勝福寺 Gikoohの日替わり法話

山寺の住職、Gikoohが日々感じたことを綴っております。
(プロフィール用の落款は天野こうゆう僧正さま彫刻)

平成30年は干支の「戊戌」年。

2018-03-23 21:54:21 | Weblog
先日、3月7日の日替わりで、平成30年は戊戌の年で、それについて少し触れたが、今回は勝福寺寳燈展のことも加えて書いてみようと思う。まず、お大師様が晩年に著された般若心経秘鍵の一節から。

「時に弘仁9(818)年の春、天下大疫す。ここに帝皇自ら黄金を筆端に染め、紺紙を爪掌に握って般若心経一巻を書写し奉りたまう。予、講読の選に範って経旨の宗を綴る。未だ結願の詞を吐かざるに蘇生の族、途にたたずむ。夜変じて日光赫赫たり。これ愚身の戒徳に非ず、金輪御信力の為すところなり」『般若心経秘鍵』より

この年、都に発生した大飢饉と共に全国に疫病が蔓延した。当時を想像するに、人々の不安と恐怖に混乱した様子が窺がえるのだが、時の帝、嵯峨天皇はお大師様から般若心経の写経を勧められ、筆を一文字進められる度に三礼なされて紺紙金泥に書写、お大師様は疫病鎮静のご祈祷を修された。すると、暗闇の社会に光明が輝き、それまでの諸現象が治まった、という話がある。

弘仁9年は「戊戌」の年で、平成30年も「戊戌」の年。旧嵯峨御所の大本山・大覚寺様では60年ごとに「勅封心経」の「開封法会」が御修行されておられるが、弘仁9年の戊戌から20回目の戊戌を迎える平成30年、大覚寺様では「戊戌開封法会」(10月1日~11月30)が御修行されるという。

既に、勝福寺ではこの勝縁に肖るべく、檀信徒の方々と共に法会に参加させて頂く計画を立てており、そしてGikooh自身も数年前より、この戊戌という年に何か強い力のようなものを感じている。誠に貴重なので、この日替わりをお読みになられた方々も仏縁を得たと思われて、何かしらの形で是非参拝をお勧めしたい。

仏縁というのは、何もせず欲求だけでは感受出来ることは殆どないに等しい。しかし今、この日替わりをお読みになられている人は、現に仏縁を得ている証なので是非生かされたい。

さて、嵯峨天皇に般若心経の講義を御進講されている時のお大師様は、「秘鍵大師」として伝わっている。右手に鋭利な剣を持された独特なお姿をされているが、これはお大師様自ら文殊菩薩となり、人々の迷いや無益な議論を断ち切り、般若菩薩の智慧の如く、正しい方向へ導こうとされる尊いお姿だ。ここでは説明は割愛するが、大覚寺様のHPに分かりやすく解説されているので参照を。

今年の「第9回勝福寺寳燈展」は仏画と御室流の生け花をご覧頂く予定だが、「嵯峨天皇」の御影、「秘鍵大師」像、正絹手刺繍が施された「弘法大師」像、真言宗中興の祖・興教大師(覚鑁上人)が臨終の秘蔵本尊として枕元に掛けられていた「五蔵曼荼羅」と「月輪曼荼羅」の復元品等々の約30点ほど、在家の方々から僧侶に至るまで、見応えのある内容になっている。

覚鑁上人の秘蔵本尊は、人間はどういう過程を経てこの世に生を受け、死ねばどういう過程を経て成仏してゆくのか、日々拝んでいる僧侶であればこの曼荼羅から生命の淵源を見ることが出来ると思う。

弘仁9年は日本国中が暗澹たる気持ちを経験したが、平成30年もどこか似たような気配を感じずにはおれない。まず我が国の行政問題、内外の社会情勢等々、良からぬ予兆を感じているのはGikoohだけだろうか。

勝福寺へご来山された方はお分かり頂けると思うが、勝福寺は総社市郊外の小さな山寺だ。本来は仏画展を開催出来るような力はないのだけれど、近年はGikooh自身にも計り知れない動きが幾重にも重なり、この度の仏画展開催の運びに至っている。

寳燈展のチラシの裏側にある挨拶文の文末に、真言宗をお開きになられたお大師様は、済世利人の行に徹せられ「この世に密厳仏国をつくる」、言い換えれば「この世に仏の国をつくる」という高いご理想をお持ちだったと書いた。この寳燈展は密厳仏国には及ばないけれど、多くの仏様と洗練された御室流の生け花で荘厳された空間に身を置かれることにより、ひと時でも心が清らかになれば、有難いと思う。
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