自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★コロナ禍 輸入サーモン論争

2020年06月21日 | ⇒ニュース走査

   新型コロナウイルスの猛威が治まらない。アメリカのジョンズ・ホプキンス大学のコロナ・ダッシュボード(一覧表)をチェックすると、感染者は876万人、死者は46万人を超えている。そんな中で、奇妙な論争が中国発で起きている。

   北京でクラスターが発生し、その感染源となったは市内最大の市場「新発地」の生鮮市場で取り扱われた輸入サーモンではないかと疑われ、販売業者が使用していたマナ板からウイルスが検出された。中国疾病対策センターの疫学責任者が、ウイルスは冷凍された食品の表面で最長3ヵ月生存することが可能だと述べたことから、中国のスーパーマーケットの食品棚からサーモンは消え、食材宅配でも提供が中止になった。中国の輸入サーモンの消費は年間7億㌦で、不買運動で打撃を被るのはデンマークやノルウェー、そしてオーストラリアといった輸出国だ(6月17日付・ブルーグバーグWeb版日本語から引用)。

   これに対し、ノルウェーが反発。ノルウェーの海洋研究所の感染症専門家は「感染はサーモンからではなく、製品または人々が使用する道具の汚染からではないかと考える」と述べ、一方で魚によるウイルス感染拡大の可能性については研究が進んでいないことを認めている(17日付・AFP通信Web版日本語) 。

   この北京の「市場クラスター」について、ある意味で不自然さを感じるのがWHOだ。同公式ホ-ムページの6月13日付で「A cluster of COVID-19 in Beijing, People’s Republic of China」と題したニュースリリースを掲載している=写真=。6月13日、WHOの中国事務所が北京のクラスターについて中国の国家衛生委員会などと中国側の予備調査について話し合ったことを述べている。

  The first identified case had symptom onset on 9 June, and was confirmed on 11 June.  Several of the initial cases were identified through six fever clinics in Beijing.  Preliminary investigations revealed that some of the initial symptomatic cases had a link to the Xinfadi Market in Beijing.  (最初に確認された症例は6月9日に発症し11日に確認された。最初の症例のいくつかは、北京の6つの発熱クリニックを通して同定された。予備調査では、初期症状のある症例の一部が北京の新発地市場と関連があることが明らかになった)

   リリース文では新発地市場との関連の可能性について記しているが、輸入サーモンについては一切触れてはいない。確かにWHO側の論調はあくまでも報告を受けたとの書き方だ。しかし、WHOが中国側の予備調査の報告をわざわざ公式ホームページに掲載するものだろうか。この事実を持って、中国側はサーモン発生源のデータを逐一WHOに示していると主張するだろう。あえてわざわざリリースしたことでWHOはさらなる不審を招くのではないだろうか。

⇒21日(日)午前・金沢の天気   はれ

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