先ずは緊急の分配が必要だ。また、本格的な政策議論としては並行に議論を進める以外に道はない。言うまでもなく、コロナ禍の緊急対策として生活に困っているひとたちへの給付が必要だ。例えば、持続化給付金の減収規模に応じて再支給、家賃支援の継続的支給、国民への給付金も特に生活困窮の方には必須だ。これは政府の役割だ。
一方、成長は企業が積極的な投資を行うことが先決だ。そのためには規制緩和等が必要ではあるが、民間の領域のはずだ。従って、その効果が個々の国民にまで回るには、それなりの時間が必要だ。従って、どちらが先と言うことではないと筆者は考える。
しかし、日経新聞(21年10月6日)は、「日本の年収、30年横ばい 新政権は分配へ先ず成長」と主張する。
その論拠は、以下の二つである。
(1)90年代以降の30年間に日本の経済成長は停滞したままだったこと。
(2)日本における富の偏在は米英と比べて小さく、
「ジニ係数」によれば、2010年代に所得格差は縮小している
(1)については、OECD加盟国平均よりも低いことは勿論だ!
アベノミクス・異次元金融緩和は、企業の内部留保と株価上昇により富裕層の財産を増やしただけで、トリクルダウンなどは起こり様がなかった。
では何故、(2)が起きたのか?いや、「ジニ係数」の魔術なのか?
例えば、年収が一億万円の人及び百万円の人が百人いた場合、
上記から百万円の人が百人増加して二百人になった場合、
両者を比較すれば、「ジニ係数」の考え方から、前者と比較して後者が小さくなると思われる。
あるいは、年収一億円が九千万円になってもジニ係数は小さくなるだろう。しかし、この場合、日常生活に対する影響はないはずだ。
「記事には2019年の就業者数は10年前と比べて400万人増え、なかでも65歳以上の高齢者。女性の雇用が拡大した」と書かれている。
しかし、ここまで書きながら、「富裕層も含めた国民全体の生活水準が地盤沈下」とも書いている。確かに間違いはない。だが、貧困層を含めた一般国民の視点から見れば、この記者が詭弁を弄しているように見えるであろう。
次のコメントが読者から「ひとこと解説」として付けられている。
特に日本で深刻なのは、所得が20年、30年停滞する一方、社会保険料や税金、大学授業料などは高騰を続けており、現役世代の生活が厳しくなり続けていることです。