散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

経済成長の過程と帰結、社会変動の視点~「高度成長」吉川洋

2014年05月29日 | 経済
『柔構造社会における学生の反逆』(「柔構造社会と暴力」(1971)所収)を分析しながら、「永井陽之助の現代政治社会論」を「成長から“成熟”への軌跡」と題してこれまで5回に亘って記事にしてきた。1回目は主題と副題に両方を並べて書き、2回目以降は、二つのタイトルのうち、どちらか一方を副題にしている。

その中では、経済成長による社会変動の結果として、「柔構造社会」「存在証明を与えない社会」「引きのばされた青春」が社会構造として顕れた。また、E・H・エリクソンの自我心理学の概念、「ライフサイクル」「アイデンティティ」「モラトリアム」がその社会構造に起因するキーワードとして登場した。

では、経済成長の経済社会的な過程と帰結はどうなのか?
それに対する経済学者からの代表的な答が吉川洋「高度成長―日本を変えた六000日」(1967読売新聞社)だ。最近、中公文庫から再度出版(2012年)され、廉価で購入可能になった。

筆者は本を読むとき、先ずは腰帯、カバーから始めて、目次、あとがき、解説、文献等の周辺部分をサッと読み、ある程度、本の内容についてイメージを造る。本書は、巻末に歴史書必須の年表を、それも詳しく書いている。また、文献も豊富に紹介しており、この時代の基本文献となる資格は十分だ。

この本の「おわりに」は、副題「経済成長とは何だろうか」が、更に文庫版では「あとがき」として「経済成長とは何だろうか再論」が付けられている。この再論が全体のトーンを表していて面白い。

そこで吉川は当時、経済企画庁で活躍したエコノミスト・金森久雄氏による書評を取り上げる。ポジティヴな評価をもらったと云いながら、最後に書かれた金森の次の言葉にこだわりを見せる。

「この本のエピローグは「経済成長とは何だろう」という題で、自然破壊や心の変化などを挙げ、私たちにこの高度成長がもたらした変化を「進歩」だと自信をもって言い切れるだろうか、という疑問で結んでいる。もちろん、大進歩に決まっている。これほどいい本を書いた著者が、エフェミネイトな感傷で本書を締めくくったのは、やや残念だ」(エコノミスト1997年1月号P98)。

学生時代の雑談のときだったと思うが、経済学者・エコノミストの中で誰を一番信頼するか、という話になって、永井陽之助は「僕は金森久雄、なんと言っても、予測が当たるから」と答えた。
永井にとって、理論仮説とそこから導き出す予測の当否は学者を判断する重要なポイントだった。これは「多極世界の構造」で述べられている。

戻って、吉川(1951年生まれ)は少年時代を振り返って、「毎日体いっぱい「大進歩」を感じとっていた」と文庫本・あとがきで述べる。しかし、この本を書いた四十年代後半のときは、「経済成長に対してアンビヴァレントな感情を持つようになっていた」とも言って、金森に答える。

筆者(1948年生まれ)も前半は吉川と同感だ。しかし、後半は吉川に対してアンビヴァレントな感情を持つ。経済成長から派生してきた現象は多くの問題を新たに提起しているが、それは新たな課題として考える以外にないからだ。

      


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石原慎太郎は橋下徹と袂を分かつ~振り出しに戻る維新の会

2014年05月28日 | 国内政治
昨年の正月から5月にかけて、日本維新の会の政治的役割に関して、その位置づけと方向性についての考え方を十回以上にわたって記事にした。その骨子は、維新の会とみんなの党の合同であり、石原氏及び渡辺氏を外して、橋下―江田体制を敷き、憲法問題を棚上げにして野党色鮮明にすることであった。

しかし、そこに含まれていた提案は、5月半ばにおける橋下代表の慰安婦問題発言をきっかけに、野党全体に混乱が広がり、結局、方向性などはまるで亡くなってしまったかのようになった。

一方、報道にあるように、維新の会内部は、石原氏が分党して橋下氏と袂を分かつことにより、「橋下維新の会」と「江田結いの党」との統一の可能性が大きくなり、再度、野党再編の芽が出てくる状況になってきた。即ち、1年半後に、当初考えていたことと大きく異なった形ではあるが、基本形としては、同じ形が出来そうな運びになってきた。

そこで、1年半前の考えを改めて辿り、今後の政治状況の行方とあるべき姿を考えてみたい。
先ず年頭で第三極を支持する「無党派=浮動層」の問題を提起し、キャスチングボードを持つ層が主体的浮動票になることが大切であることを述べた。
 『主体的浮動票の重要性~投票行動の変化から見出すもの20130104』

続いて、改革を求めるこの9年間の選挙をまとめ、第三極勢力の統合を論じ、次のような提案を記事にした。ここでは、代表・橋下徹―幹事長・江田憲司を提起している。

今後の方向(案)
1)第三極を複数「限定政党」から「単一全国政党」へ
  →「維新の会」と「みんなの党」との併合
2)橋下代表代行は大阪市長辞任・参院選出馬(国民へのPRー最大の意思表示)
3)指導体制の整備ー実質的な再編成
代表・橋下徹 幹事長・江田憲司
  (名誉代表・石原慎太郎 代表代行・渡辺喜美)
4)政策の統合・具体化
5)統一地方選を目指した地方組織構築(住民自治を基盤に地方自治の課題提起)
  ・今年の名古屋・横浜・川崎各政令市長選挙から統一地方選挙へ
 『国民的視点からみた「日本維新の会」の位置20130113』
 
更に、江田幹事長(みんなの党)の憲法観を紹介し、常識的な実務家の考え方に沿っていることを述べ、サイレントマジョリティの立場を代弁する発言であることを指摘した。
 『維新の会綱領を否定、江田幹事長の憲法観2013/04/03』

最後に、橋下が石原に、フロイドの云う意味での「父親」を見ていると解釈し、今、必要なことは「父親殺し」であると指摘した。
 『橋下徹は「父親=石原慎太郎」殺しをできるか20130517』

さて、今回の石原の分党は、石原の正面からの「父親殺し」なのか、その経緯によっても野党の政局は変わると思われる。


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「引きのばされた青春」と「モラトリアム」~成長から“成熟”への軌跡(5)

2014年05月26日 | 永井陽之助
昨日の記事で永井陽之助の「柔構造社会」との発想のトリガーとなったシンポジウム(中央公論1968年7月号)での発言内容を分析した。実はその中で、永井は更に「青春の消滅」を指摘している。しかし、その直ぐ後の論文『柔構造社会における学生の反逆』(同上11月号)で「引き延ばされた青春」とも述べている。
 『柔構造社会、霞ヶ関ビルからの発想20140525』

ここで注視したいのは、言葉上「消滅」と「引き延ばされた」は全く異なる概念だということだ。しかし、使った永井はいざ知らず、それを読んだ(聴いた)人たちは、先ず、前の発言の詳細は忘れて、何も気にならなかったであろう。

敏感にも気が付いた人たちは、それでも青春期が構造的に変化したことに納得し、「消滅」を更に的確にしたのが「引き延ばされた」との表現だと受け止めたのだろう。これは筆者の推量であるが…。

シンポジウムでの発言は、
「これは私の仮説ですが、社会化の過程―子供から大人になる過程―が、柔構造社会になると構造的な変化を遂げている。その変化とは“青春の消滅”です」

一方、論文では、
「現代社会では、青春期は、肉体的成熟と共に早くからはじまり、遅くまで続く。この“引き延ばされた青春”こそは、現代の柔構造社会の“社会化”の大きな特徴である」。

消滅とは言葉のあやで、存在感が希薄になりながらもズルズルと長く続く、ということだ。確かに“引き延ばされた青春”とは言い得て妙だと感じる。また、この言葉は、エリック・エリクソンの「モラトリアム」という言葉とも響き合う。

この言葉は当初、「猶予期間」とよばれていたが、結局、アイデンティティ、ライフサイクルと同じで原語の「モラトリアム」で通っている。1970年の頃、使われ始め、その後も小此木啓吾の「モラトリアム人間」以降、社会現象のキーワードの一つとして登場する様になった。これは、その当時が現在につながる時代の入口であったことを象徴している。

当時の東大紛争は医学部の問題から始まったが、医学部こそはインターン制度に示されるように、当時の大学での徒弟制度を引きずる学部だったのだ。それは、つい最近のSTAP細胞事件から明らかにされたポスドク問題につながる。博士課程を卒業しても企業からは煙たがられ、研究員としてもオーバーフローしている現状で、30代になっても、腰を落着けて仕事をする環境に入れない。これこそが現代版の引き延ばされた青春を顕している。

永井は論文で次のようにまとめる。
「かつて一時代前の世代間闘争が、“青春期”という明確な、人生の“結び目”で戦われる価値の決闘(短期決戦)であったとすれば、世代間闘争のゲリラ化は、現代社会における“引き延ばされた青春”の悲劇を物語っている。それは、長すぎた春であり、老いやすい青春の反映なのだ」。

それにしても、当時の若者は高齢者になり、巨大な人口の圧力で老いを満喫する年金・医療などの社会福祉制度を構築しながら、未来社会を搾取する債権国家を作りあげた。一方、若者世代はその世代のコントロールに従い、「ゲリラ戦」も出来ずに、個別の「パラサイト」に生き方を見出しているかのように見える。

     
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柔構造社会、霞ヶ関ビルからの発想、~永井陽之助の現代政治社会論(4)

2014年05月25日 | 永井陽之助
シンポジウム「“学生の反逆”と現代社会の構造変化」(中央公論1968年7月号)において、永井は先進諸国を“柔構造社会”と命名し、それらの国々での学生運動を、東欧、後進地域の場合と区別して、理由なき反抗とよんだ。

その由来を次の様に云う。
「このシンポジウムに出席するために、車で迎えに来てくれた粕谷編集長と、車中でこれから話し合う内容を打ち合わせていた。…現代学生の鬱積した精神状況と現代社会との関連をピタリと表現する概念がつかめず、イライラしていた。」

「何気なく、拘束道路をとばす車窓から前方を見ると、当時、新装なったばかりの、霞ヶ関ビルの36階がくっきりと浮かんでいた。“柔構造”社会という語を思いついたのはそのときである」(「柔構造社会と暴力」『あとがき』(中央公論社1971)

何か、出来過ぎた話のようで、粕谷編集長と他に会話があったような気もするが、一方で、「永井の発想の起点」を顕す手がかりを与える挿話でもある。現代的な新事象の混沌とした状況に対して、一つの概念を与えるべく、思考の中から生み出す努力の過程を示していると云えようか。

ひとまず、「理由なき反抗」とよんだものの、その背後には鬱積した精神状況があることを理解し、それでも自らが「理由なき反抗」と感じたことを一つの手掛かりとして、自らの社会認識の枠組を修正しつつ、浮き上がらしているのだ。

そこで「この語を思いつくと今までバラバラだった想念が、次第に明確な形をとってまとまるように思えた」と述べている。シンポジウムでは、「欧米日先進国対東欧・後進国」、「柔構造社会対剛構造社会」、「理由なき反抗対理由ある反抗」と対比的に並べている。

そこからシンポジウムでは、H・マルクーゼの「寛容的抑圧」を想起させながら、
「制度や階級の硬さを持つ時代には、反体制運動、抵抗運動、といった地震がくると、ひっくり返ってしまうような社会構造であったのが、現代の先進資本主義は、抵抗や反抗を見事に吸収できるような構造の社会になっていて、反体制政党をつくって抵抗することは痛くもかゆくもない一種の管理社会になっている」

「のれんに腕押しのような、なんとも言い様のない、やりきれない不満が学生運動に集中的に表れてくる」と指摘する。現代学生の鬱積した精神状況が管理社会に対するやりきれない不満として学生運動に表現されるとの認識に到達している。

永井がかれこれ50年前に考えた剛構造社会対柔構造社会との概念は、基本的に現代においても当てはまる。冷戦時代は、ハンガリー、チェコの反体制運動はソ連によって押さえつけられたが、ソ連崩壊後のオレンジ革命などのカラー革命は、問題を含むにせよ、成功したと云える。また、イスラム・アラブ諸国の革命も戦乱を招く事態も含めて剛構造社会の現象だ。

一方、日本も含めて先進諸国ではハイジャック、都市ゲリラ等の暴力革命集団を抑え込んだ後は、「沈黙の春」の中で、民主的手続による政権交替が志向されている。日本は民主党が輿望を担って登場したが、あえなく潰れてしまい、その後遺症が深く私たちの政治意識の中に潜んでしまった様だ。

しかし、政治的表面での安定性に係わらず、社会の解体現象は進んでいるかの様である。それは社会構造の変化と共に、人びとの意識も大きく変わっていったことによるものだ。次は今回述べた社会構造変化のなかでのライフサイクルを考えてみたい。

      
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賃上げは悪性インフラに追いつかない~一年後のアベノミクス(2)

2014年05月24日 | 経済
2014年3月における「雇用者」及び「賃金」の調査結果が公表された。
先ず、雇用者については、
正規の職員・従業員 :3223万人(前年同月から 58万人減)
非正規の職員・従業員:1970万人(前年同月から100万人増)、集計を開始した2002年3月から最大の増加を示す(労働力調査)。

失業者が減って、雇用者が増加したが、その内訳は、非正規の職員・従業員が主である。そのなかでも、パート・アルバイトが65万人の増加で圧倒的に多く、全体の雇用増42万人をも凌ぐ多さだ。

次に、事業所規模5人以上での月間現金給与額の確報(毎月勤労統計)は、
調査した産業の合計 276,688円(前年比0.7%増)
製造業       319,383円(前年比2.7%増)
卸売・小売業    250,114円(前年比1.2%増)
医療・福祉業    252,351円(前年比0.7%減)

全体を通して前年比0.7%増だが、賃金増加を実感するものではない。既に電気代値上げ、エネルギー原料の高騰などによって、悪性インフレ化しているが、更に消費税3%の増加だけでなく、円安下で値上げを抑えていた諸製品の値上げ、あるいは量を少なくするなどの実質値上げも伴っている。

マスメディアが取り上げる賃上げは、大企業、それも輸出好調企業だ。
その代表たるトヨタは昨年の中間決算で、最終的な純利益が前年同期比80%増の1兆6億円となり、中間期として初めて1兆円を超えた。「アベノミクス」による円安の追い風に乗って、リーマン・ショック前の水準を上回った。

しかし、雇用者全体から見れば、大企業は少数である。
事業所規模30人以上では、調査した産業の合計は、310,777円(前年比1.3%増)となり、大企業と中小企業との格差が広がっていることは明瞭だ。

また、業巣によっても明暗が分かれる。
製造業は、他の業種と比較して高い賃金を得ている代表的業種だ。そこで、前年比2.7%増である。その一方で、離職者が多いと云われている医療・福祉では、前年比0.7%減になっている。業種によってコントラストが付く。

異次元金融緩和による円安株高は富裕層を潤し、また、輸出型大企業に莫大な利益をもたらし、日本社会における格差を拡大した。これが一年後のアノミクスを一言で評価する言葉だが、必ずしも安倍政権だけの責任ではない。

経団連に代表される財界は、主体的に経済状況を変えようとする行動を起こさなかった。昨今の法人税問題では、下げろ、下げろの圧力団体的騒ぎを起こすだけなのだ。日本にとって、この状態のほうが、病根の深さを示している。

      


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「女子サッカー」を超えたなでしこ~男女の区別の無い少年サッカー指導

2014年05月22日 | スポーツ
日本は中国に2-1で勝って決勝戦へ進んだ(女子アジア杯)。マンション総会を終わって、やや遅い晩飯を食べながら、テレビを付けてチャンネルを移していくと、後半戦が始まる前だった。

偶々、メンバー表が出ていて、川崎市出身の宇津木瑠美選手(25)=モンペリエ=が左バックとして出場していた。怪我で日本代表から外れていたので、今回選ばれていることが判らなかったのだ。良かったという思いで、そのプレーが気になって最後まで見た。

これまで、なでしこの対外試合は、熱心ではないが、時々見ていた。それは、なでしこというより他国のサッカーが面白く無かったことによる。佐々木監督にもと、なでしこは将に、「女子サッカー」から脱皮して「サッカー」になったのだ。言い換えれば、サッカーの質において男女の区別はなくしたのだ。

 

 後半6分、左CKから先制のヘディングシュートを決める澤(右=共同)
 2014年5月22日 スポーツ報知

長髪を束ねた澤選手の1点目、中国選手はふたりとも短髪で男の選手とも見られる姿だ。これを見ると中国においては男女の区別は無く、日本は女子を区別する風習がサッカーにも反映しているのだと考えるかも知れない。

しかし、間違ってはいけない。逆なのだ。
中国は「女子サッカー」をやっているから、トップチームの選手は男子の様な姿をしている選手がおり、日本は男女の区別のないサッカーをやっているから、澤、宇津木、他にもいたと思うが、長髪の選手も混ざっているのだ。

中国のみならず、欧米豪においても、女子サッカーは長身で体格の良い選手が主力であり、そのサッカースタイルもロングボール、ハイボール、体力で押していくやり方だ。従って、細かいテクニックは長けていない。

一方、日本は技術、戦術は共に男子サッカーのスタイルと同じ処を目指している。佐々木監督の指導及びスタッフの協力によって造り上げたチームは、現代的はポジション取り、動き出しの速さ、をマスターしてそれを実現する細かい技術を身につけている。おそらく、他の国では依然として体格・体力勝負のサッカーを惰性としてやっているのだろう。

そえを実現できたのは、小野剛氏を中心にして築いた、小学生時代からの一貫した育成方法によるものだ。ボールに馴染む、戦術・技術を一体とした練習が普及したことによる。宇津木選手もその申し子の一人だ。


今日の中国戦の2点は共に宮間のコーナーキックから、1点目は上の写真、澤選手のニアからの体を捻ったヘディング、2点目は岩清水選手のゴール前フリーでのヘディングだ。宮間選手の正確なキックもあるが、この程度のサインプレーになすすべがない中国の戦術のなさには驚く。

澤選手の体を捻ってのプレーも「女子サッカー」の隙間を狙ったものだ。中国のGKも動きが悪くニアサイドへの注意を怠っていた。ビデオで日本チームのプレーを徹底的に研究していれば、的確な対応ができていたように思う。

「女子サッカー」を超えて、女子サッカーを普遍的なサッカーへ導く先駆けとなっている「なでしこ」の功績は、サッカー界にとって計り知れないというのは言い過ぎだろうか?

      

     

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株高による貯蓄増は富裕層に大きく傾く~一年後のアベノミクス

2014年05月21日 | 経済
家計の貯蓄・負債に関する統計データが統計局のメルマガで5/16に送られてきたのは。早速、見たのだが、二人以上の世帯で、

 平均貯蓄額は、1739万円、前年比81万円、4.9%の増加。
 内訳の中で有価証券は、240万円、前年比47万円、24.4%の増加。
 因みに負債は、499万円、前年比、30万円、6.4%の増加。

良いニュースではあるが、人それぞれでもあり、これをどうやって捌くのか、迷っていた。当然、分布は貯蓄の多いほど世帯数は減るわけであり、貧富の差の指標でもあるからだ。また、副題に掲げたように、株高・貯蓄増の反映がどの程度まで低所得層に反映しているのか、関心を持っていたからだ。
 約2/3の世帯が1739万円を下回り、中央値は1023万円も下がる。

更に、「株と無縁の住民の眼」との副題を付けて、異次元金融緩和を論じたときに、「円安・株高を補記出したとはいえ、輸出企業の従業員でもなく、株の持ち合わせのない一般住民にとって将に単なる空砲だ」と述べてもいた。
 『黒田バズーカ砲は華麗なる空砲か(1)130424』

同じ発想で答えているのが『ニュースの教科書』だ。
「日本では株式の多くは富裕層が保有している。
 年収3000万円以上の世帯の有価証券の比率は19%
 100万円以下の世帯では2.9%
 中間層も変わらず600万~800万円の世帯でも4.8%程度
 結果的にアベノミクスの恩恵を受けたのは富裕層のみという状況」

続いて、資産の高齢者への偏りの問題に移る。高齢無職世帯では、
 平均貯蓄額2363万円、前年比217万円、10.1%の増加。
 内訳の中で、有価証券420万円、前年比116万円、38.2%の増加。
一方、勤労者世帯では、
 平均貯蓄額1244万円、前年比11万円、0.9%の増加。

明らかながら、リタイヤ組の高齢者層が貯蓄額を上げている。
元に戻って、2010年において日本の全世帯5万2千世帯、単独1万7千世帯、二人以上世帯3万5千世帯、従って、二人以上世帯での貯蓄総額は6千3百兆円になる。
日本の世帯数の将来推計(2013年推計)-国立社会保障・人口問題研究所)

実際、4千万円以上の貯蓄を保有する世帯数とその額は、以下の様だ。
 世帯数 1万7千世帯の約1割、千7百世帯
 総貯蓄額 6千3百兆円の約4割、2千5百兆円

では、上記の巨大な貯蓄を社会保障政策に活用するための政策を打つ手立ては何があるのか?先ずは同世代における扶助の問題が出てくる。理由は、若い世代に過度の負担をかけないためである。この場合、生活保護、介護保険、医療費に始まって、年金問題にまで行き着くはずだ。

これは、現状の体系から見ると、若い世代に対する間接的な支援になるはずだ。しかし、現在のグローバル経済を支える自由主義的「利益の経済学」では対応できない課題になる。おそらく、ケネス・ボールディングらが40年以上も前に提案した“贈与の経済学”の考え方が必須になるだろう。

ここまで考えると、結局、アベノミクスから始まる安倍政権は、何かをやっているようで、何もやっていない、と考えざるを得ない。そんなことはあるのだろうか?しかし、最近の話題は安全保障政策だけなのだ。




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経済成長の帰結、「存在証明を与えない社会」~成長から成熟への軌跡(3)

2014年05月19日 | 永井陽之助
一昨日の記事で「人生は一本の連続した糸ではなく、ライフサイクルの各段階で結び目をもった非連続の連続」との永井陽之助の表現(『柔構造社会における学生の反逆』「柔構造社会と暴力」(中央公論社)所収)を紹介した。
 『E・H・エリクソンと「アイデンティティ」140517』

続けて、氏は論文のなかでエリクソンを引用すると共にその内容を説明する。
「人間が充実した力を内部に獲得し、外界と自我との調和ある内面的秩序の安定性を確保するには、それぞれの結び目において特有の徳目を獲得する必要性がある」(『人間の力と世代の周期』「責任と洞察」(誠信書房)所収)。

それらは、以下のような徳目だ。
 幼時期:「希望」「意志」「目的」「自信」、
 青春期:「忠誠」「献身」
 成人期:「愛」「配慮」「英知」

「特に、幼時という自然的な、安定的秩序から聖人の世界へ移行する過渡期(青春期)は、子供でも大人でもない、あいまいな身分感の不安定を特徴としている」

青春期は、自我の存在証明を確立する時期であり、深刻な危機を味わう。そこでは、内面を支える価値体系、イデオロギーの採用、規律ある献身の対象を発見することを不可避的に要請される。

しかし、工業化による高度経済成長により豊かな社会になった先進諸国は、新たなビジョンと価値体系を社会的に定式化(制度化)出来ず、業績主義、平等主義、客観主義を社会の全面に拡大する傾向を持つ。

このような管理社会では、ライフサイクルの“結び目”の制度的明晰性は失われ、青年はその自我の自立性を確立する時期を喪失する。すなわち、高度経済成長の帰結として、現代は存在証明を与えない社会となる。

以上が、1968年当時の世界的「若者の反乱・大学紛争」を通して永井陽之助がデッサンした先進諸国の政治社会的構造だ。

そこで、改めて大学紛争が起きた理由を青春期の問題として考えれば、
「この自我の安定した、明確な存在証明を確立する機会が、何らかの社会的歴史的要因によって阻まれるとき、自我の正体は見失われ、人は全称的イデオロギーや指導者に、その全人格を譲り渡し、狂信的な運動の中に没我させることで、自我と外界との亀裂を回復しようとする」

「かかる社会の全面的否定の回心による“確信者”への変貌こそは、今日の学生活動家が味わった魂の化学反応のメカニズムに他ならない」。

この論文において、永井はここから大学教育の問題に踏み込んでいく。この点については、別途、記事にしたいと考えている。

      
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極点都市への時間的距離~首都圏以外の地方政令都市

2014年05月18日 | 現代社会
この3月の人口移動では、東京都区部の人口増加が例年になく多かった。一方、地方政令都市では、人口減も見られ始めている。報道でも、相次ぐ湾岸部などの大型マンションの建設を背景に、職住近接を望む子育て世帯の都心回帰が進んでいるとの報告がある。
 『首都圏、特に東京区部の一人勝ち140515』

ここで地方都市を中心にデータを見直してみるが、先ず、参照データとして首都圏をおさらいしてみる。2010年及び2014年のデータを表1に示し、その増減を比較する。東京及び隣接の4都市を以下に示す。

 表1.「政令市人口推移(首都圏) 横浜市統計サイト 」
 地 域    2010/4   2014/4   増 減
 都・区部   8,820    9,095   275
 都・市部   4,190    4,226    36
 さいたま市  1,217    1,248    31
 千葉市     958     964     6
 川崎市    1,414    1,453    39
 横浜市    3,672    3,702    30

23区の増加が圧倒的であるが、そのなかでも詳しく他のデータをみると、湾岸部の江東区、都心の3区、千代田区、中央区、港区及び郊外で首都圏にアクセスしやすい世田谷区が多い。

また、4市のなかでも、区部に隣接する川崎市の増加が目立つ。川崎市は地形的に世田谷区、大田区に多摩川を挟んで張り付くように伸びており、東海道線・京浜東北線の川崎駅、横須賀線・湘南新宿ライン及び東横線の武蔵小杉駅、田園都市線の溝の口駅、小田急線の登戸駅、京王線の府中本町駅がそれぞれ直ぐに東京側の駅に接続するのが強みだ。

それにしても、4都市共に人口増加であり首都圏を分厚く覆っているかのようだ。なかで、千葉市が僅かな増加でドロップアウトの可能性を示している。しかし、千葉市は2011年にピーク値963千人をとり、翌2012年961千人と下がったが、直ぐに反転して2013年には962千人、2014年には964千人と増加している。この増加、熊谷・千葉市長の住民参加型市政の効果かも…注目していく。

 表2.「政令市人口推移(三大地域) 横浜市統計サイト」
 地 域    2010/4   2014/4   増 減
 名古屋市   2,253    2,268    15
 静岡市     716     707    -9
 大阪市    2,663    2,680    17
 神戸市    1,536    1,536     0
 福岡市    1,454    1,511    57
 北九州市    979     963   -16

次に、首都圏以外の三大地域とその隣接政令市を見よう。
名古屋市―静岡市、大阪市―神戸市、福岡市―北九州市に関して表2に示す。
中心である名古屋市、大阪市、福岡市は人口を増加させ、特に福岡市は伸びが著しい。一方、周辺都市は神戸市のイーブンがやっとの処。静岡市の隣の浜松市も減少になっている。共に中京と東京に挟まれて苦しい形だ。大阪市の近くでは京都市、堺市も人口減少だ。北九州市は元々工業地帯として発展したのであって、それを産業形態として変えていくのに苦戦しているかに見える。

以上からは、政令都市といえども、大都市圏の周辺都市は中心の名阪福に集中していく傾向は明らかであり、既に人口減少が始まっている。

 表3.「政令市人口推移(地方都市) 横浜市統計サイト」
 地 域    2010/4   2014/4   増 減
 札幌市    1,905    1,936    31
 仙台市    1,032    1,067    35
 新潟市     810     807    -3
 岡山市     704     713     9
 広島市    1,169    1,183    14

表3は地方の中心的な政令市の例だ。札幌市は北海道、仙台市は東北地方を包含して、人口増加だ。一方、新潟市は既に人口減少地域に入る。広島市、岡山市はそれぞれ県内の中心地として機能し、僅かに人口増加だが、関西圏、北九州圏に挟まれて、そろそろ人口減の年代に入っていくように見える。

以上から極点都市への距離は、地方の中心都市、大都市の周辺都市が近いことが明瞭に判る。しかし、現在の数値から計算されたようになるのか、全く未知数ではあるのだ。

      
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E・H・エリクソンと「アイデンティティ」~成長から“成熟”への軌跡(2)

2014年05月17日 | 永井陽之助
日本においてはコーポレートアイデンティティという言葉にまで広まっているが、一般的に流布された「アイデンティティ」という言葉は、エゴアイデンティティ(自我同一性)を指しており、60年代後半の大学紛争の時代において、青年期の心理的危機が改めて注目され、提唱者のエリック・エリクソンと共に知られるようになった。
 『成長から“成熟”への軌跡(1)~永井陽之助の現代政治社会論140513』

しかし、大学紛争そのものは暴力行使に対する批判、警察の対応の進化、そして何よりも「卒業―就職」に対する学生側の危機感の生成、と共に急速に収束へ向かった。70年初頭の「よど号・ハイジャック事件」は、新左翼過激派集団が大学紛争から別れ、暴力革命運動に本格的に移行し、社会へ「露出」を始めた象徴的事件であった。

これと共に、「アイデンティティ」という言葉も行き先を失い、青年期のエゴアイデンティティに限らず、様々な使い方がされ、専門用語に基盤を置きながら、日常用語化への道を歩むことになった。一方、エリクソンは自らの年齢と共に関心を老年期の問題へと移していくことになり、「アイデンティティ」は人生全般にも使われるよいになり、「ライフサイクル」も一般化するようになった。

なお、「ライフサイクル」について、「責任と洞察」(誠信書房1971)を翻訳した鑪幹八郎は、「人間生涯」と訳したが、一般化はされず、カタカナ表記になった。しかし、その意味について、上記の「あとがき」で次の様に述べている。

「サイクルという用語はエリクソンにおいては、慎重に選択されている。
「周期」という日本語の持つ反復的循環の意味とは異なる。人生という時の経過に応じ、我々は次々と性質の違った課題を解決していかなければならないことを記述したもので、時の流れに従って、同じものが繰り返しおとずれるという意味では無い。「人生の展望」といった方が近い」。

この説明は当たっており、段階ごとに人間は成熟していくとの哲学的意味を含んでいるはずだ。しかし、一般化に伴ってサイクルは周波数からくるイメージが強くなり、世代ごとに「幼年―青年―壮年―老年」が繰り返されると受け取られ、本来、秘められていた意図が希薄になっているのは残念なことだ。

その成熟につい永井は「人生は連続した一本の糸ではない」(「柔構造社会と暴力」P45(中央公論社))との表現を用いている。逆に言えば、成長とは、一本の糸の様に直線的に伸びる姿をイメージできる。即ち、右肩上がりになった経済成長のグラフの示す様子だ。

続いて、永井は「生活周期の各段階(幼時―青春期―成年期―老年期)に応じた、それぞれの“結び目”や“”をもった非連続の連続である」と述べる。おそらく、後年の“成熟時間”との発想はここに源がある様に思える。

      


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