mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

子どものリアリティ、大人のヴァーチャル

2015-06-28 17:10:49 | 日記

 金曜日の夜から、2人の孫が来ている。その母親が海外へ出張、父親はこちらに用があったので、やってきてその仕事の間、孫をジジババに預けておこうというわけ。むろん断ることなく、ババは、どう過ごさせるか、あれこれ算段していた。小学校4年と1年。

 

 孫たちを、ディズニーランドへ案内する。親が両方ともアウトドア派、山や川でキャンプを張ることはしても、ディズニーランドは知らんよという人たち。事前に息子に話しておいたら、「子どもらはけっこう楽しみにしている」という。上の子は学校の友達から、土産やらイベントやらいろんなことを聞いてきている。

 

 ジジにも付き合うかというから、子守の必要があれば行くよと言っていたが、迷子予防のために一緒することにした。チケットはババがちゃんと事前に購入している。何時から行くかというから、早く行って早く帰ってこよう、開園時間に行きましょうかと言ったのだが、なんと開園は朝8時。そんなに早く行くことはないよ、だって通勤ラッシュじゃないか。8時ころ家を出ようよ、と。しかもババは帰宅は夜9時ころになるかも、と。どうして? だって、夜の部のパレードや花火もなかなか見所があるという。おいおい、まだ10歳に満たない子ども連れがそんなに遅くまで遊んでいるわけにはいかないよ、と私は止め男。

 

 だが子どもらは、午前5時半には起きだして出かける構え。電車に乗ったのは、8時ころであった。あいにく混雑する通勤電車となるのは千葉県内に入ってからであったから、舞浜まで座っていけた。途中で何かあったらしく「安全確認」のために停車。電車は30分遅れ。入園したのは9時半であった。

 

 私は3度目。いずれも(別の)孫のお供。それでも、こんなに人が多いのかと驚いた。土曜日かと納得していたら、ババがいうには、今日は空いているそうだ。何しろ予約チケットの交換が待つことなくできた、から。多いときは、チケット売り場から駅にかけて行列ができ、入場制限になるそうだ。ふ~ん、そう、と言いながら中に入る。孫たちは駅からのアプローチに、もう目を輝かせている。たしかに、アニメの世界に踏み込むような造りのお城やホテルやディズニー列車が走っている。ふだんテレビもない暮らしをしているこの孫たちが、こういう世界があること自体に驚嘆するのは無理もない。

 

 「わずか20分待ち」というので、最初の「カリブの海賊」に入る。次々に船が来る。4人何列かの乗客が乗ると、船は出帆し、洞穴の中をたどる。船長はいないから自動操縦。いきなり頭上でしゃれこうべが「もう引き返せないぞ」としゃべる。二人の孫はすっかりビビっている。息絶えた骸骨が横たわり、おどろおどろしい音が響き渡る。つぎのブロックに入ると、両岸の海賊たちが鉄砲をぶっぱなし、さらには船の大砲が火を噴く。水柱が上がる。孫をみると、4年生が顔を伏せている。怖いらしい。1年生はときどき顔をあげては目を伏せる。あまりこのままでは仕方がないと思って、「ほらっ犬がいるよ」と声をかけると顔を上げ、しばらく海賊たちのどんちゃん騒ぎをみて、気持ちが落ち着いたらしく、金銀財宝の隠し場所をしげしげと眺めている。

 「怖かったあ」と1年生。4年生はしばらく沈黙。歩きながら、「怖かったけど、あとで考えると、海賊は僕たちに気づいていなかったよ。違う方へ鉄砲を撃ってた。恐くはないよ。」と分析的にみていたことを明かす。なかなか面白い精神作用だと思いながら、「そうか、そうか、なるほど」と話を聞いた。

 

 人の数がぐんと増えている。若い女の人が多い。おそろいのTシャツを着ていたり、頭にミッキーマウスの帽子飾りをつけていたり、アニメから飛び出てきたような服装の子も、そちこちにいる。それがあまりに多くて違和感がないのか、そもそもこの遊園地の設えが、そういう違和感を取り払うようにできているからなのか。もちろん10台の子たちも多いが、20歳を越えていると思われる大学生風や勤め人風の人たちも、数人の群れをつくって歩いている。小さい子を連れた家族も、若いのから私たちのようなジジババまで、右に左にあふれて、歩くのに気を遣うようになる。雨が落ちるかというような天気だのに、まるでお祭り。そうか、お祭りだ。ふだんの町がお祭り気分に装飾されているのを考えると、ここはことさらのお祭り。

 

 つぎに「ジャングル・クルーズ」の船に乗る。これも「25分待ち」。次々と乗り込み、次々と出帆する。今度は船長がいて、あれこれ話しかけながら操船をし、ガイドをする。ワニやゾウやカバや大蛇の、本物そっくりに作られた設え物が、動き声を立て、危うく襲われそうになるほど接近する。滝の裏側を回り込むなどもあるが、大掛かりな模擬展示場である。そこをガイドが「声をそろえて、ハイ、パオ~ん」と呪文を唱えると、乗船客が大きな声で「パオ~ん」とやる。私の脇に坐った20歳代半ばの女性グループも大きな声を立てている。素直だなあと、私は感心する。もちろん孫たちも、「は~い」と声をあげたりして、ガイドとコミュニケーションしている。

 

 「カリブの海賊」と「ジャングルクルーズ」の孫たちの緊張感は格段に違うのだが、それでも傍らの獣たちの動きにハラハラドキドキしている気配が分かる。この孫たちの感じている「現実感」と、同乗している若い人たちの「ヴァーチャル・リアリティ」とはちょっと違うんじゃないか。若い人たちは、絶対安全を信じている。ということは、しつらえられた物語世界に身を置いていることを承知で、ただ浸りきっている自分を演じているのではなかろうか。孫たちは演じているとは思っていない。だから、「海賊は(ぼくたちに)気づいていない」と気がついたわけだ。そういう意味では、孫たちのような小さな子どもに、ハラハラドキドキを体験させることとしては、この遊園地は面白いだろうと思う。だが、大人がねえ、とやはり、大人の感じたいと思っている「ヴァーチャル・リアリティ」は、現実世界からの逃避というか、現実世界に飽き飽きしているというか、もうホントにいやという証のように思う。それが入場お断りにようになるなんて、いったい私たちは今、どこにいるのか。

 

 「パレード」が始まる。七夕パレードと銘打って、「ささのは~さ~らさら……」と曲に乗せて、ディズニーのキャラクターが踊りながら行進する。曲がマンボ調になったり、ジャズ風に変わったりして、行進する仮装面々の踊りも達者なもの。1時間も前から座り込んで席をとり、パレードはほんの10分ほどの間に通り過ぎてしまうのだが、売り物のひとつらしい。2時からのパレードは30分ほどもつづいた。仮装キャラクターが近づいて手を振り、握手を求め、ハイタッチして通り過ぎていくといちばん前に席をとった人たちは、小躍りせんばかりに喜んでいる。むかしからのアニメキャラクターが懐かしさを体に刻んでいるからなのか、そういうスターたちと間近にいることに気分が高揚するのだろうか。何しろ、このパレードの間は、通行規制があるから、ほんとうに歩くのも大変になる。その間は、催し物会場は空くそうだとババは知っているが、パレードを見逃す手はないと、孫を連れて座を占めている。孫は大満足。

 

 孫たちは、ポップコーンを買って、首からぶら下げて歩きながらポリポリやるのが愉しいらしく、ひと箱を開けてしまった。おかげで子どもの方はそれほど飢えてはいなかったが、大人はお昼を食べるのに、苦労した。レストランは「予約」だったり、孫の片方が食べたいものがなかったり。結局バーガーやポテトチップや空揚げを買って、野外に置かれたテーブルで休憩お昼。

 

 「スモール・ワールド」とか「熊のプ~さん」とか「ゴー・カート」とかで遊んで、すっかりくたびれた孫が「帰ろうよ」と言い出すまで連れ歩いた。午後4時過ぎに帰りはじめたが、私はどちらに入口があったか、わからない。ほぼ完全な方向音痴。ババは目印の建物をみながら、あっち、こっちと指図して、パレードの交通規制を避けながら入口に向かった。孫は、土産のあるものを目指していたらしい。ここにはない、と土産物売り場を探し歩いている。店員に聞けばと私は言うが、頑として自分で探す態度を崩さない。まあ、これも愉しみなのだろうと、迷子にならないように(見失わないように)、人ごみをかき分けて着いて回る。1年孫はババがみている。お目当ての土産物をみつけたのは、駅舎と入口の間にある土産物屋さん。ここだと思ったというから、どうしてここに土産物屋があると知っていたのかと尋ねると、学校で友達から聞いていたという。お目当ての土産物は「消しゴム」。角が丸くならないでいつまでもとがった角をつかうことができる代物。なるほど、こういうこだわりってあるんだと思った。

 

 帰りはラッシュ。さすがに4年生孫はへたれないでしっかりしていたが、1年生孫は両手をジジババに預けてしゃがみこんでしまった。見かねた人が席を譲ってくれたが、ババがお礼を言うばかりで当人は声も立てずに、眠り込んでしまった。6時過ぎには帰着したが、遊園地滞在時間7時間半。子どもには結構な行動時間であったと思う。歩行歩数、12000歩強、たいしたことはない。待ち時間が累計すると3時間くらいったかと思う。

 

 さすがに疲れたのか、4年生孫は朝7時過ぎに起こされるまで、熟睡。起きてからまた二人は元気にはしゃいでいた。お昼にそばを打ち、天ぷらをごちそうした。たっぷり大人の一人前を腹に詰め込んで、つい先ほど、孫たちは父親に連れられて、新幹線に乗った。やれやれ。久しぶりに見ると、子どもの生長ぶりが面白い。