mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

三頭山の緑に浸る

2015-06-04 19:27:36 | 日記

 長野まで梅雨に入った翌日の今日、全国的に晴れ。山歩きに、これを逃す手はない。朝5時に発って車を走らせる。目指すは、身延町の富士見山。

 

 ところが、naviが思う方向を指示しない。首都高に乗せようとばかりする。何だこいつ、圏央道を知らねえのかと思いながら、naviを無視して関越に入る。ところが、走っている途中で、圏央道のあきる野から八王子JCTが全面通行止めと表示がある。工事のためだそうだ。naviがこちらを指示しなかったのは、1日から4日まで工事のため通行できないことを知っていたからか。だったら初めにそう言えよ、と思ったりするが、そこまでnaviは賢くない。狭山PAに車を止めて、どうするか思案する。もちろん、あきる野ICで折りて八王子ICから中央高速に乗る手はある。だが、夜の8時まで通行止めとあっては、帰りに首都高で渋滞に巻き込まれる。いやだなあ。

 

 行き先を換えるっていっても、地図は持ってないし、弱ったなあ。その時ふと、思いついた。車でないとアプローチしにくい三頭山はどうだ。都民の森がある。あそこには、エリアマップが用意してあったことを、思い出した。naviで調べると、あきる野ICで降りてガイドするようだ。では、では。そうしよう。

 

 思った通り、あきる野ICの八王子方面は大渋滞。それを尻目に、逆の方へ車を走らす。案外距離がある。相当走ったところで武蔵五日市駅前を左折して、都民の森への山岳道路に入る。道はしっかりしている。向かう車は徐々に少なくなり、向こうから降りてくる車も、減っている。バイクが後ろに着く。知らぬ顔をして走っていると、いつの間にか2台になっている。追い越したいのかな。片側によって止めると、待ってましたとばかりグイ~ンとスピードを出して先行した。標高もぐんぐん上がる。谷あいをかき分けて奥へ向かっているのだが、尾根を分け、道を分け、山が深くなる。上からバイクが降りてくる。おっ、先ほどのお兄さんではないか。おっまた、これも先行したお兄さんだ。

 

 都民の森に入口について、ワケがわかった。その向こうの道路は、閉鎖されている。都民の森の駐車場への入口も、扉が閉まっていて、「8:00~17:30」と表示がある。手元の時計を見ると、ちょうど7時。何だ、1時間待たなくてはならない。折角早出したというのに。ラジオのニュースを聞きながら待っていると、バイクがやってくる。何だ、先ほどのお兄さんではないか。ここのロードがオモシロイのだろう。行ったり来たりしているのだ。

 

 7時15分に、どこからかオジサンがやってきて、駐車場入り口の扉を開けてくれ、「どうぞ」という。やったあ。広い駐車場に一番乗りして、木陰になるところに止める。靴をはき替えて、ザックを背負って、まず絵地図をみる。まだ早いから、マップをもらえるところはない。三頭大滝の脇から稜線上に出て、三頭山を目指す。そこからさらに稜線上を歩いて、鞘口峠に向かうと、ちょうど登山口を結んで円形に歩くことになる。でもそこから登山口に下っては、時間ほどの行程になるからつまらない。鞘口峠から三頭山の中腹を西へ経めぐる周回ルートがある。さらにその末端から、中腹の標高で100mほど下を通って森林館という入口上のところに出るルートもある。つまり、三頭山という山全体を、稜線から中腹まで、大きく歩き回るルートをやってみよう。そう見当をつけて歩き始める。何しろ地図を持たないのだから、頭に入れておかなくてはならない。

 

 舗装路をはずれて木の階段になると森林館への急登になる。森林館の裏側に出たら左折して、木のチップを敷き詰めた大滝へのルートをたどる。以前ここへ来たときは、4月だったか、寒くて、やっと春の気配という感じだったから、いい印象はない。だが今日は違う。陽ざしは明るく、ルートは木陰。緑がいっぱいの中を、鳥の声を聴きながらすすむ。おっ、これはホトトギスだ。私にとっては今年の初音。森に入るとミソサザイがけたたましい。目の前をカケスが飛びゆく。ゥワオ~ゥワオ~と、はなれた緑の中から声が響く。アオバトの声だ。ポポッ、ポポッ、ポポッとツツドリが近くで鳴き始める。右の木の上の方だなと近づいて見上げると、ぱっと鳴きやむ。向こうさんが私を認知したのだ。ツツドリに負けじとアオバトが声を張り上げる。さらに上に進むと、ジュウイチの声が高くなる。あっこれは、コマドリだ。弾むような声を立てる。おや、これはコマドリに似ているがちょっと違う。聴いていると、ツーツーツーと前奏が入ってから、にぎやかな響きの声に移る。こいつはコルリだ。山頂部にまで、その声は続いていた。

 

 避難小屋がある。中に入って見る。土間よりも広い板張りの部屋がきれいに清掃されている。でも、ここを使う人はいるのだろうか。どういうときに使うのだろうかと考えてみたが、思いつかない。森林作業でもする人なら泊まることもあろうが、山歩きで泊まることはないのではないか。壁につるした温度計をみると、14度。風もない。気持ちがいい。

 三頭山の西峰に着いた。標高1520m。9時15分。出発してからちょう

ど2時間。若い人が一人居て、南の方を見ている。私をみると挨拶をして、「見事な富士山ですよ」と指差す。ちょうど、その部分だけ木を伐りはらってあるのだろう。真正面に富士山が、少しばかりの雪を残してすっきりと佇んでいる。昨日の雨で顔を洗ったように、晴れがましい。手前の百蔵山、右の方の三つが岳、黒岳のピークも、はっきりそれとわかる。ずいぶんと早いが、今日の行程の半ばだから、もってきたお昼を食べる。朝、ヨーグルトとアンパンとコーヒーだけだったから、早くていいだろうと、自分に言い訳をする。

 

 三頭山の中央峰と東峰はすぐ近くにある。東峰の脇には展望台がしつらえられているが、周りの木々が葉をつけて、やはり見晴らしは良くない。一人二人と、人がやってくる。私と逆ルートをとっているのだ。みな、私同様に年寄り。ここは、一人歩きでも心配ないほど、道がよく整備されている。道標も整っているから、心配はない。稜線ルートの途中から、山腹へ下る分岐がいくつかある。それぞれに名前がついているが、私の憶えていたのはルートの経路。名前は覚えていない。まあいいか、私のイメージ通りに行けるかどうか、鞘口峠まで行って決めようと、歩を進める。

 

 1時間で鞘口峠に着く。ここから森林館にくだると、たぶん20分足らずで、山歩きは終わってしまう。それじゃつまらないから、回廊の路へ踏み込む。おおよそ標高1200mをアップダウンしながら三頭山の直下の方へ向け西へ行く。森の中に身を浸すように歩く。かつて木を伐りだしたときにつくった木製の回廊を200mほどたどる。木はくさっており、一部は足をかけると、全体ががたりと傾くようなものもあった。「補修が間に合わず、気を付けて歩いてください」と、上り口に注意書きがあったのを思い出した。たぶん、このルートはあまり人が歩かないのだろう。

 

 「探鳥の路」と表示がある辺りに来てから、鳥の声が聞こえなくなった。この回廊の突当りに野鳥の観察小屋があった。入って見る。たぶん、木の葉が落ちた時節の雨のときにでも使えるようにと設置したのであろう。ずいぶん見辛い。鳥の姿も見えない。まさか鳥が忌避したわけでもなかろうが、皮肉なものだ。

 

 そこから「かおりの路」へ入る。今度は標高1100m辺りを、東へ向かって、森林館に着く。「かおり」というから、カツラの木があるのかと思っていたが、杉の林。ただ手入れがされているようには見えないのに、光がよく入っているから、林床は広葉樹が育って、明るい。「熊が出た、注意」と入口辺りに注意書きがあったところも、気にしないで通過してしまった。森林館は大きいが、森閑としていた。余り展示に工夫が凝らされているようにも見えない。

 

 こうして、11時45分に駐車場に着いた。4時間半。まあまあの、歩きであった。帰りに「自宅」を指示してnaviに従って進めていたら、何と山を越えている。えっ、どうして? と思うが、今朝のこともあったから、それに従うことにした。とうとう中央高速の上野原に出てしまった。何だよこれじゃ、首都高速を通るじゃないか。そう思ったが、昼間だから混んで入るまいと腹を決めて、渋谷を抜けて池袋付近を通って、戻ってきた。1時45分。往き帰りの時間は、ほぼ同じだ。でもnaviの文法がわからないのは、どうしたものだろうか。

 

 半日儲けたような気分だ。