自在コラム

⇒ 日常での観察や大学キャンパスでの見聞、環境や時事問題、メディアとネットの考察などを紹介する宇野文夫のコラム

☆波高し 日本海のイカ釣り漁 

2020年06月09日 | ⇒ニュース走査

   日本海のイカ釣り漁が始まった。能登半島の尖端、能登町の小木漁港からはきのう8日、中型イカ釣り漁船が4隻が出港したと報じられている。目指すは能登半島の沖300㌔のEEZ(排他的経済水域)にある大和堆(やまとたい)、スルメイカの漁場だ。ただ、EEZであったとしても、違法に北朝鮮や中国の漁船も入り乱れ、一触即発の状況がここ数年続いている。

   昨年不穏な動きがいくつかった。8月23日、不審船2隻を水産庁の取締船が見つけ、EEZを離れるよう伝達した。北朝鮮海軍らしき旗を掲げた小型高速艇と北朝鮮の国旗が船体に描かれた貨物船の2隻で、高速艇には小銃を持った船員がいた。海上保安庁の巡視船が駆け付け警戒監視を続けたところ、不審船2隻は去った。毎年のようにEEZには北の木造漁船が数百隻も押し寄せているが、武装船となるとただ事ではない。

   10月7日にはEEZで、水産庁の漁業取締船と北朝鮮の漁船が衝突する事故があった。取締船が北の漁船に放水して退去するよう警告したところ、漁船が急旋回して取締船の左側から衝突してきた。通常、船同士がぶつかりそうな場合、左側の船が衝突をよけるルールとなっているが、避けることなく衝突し沈没した。さらに、日本海の沿岸には北の木造船の漂流や漂着が相次ぐ。2019年は全国で158件(18年225件)、生存者は6人、遺体は5体だった(第9管区海上保安本部まとめ)。

   悲惨な事件もかつて起きた。小木の漁業関係者では「八千代丸銃撃事件」が忘れられないだろう。1984年7月27日、小木漁協所属のイカ釣り漁船「第36八千代丸」が、北朝鮮が一方的に引いた「軍事境界線」の内に侵入したとして、北の警備艇に銃撃され、船長が死亡、乗組員4人が拿捕されるた。1ヵ月後の8月26日に「罰金」1951万円を払わされ4人は帰国した。

   当時私は新聞記者で船長の遺族や漁業関係者に取材した。関係者は無防備の漁船を銃撃したこの事件に憤りと恐怖心を抱いていた。「イカ釣りは続けられないですね」と言うと、ある漁師は「板子(いたご)一枚 下は地獄だよ」と反応した。漁師という職業は船に乗るので常に危険と隣り合わせにいる。初めて知った言葉だった。確かに日本海で漁をする危険はあるものの小木はいまでもイカ漁の日本海側の拠点の一つである。

   日本側のイカ釣り漁の漁期は6月から12月だが、すでに北の漁船はEEZに入り漁を始めている。5月中頃から取り締まりに入っている水産庁の退去警告は延べ54隻(うち放⽔措置4隻)の上っている(6月1日現在・水産庁公式ホームページ)。日本漁船の漁の安全と、豊漁を祈る。(※写真は、日本のEEZで違法操業する北朝鮮の漁船=海上保安庁の動画から)


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