長岡弘樹「教場」小学館 2013年刊
先日新しい本を入れてくれた畏友の袋の中にあった一冊。週刊文春2013年度ミステリーベスト10国内部門第一位、本屋大賞2014年度ノミネート作品。
私にとっても初めての作家である。舞台は警察学校の修習生と教官。警察という組織に属する第一線の人間を育てるための訓練所。躰だけでなく、頭脳も鍛えられる。
以前JCの時代、「警察学校ではひたすら走らされた」、一ヶ月500km学科の他に走ると出身者に聞いたことがある。、この小説にあるかぎり、こんな中でも人間の愛憎劇が繰り広げられる。そこで軍隊式の連帯責任で縛られ、脱落者は容赦なく追放される状況である。今までの警察小説よりは格段の緊張感を強いられる。小説だからこんな高度な訓練と観察力の鋭い教官の指導があるのだろうが、本当にそれに近いのなら、かなり安心して警察官に治安を委ねることができる。
現実には、日常勤務の繰り返しによる緩み、世俗的な誘惑、権力の側にある傲岸、組織防衛、などの要素でたとえこのように厳しい訓練を受けてきたとしても、かなり警官の姿勢は後退するのではないか。
しかし小説としては見事に成功している。楽しむというより緊張するといったほうがいいのだろうか。私の中では大賞に値するものである。