散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

自治体行政への議会の貢献度~議会改革から抜け落ちる部分

2023年03月13日 | 地方自治

「議会における議事内容を知れば、自治体行政の全体像を理解できる」というのが筆者の発想の起点であった。そこで、議会改革を目指す、川崎市議会を語る会(世話人:筆者)の中で、『市民による川崎市議会白書』を企画、2010年、2011年に編集・発行した。

議会改革の考え方からは、討論の場であり、予算・決算、条例に関する意思決定の場である議会が、単なる質問の場であり、「議場」とすれば立派だが、機能としての「議会」の姿にはなっていないのだ。議会として最重要の仕事であるの議事は低調を極めるのだ。

一方、情報提供の場としては、行政側の答弁が市政の現状を説明しているという意味で、少なくても質疑の時間の50%は意味があるとも云える。その行政側の情報を引き出す役割をするのが、議員の仕事と云うわけだ。

さて、この場合、選挙の洗礼を受けて、市民の中で活動している議員によって構成される議会の、市政に対する貢献度をどの様に評価すれば良いの?行政に対する質問は、どの程度の意味があるのだろうか。測りかねるものがある。

これに対して、先ず意思決定機関としての機能を果たすために、新たな条例の制定あるいは既存の条例を含めた改定がある。例えば、地方の特産品に関する条例だ。しかし、これはニッチな政策の領域になる。また、新たな社会問題に対応する条例もある。最近の例で云えば、子ども虐待防止条例、自殺防止条例などだ。これは理念条例になり、具体策は行政が対応することになる。

この様に、意思決定機関としての機能を果たすにしても、それはニッチな領域を探すことが主眼になるのではなく、広く市政を知りつつ、その課題を見出し、政策として追求し、練り上げていく能力を身につけなければならない。

従って、個々の議員が、一方で、日頃の議員活動として市民の市政に対する要求等を把握しながら、もう一方で、行政のチェックを厳しく行い、個々の政策の全体像を描き、具体的な問題点を政策に落とし込む必要がある。

しかし、現状は、議会での会派であれ、議員であれ、その質問は大体において、筆者らが云う「状況把握」質問に終始することが大部分である。しおうすると、先にも書いた様に、質問そのものには意味が無く、行政側の答弁だけが結果として残ることになる。

また、かつて、片山前総務相(当時は前鳥取県知事)が、地方議会は八百長、学芸会をしていると述べた様に、川崎市議会での例では、質疑応答は事前の質問者と答弁部局との摺り合わせによって、シナリオが出来上がり、特に答弁側の局長は原稿の棒読みになる。すなわち、単なる結果報告で何が質問から得られた新たな政策なのか、不明なのだ。

そこで、議会は先ず、本会議及び委員会審議での議事を政策毎にまとめることが必要だ。次に、個々の政策に対する議会の貢献度を自ら評価するべきだ。議会改革が進展した地方議会は多くあるが、その結果、その自治体の政策に議会がどの程度に関与したのか、明らかにする必要がある。

例えば、会津若松市議会は「議会からの政策形成」(ぎょうせい(2010年))を謳っているが、それは一つのニッチ条例を作るプロセスに過ぎない。市全体の政策の中で、それらの政策形成のアプローチが、どこまで市政の政策に浸透しているのか、さっぱりわからない。

議会改革が市政の何に影響を及ぼしているのか、これまで報告例がないように見えるし、問題意識としても浮かび上がってこない。議会基本条例が各地の議会で成立し、その数が増えても、結局、何も変わらなかったとの評価を受けない様に、議会による「議会白書」を刊行する議会が増えることを望みたい。

本稿はブログ「住民自治の探検へ」として投稿したもの(2014-09-11)、
筆者としてまとめるために、本ブログへ、今回再投稿する。


記憶の甦りを巡って~「バイオリン協奏曲」異聞

2023年03月11日 | 個人史

NHK・Eテレ「クラシックTV」は企画が面白く、最近よく視聴する。3月2日、『舞いあがれ、メンデルスゾーン』は表題の曲を聴くと共に話の内容にも期待して、風呂上がりにチャンネルを入れた。放映内容の面白さはNHKネット情報に任せ…ここでは、筆者の中学時代の記憶が呼び覚まされた処を報告しよう。

高校受験の態勢に入らんとした中二・三学期の初め、各学科の出題傾向を調べ始めていた。楽器に親しんでいたわけではなく、音楽は強引に暗記学習へ変換を試みていた。そうでないと、この教科で合否が決まってしまうと思ったからだ。

クラシック系名曲の出だしの楽譜を示し、曲名を当てる問題があったかと思う。当時は比較的手軽にソノシートの曲を入手でき、その楽譜と合せてメロディを覚えるようにした。この作戦は上手く当たり、暗記問題への変換は成功、それと共にクラシック音楽への関心も熱狂的ではないが多少は芽生えた。その中でも唯一記憶に残った曲がメンデルストーン『バイオリン協奏曲変ホ短調』、特に冒頭の部分、バイオリンの音色であると共に曲のテーマメロディでもある部分、が強く印象に残った。

番組を見ながら、そんなことも、ちらっと思い出したりもしたからだろうか、バイオリン奏者・神尾真由子がその始めの部分を「バイオリンを知っている人でなければ絶対できないような高音部分を使っている!」と指摘、通常音域部分と高音部分でそれぞれ引き比べたのを聴いた。

筆者はハッとなった!そうだったのか!中学時代の記憶がここで甦ったのだ!バイオリン特有の高音領域の音色でのスタート、何か引き寄せられる音色だ。そして、それが曲全体に時々現れる。極めて印象深く聴こえるテーマメロディだ。最後は神尾真由子の演奏を聴きながら、改めて中学時代のソノシートを聴いていた自らの姿を思い出していた。