック、歴史的循環の始まり~E・トッド・歴史人口学

2016年07月05日 | 国際政治
政治学的視点から「政策の循環」が途絶えたと見るブレマーに対して、更に歴史的視点から大きな流れを読み取るドットへのインタビュー記事(日経7/3朝刊)。その発想はトインビーに似た循環的歴史観である。(「 」内は筆者のコメント)
 『英EU離脱、国民の支配層への拒絶~イアン・ブレマー160702』

質問 英国のEU離脱の意味は?
・歴史的な循環が始まる転換点
・前回の循環は1980年代、サッチャー、レーガンの新自由主義が出現した頃
・グローバル化により国家、社会の境界を超える夢が語られた
・米国ではトランプが保護主義を打出し、移民問題を普遍化、循環は終わった

「“夢”ではなく、天上の問題・グローバル化が地上に降りたのが混乱を導いた!」

質問 離脱の背景をどう分析するか
・離脱賛成が多数なのは、英国民主主義の力強さ、しかし、解釈は難しい
・1)権力をEUから取り戻す、2)移民問題の次元が変わった
・先進国主導の政策勧告、新自由主義は移民流入を増やし、自国を不安定化
・英国が移民を止め、管理するのは当然、地域の安全を守る権利は必要
・英国は格差が最も広がり、新自由主義が最も蔓延
・離脱に投票した社会階層は中間層の下位グループ、年齢層の高い人々
・しかし、英、仏でグローバル化の痛みを受けているのは若者

「新自由主義により不安定化した客体が民主主義の力強さを示す?議論が混乱!」

質問 英離脱後のEUはどうなるか
・EU崩壊のプロセスが始まった
・英国中心の緩やかな連合とドイツを頂点とする体系に分かれる
・問題は政治エリートが経済主義の影響で短期的に何かを決めること

質問 ドイツの危うさは何か
・リスクはドイツ人の精神的な不安定さ
・メルケル首相は合理的なバランスを重視する態度で経済政策を進める
・一方、難民問題でドイツは、大陸欧州の不安定の要因となる

質問 英国は今後、どうなるか。
・英国の影響が及ぶ米、加、豪は、人口では欧州よりも大きい
・英国がリーダーとして頭角を現す
・ロンドンは欧州の金融の首都であり、破壊的反応はお互いにとって脅威

質問 米国の状況をどうみるか
・米国の中間層に強い痛みを受けるが、米支配層が状況を把握できない
・本当の謎はなぜ支配層の目に現実が映らなくなったか
・エリートの孤立によるもの
・米国ではマイノリティの人口の増加で問題が複雑
・民主党にマイノリティの支持が集まり、白人は徐々に共和党に投票
・有権者がトランプ氏を選ぶのは合理的

「“支配層の目に現実が映らない”ことを本当の謎という指摘は鋭い」

質問 2017年仏大統領選、極右政党・国民戦線マリーヌ・ルペン氏は当選?
・次の選挙では難しい、仏中間層はグローバル化の影響を受けていない
・収入の水準は変わらず、富の分配は最も裕福な1%を除いてほぼ平等
・フランスで重要なのは教育の分野で国家を利用できること
・仏中間層は子どもをつくることによる経済的な不安を感じないこと

質問 ロシアや中国などが世界を不安定にするか?
・EUの断裂は西側世界の断裂、冷戦の本当の終わりだ
・世界を不安定にするのはドイツと中国
・西側世界の内部で対立が激しくなり、ロシアとの対立は二次的になる
・ロシアは権威主義的な民主国家、国土に対して十分な人口を持たない
・ロシアの最も重要な計画は生き残り、国土や天然資源を守ること
・中国は民主国家ではなく、安定でもない、しかし、攻撃的な姿勢
・世界の安定に寄与するのはロシア、米英、日本

「世界は米英の海洋国家、独仏の大陸欧州、中国の勢力争いとの見方は新鮮な見解だ。この中で、ロシアと日本が挟撃されるのか?
「議論が混乱する部分もあるが、歴史的視野を大胆に将来へ投射する思考は、新鮮な見解を生む源泉と思われる」


 
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英国EU離脱、国民の支配層への拒絶~イアン・ブレマーを手懸りに

2016年07月02日 | 国際政治
タイミング良く、日経が国際政治学・イアン・ブレマーのインタビュー記事を載せている(7/2朝刊)。離脱の基本的な手続きを見ながら世界的な背景と今後の進展、影響をブレマーに沿って理解してみる(「 」内は筆者のコメント)。
   
 リスボン条約第50条(日経6/29)

質問 欧州問題を今年のトップリスクに予想した理由
・EU離脱を問う英国民投票は事前予想が拮抗、大きなリスク。
・テロ、ギリシャ危機、難民問題、大衆迎合主義の台頭等、明らかに不安定
・背景は、移民、主権問題以上に、下記のことが大
・国から大切に扱われず<社会契約>が途絶えたと感じる人々の抗議
・結果として、EUへの拒絶と同時に、支配階級層に対する拒絶も意味

「権力と社会における政策の循環が途絶え、権威的決定ができない状態」

質問 EUに対する懐疑的な見方が他のEU加盟国にも広がるか
・シェンゲン協定、単一通貨を強化する国と、それ以外の国とに分断は広がる
・共通の価値観で、難民、中間層空洞化を解決する力はリーダーに乏しい
・超国家的アイデンティティを持つというEUの野心的な実験は失敗に終わる

「少なくともEUには悲観的である。理念は立派だが、現実の動きについていくには、力が及ばないということか。国家レベルに戻ると巧くいく?」

質問 米国でのポピュリズムの台頭はどうか
・米国は多文化・多民族な国家、大統領選への影響は小さい
・米国の課題はトランプあるいはクリントンの選択
・米国でも支配階級層と国民層との対立は強まっている

「やや楽観的、米国には余裕があるとみているのか」

質問 欧米以外の大国への政治的、経済的な影響
・英国EU離脱での勝者はロシア、EU弱体化でウクライナ問題が緩和
・個別の国々とエネルギー、防衛の関係を築き易くなる
・中国は貿易や安全保障で悪影響を被る
・世界の秩序が乱れるため、英国のEU離脱を歓迎していない
・中国の持続的な経済成長には、強い米国と強い欧州が必要不可欠

「ロシア対EU、中国対日本の政治・経済・軍事的な対立が深まる可能性も」
「米国の政治情勢の行方と政策の方向が大きなポイント」
「クリントンの圧勝を期待したい処」→当面の結論

質問 世界のパワーバランスは変わるか
・同時テロ、金融危機を経て米国が世界を引っ張る構図が弱まる
・世界はリーダー役を欠く『Gゼロ』の状態
・グローバル化の影響に対する人々の怒りをおさめる指導者は不在
・一段と不安定な状況になる

「ハンナ・アーレントが50年前に、その『暴力論』(みすず書房)において、現代の管理社会を<ruled by nobody>と呼んだ。
金融・経済のグローバル化、巨大な官僚機構の増殖、更にEU機構あるいは国連機構も各国の官僚機構に屋上屋を重ねているようなものだ。
その中で権力者・指導者たちも巨大な“情報の壁”によって現実世界から疎外されているようだ」

      
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