少子化対策はこれまでも実施されていたはずだが…岸田首相は少子化対策に関し「時間との闘い」と強調した。これまでの対策は十分な効果はもとらされていなかったのだ。
国立人口研究所の発表によれば、昨年の出生数は見込みより11年も早く、統計開始以来初の80万人割れとなった。少子化のみならず、社会における様々な機能にも綻びが出始める可能性がある。その維持のための対策も識者によって指摘されている。
「出生数減、最低100年は止まらない」一般社団法人・人口減少対策総合研究所の河合雅司理事長の言葉だ。「今から少子化対策を講じても、人口減少が進むことを前提として、社会的機能を維持する対策は即座に求められる」とも。
日本の人口は1億2800万人(2008年)をピークに減少に転じた。
22年9月時点で1億2500万人、一方、国立社会保障・人口問題研究所が17年に示した将来人口推計では、標準的なシナリオとして、53年に1億人を切り、
2110年に5300万人程度と半分以下に落込む一方、42年までは、65歳以上の高齢者が増え続ける。ところが、15〜64歳の生産人口年齢が急減する。
これが「一番きつい20年間」(河合氏)になる。
河合氏は、出生数はシナリオより悪い減少幅で推移していると指摘。「このままいけば恐ろしいほど減り、90年後には年間出生数は18万人になってしまう」と危機感を強調し、近未来を「人口激減社会」と表現した。氏の著作は必読だ‼
人口激減社会では、労働力が減って内需や経済が縮小し、生活サービスや社会保障の量や質が低下する恐れがある。
例えば介護では、サービスを受けられない「介護難民」が増えかねない。淑徳大の結城康博教授(社会保障論)は「5年後に団塊の世代が80歳を超えると、介護が必要な人が一気に増え、介護人材が不足する」と指摘。年配の職員が引退する一方で人材確保は難しく、孤独死や介護離職が増える可能性があるという。
高齢化が進んだ先にあるのが「多死社会」。国内の年間死亡者数は21年が約144万人、39〜40年にピークの168万人に達する。河合氏は「あと数年で東京都の人口も減り始め、東京が経済をけん引するスタイルも通用しなくなる。極めて不都合な真実を正面から受け止めて政策を考えなければならない」と警告している。