自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

★そのシーンは演出なのか、局側は会見を

2020年06月04日 | ⇒メディア時評

   共同生活をテーマにした、いわゆるリアリティ番組『テラスハウス』に出演していた女子プロレスラーが先月23日に自死したとされる事件で、SNS上で誹謗中傷を受けたことが原因との議論が今も続いている。番組では、女子プロレスラーが大切にしていたプロレスのコスチュームを同居していた男性が誤って乾燥機にかけてしまったことが原因で、プロレスラーが男性を強く叱責した場面があり、これに対して、SNSから「死ね」「消えろ」といった誹謗中傷の批判が相次いだとされる。番組はシナリオ台本のないことがウリなのだが、テレビ局側の責任は免れるのだろうか。

  問題は、シナリオ台本はないとは言え、そのシーンが「台本なき演出」ではなかったか。番組には必ずディレクターが立ち会い、視聴者の反応を意識した番組の構成が練られる。その優先順位があるから番組を時間通りに納めることができるのだ。今回、女子プロレスラーの叱責のシーンが番組のクライマックスのシーンとして位置づけられ番組が構成された可能性が高い。現場のディレクターはむしろ、SNSでの投稿を煽ることをあらかじめ意識していたかもしれない。

   そう考えると、局側の責任がむしろ問われるのではないだろうか。ところが、番組側はいっさいのこの点について釈明していない。局側あたかも番組の放送中止をもって贖罪(罪滅ぼし)としているようにも思える。むしろ、制作現場のプロデューサーやディレクターが記者会見して、その点を説明すべきではないだろうか。そのシーンをあえて演出したのかどうか。したのであれば、出演者にどのよう指示を出していたのか。

   番組を制作したフジテレビの社長の月末の定例記者は新型コロナウイルスの影響で見送りとなっている。記者からの書面での質問にこの問題を以下回答している。

   「今回の木村花さんの痛ましい出来事に対して、改めて心からのお悔やみを申し上げます。同時に番組制作の私共がもっと細かく、継続的に、彼女の気持ちに寄り添うことができなかったのだろうかと慙愧の念に堪えません。『テラスハウス』はリアリティーショーであり、主に若者の恋愛を軸に、それにまつわる葛藤や喜びや挫折など様々な感情を扱うものですが、刻々変化する出演者の心の在り方という大変デリケートな問題を番組としてどう扱っていくか、時としてどう救済していくかということについて向き合う私どもの認識が十分ではなかったと考えております。以上のことを考慮したうえで、今回、既報の通り、同番組の制作、地上波での放送、およびFODでの配信を中止するとともに、今後、十分な検証を行ってまいります。」(5月29日付・フジテレビジョン公式ホームページ)

   「十分な検証」と述べているが、そのシーンが演出であったのかどうかぜひ知りたい。はやり制作現場のプロデューサーやディレクターが記者会見すべきだと考える。もちろん、SNSで批判を投稿した人たちをかばうつもりは一切ない。亡くなられた本人の尊厳を守る意味でも、ぜひ知りたいところだ。また、記者会はなぜ会見の開催をフジテレビ側に要求しないのだろうか。

(※写真はイギリスのBBCニュースが報じた女子プロレスラーの死=5月23日付・Web版=)

⇒4日(木)夜・金沢の天気     はれ

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする